新型コロナの感染拡大により、大きく働き方が変わった2020年。2021年もいまだ収束の見込みが見えないなか、今後どのように働き方は変容するのでしょうか。

 

2020年に起こった働き方に関する5大ニュース

2020年は、新型コロナウイルスを皮切りに、さまざまな出来事が起こりました。

新型コロナウイルスの感染拡大

2020年を語るうえで外せないのが、新型コロナウィルスです。中国武漢を発生源とし、2020年1月頃から猛威をふるい、2020年4月には日本でも緊急事態宣言が出されました。その後、感染者数は増減を繰り返し、収束の兆しは見えません。

 

感染拡大防止にともない、マスクの着用、手洗い・うがいの徹底、ソーシャルディスタンスという新たな生活様式が生まれました。ソーシャルディスタンスが与えた影響は甚大で、特に三密の状況が成立しやすいライブハウスやカラオケ、小規模の飲食店は、営業時間の短縮、または休業をせざるをえない状況に追い込まれています。

同一労働同一賃金の施行

正規雇用と非正規雇用の待遇格差をなくすための法律です。業務内容や人事考課、給料、諸経費の支給額などで過度な格差をつけることが禁じられます。2020年4月1日から大手企業を対象に、2021年4月からは中小企業も対象となります。同法律は罰則規定を設けていませんが、従業員から損害賠償請求をされて、敗訴になった事例があります。

 

行政手続きの認め印全廃

2020年11月、河野太郎規制改革相が閣議後の記者会見で、行政手続きにおける認印の全撤廃を発表しました。これにより、法人登記や不動産登記の申請などを除く10,000近くのハンコが廃止、または廃止の方向で検討されることになりました。

 

また、内閣府・法務省・経済産業省は「押印についてのQ&A」で、押印は必ずしも契約の効力に影響を与えない見解を発表しました。また、弁護士ドットコム株式会社が運営する電子契約サービス「クラウドサイン」は、行政手続きのデジタル化推進を支援する「デジタル・ガバメント支援室」を新設しています。官民共同で電子契約を推進する動きに拍車がかかりそうです。

 

東京の人口が7年ぶりに転出超過を記録

テレワークの普及にともない、居住地を考え直す人が増加しています。総務省の調査では、2020年5月は、外国人を含め統計調査を開始した2013年以来、実に7年ぶりに東京都の転出超過を記録しました。東京一極集中を食いとめる契機として、地方移住や創業支援などに対する補助金・助成金を新設する地方自治体が増えています。

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5G通信の本格運用開始

日本でもようやく2020年3月に5Gの運用が開始されました。とはいっても、まだ東京や大阪などの限定運用で、全国本格運用は2025年前後といわれています。5Gが本格運用すれば、現在の4Gの100Mbps〜1Gbpsから、10Gbps〜100Gbpsと100倍ほど通信スピードが早くなります。たとえば、数分かかる映画はわずか3秒でダウンロードでき、遠隔医療や、スポーツのVR観戦も実現が可能になるなど、ビジネスでも新しい展開が期待されています。

 

2021年に注目される働き方

2020年に起こった出来事を踏まえ、2021年はどのような働き方が注目を集めるのでしょうか。

ワーケーション

新型コロナウィルスで売り上げが激減した観光、飲食、エンタメ業を支援するために、
「GoToキャンペーン」が実施されました。現在は、感染拡大によって一時停止していますが、顕著だったのが、このGoToキャンペーンに合わせワーケーションプログラムを募集する自治体、宿泊所が数多く出たことです。ワーケーションとは、ワークとバケーションをかけ合わせた造語で、休暇をとりながら仕事をする働き方です。クロス・マーケティングの調査によれば、ワーケーションの認知割合は70%以上、導入率は10%でした。

参照:ワーケーションに関する調査

 

導入率は低いですが、認知度は高まっています。ワーケーションの環境整備や導入促進のための助成金を交付する地方自治体も増えつつあり、今後に期待が高まります。

 

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地方移住/二拠点居住/多拠点居住

東京都では、2013年以来、7年ぶりに転出超過を記録しています。また、大手芸能プロダクションのアミューズが富士山麓に、人材大手のパソナグループも本社機能を淡路島への移転を決定・検討しています。テレワークの普及により、今後、単純な地方移住だけでなく、地方と都心部に拠点を持つ二拠点居住者(デュアラー)や、さまざまな地域に拠点を持つ多拠点居住者のような新しいライフスタイルが登場するでしょう。

 

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パラレルワーカー

飲食店やエンタメ産業は時短要請や休業要請により、大きな打撃を受けました。東京商工リサーチが2020年11月に行った調査では、1〜10月に休廃業・解散した企業数は前年よりも21.5%多く43,802件でした。失業だけでなく、休業によりシフトに入れずに生活が困窮している従業員も増加しています。

参照:2020年1-10月「休廃業・解散企業」動向調査(速報値)

 

収入減少とテレワーク普及という環境変化から、現在、複業を始める人が増加しています。2020年7月にランサーズが実施した調査では、副業・複業を開始した理由でもっと

も多かったのが「収入減少のため」で14.5%、続いてスキルアップが9.2%でした。
参照:「在宅勤務推奨時における副業・複業者のサービス利用状況調査」を発表|ランサーズ

 

特に、ウーバーイーツは宅配需要とともに急速に配達員が増えており、現在、配達員同士で仕事を奪い合う状況が生まれており、問題視されています。

 

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ジョブ型雇用

テレワークの普及で、部下の勤務態度や人付き合いの良さなど、感情的な部分での評価が排除され、成果重視での評価をせざるを得なくなっています。より効率化を高めようと、現在注目されているのがジョブ型雇用です。ジョブ型雇用は、職務を中心に採用する雇用契約で、日立製作所、富士通、資生堂、KDDIなどが導入をしています。
成果主義で正当な評価を受けられる反面、スキルのない新卒は就職において不利になる側面もあります。

 

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社内副業/社外留職

社内の違う事業部、部署の仕事を兼任してもらう「社内副業」、まったく別の企業に派遣されて働き、スキルやノウハウをつける「社外留職」など、新しい複業の形が生まれています。一般的な複業と異なり、会社側で勤務実態を把握・コントロールできるうえ、会社側に知見やスキルが蓄積することで、注目されています。

 

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まとめ

アフターコロナ、ウィズコロナの時代では、今まで以上に、自分の頭で考えて行動する姿勢が求められます。変化に適応するためには、安定した環境にいるのではなく、変化し続けることが重要です。ここに紹介した働き方だけでなく、今後は個々のライフスタイルに合わせて、さまざまな働き方が登場するでしょう。今一度、自分の働き方、生き方を問い直してみてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等