「旅しながら働く。」そんな夢のような働き方があるのをご存知ですか?「ワーケーション(ワークとバケーションをかけ合わせた造語)」と呼ばれるこの働き方は、2000年代にアメリカで誕生しました。企業は、ワーケーションを導入することで、従業員のエンゲージメントを高めることができ、また地方自治体とのつながりを作ることができます。本記事では、ワーケーションの魅力やメリット・デメリットについて解説します。

ワーケーションとは?

ワーケーションとは、ワークとバケーションをかけ合わせた造語で、休暇をとりながら仕事をする働き方を意味します。 ワーケーションは、地方創生にも活用されており、自治体も率先して企業誘致の流れが起こっています。

例えば和歌山県白浜町では、三菱地所と提携し「WORK×ation Site南紀白浜」というワーケーションに活用できるオフィスを設立、ワーケーションを実施する企業を誘致しています。開業後すぐに問い合わせが立て続けに入り、このワーケーションという働き方への注目度が伺えます。

ワーケーションとリモートワークの違い

リモートワークは、直訳すると「遠隔の仕事」。遠隔で仕事をすること全てを指す広義的な言葉で、ワーケーションもリモートワークに含まれます。 つまり、リゾート地で休暇をとりながら仕事をしていれば、ワーケーションという意味でのリモートワーク、オフィスと同じ地域にあるカフェや自宅で仕事した場合は、ただのリモートワークになります。

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ワーケーションが注目されている理由

ワーケーションという働き方が、なぜ今になって注目されるようになったのでしょうか?最も大きな要因は日本の有給取得率の低さにあります。2019年3月にディップ株式会社が行った「有給休暇の取得についてのアンケート調査」によれば、「38%が取得しにくい雰囲気である」と回答しています。取得しやすさは以前よりも高くなっていますが、未だ4割弱が有給休暇がとりずらいと思っています。


<参照:はたらこねっと|「有給休暇の取得についてのアンケート調査」より>
https://www.hatarako.net/pr/2019/0307/

ここで、海外に目を向けてみると、日本は新興国・先進国12カ国中、3年連続最下位となっています。エクスペディア・ジャパンが世界19ヶ国18歳以上の有職者男女計11,144名を対象にに行った「有給休暇国際比較調査2018」によれば、取得率は50%で最下位です。

<参照:エクスペディア・ジャパン|「「有給休暇国際比較調査2018」より>

https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2018/

このような事態を受けて、厚生労働省は、2019年4月から全ての企業を対象に、年10日以上の年次有給休暇のうち、年5日は従業員が時季を指定できる改正案を発表しました。 従来は、人材をコストと考え、どれだけ人材を使い倒し、かけたコストを回収するかという考え方でしたが、従業員の健康管理を経営課題とする「健康経営」が一般化しつつある中で、ワーケーション制度を導入し、従業員にリフレッシュしてもらうことは、イメージアップにもつながり、ひいては企業全体の生産性向上にもつながります。

ワーケーションのメリット・デメリット

休暇と仕事を両立するワーケーションは、メリットも多くありますが、反面デメリットも。両面を知り、ワーケーションとはどういうものか考えてみましょう。

ワーケーションのメリット

家族や友人との時間を作れる

ワーケーション最大のメリットです。実家に帰りながら仕事をする、家族と旅行をしながら仕事。仕事が忙しくて、日頃なかなか有給休暇をとれない人も、家族や友人と会う時間を作れます。

生産性の向上

海や山のきれいな空気を吸いながら普段と異なる環境で仕事することで、脳が刺激されて新しいアイデアやヒントが見つかります。また、地元の人と交流したり、街を散策したりすることで、気分転換ができ、オフィスで働く時に比べて生産性がアップします。

有給休暇の取得率アップ

これは、企業側のメリットになりますが、ワーケーション制度を導入することで、有給休暇取得のハードルが下がり、忙しくて有給休暇がとれないという割合が減ります。

ワーケーションのデメリット

コミュニケーションコストがかかる

これは、リモートワークにも同様にある課題ですが、休暇と並行して仕事をするため、オフィスで働く他の従業員と温度感や時間の使い方が異なります。緊急を要する仕事を休暇先で行う場合は、事前に確保してもらう時間帯を決める、休暇中のおおまかなスケジュールを従業員から共有してもらうなどの対策が必要です。

セキュリティ面のリスクがある

プライベートと仕事が共存することで、どうしてもリスク意識が緩んでしまいます。社内でリスクマネジメント研修を実施する、リモート先で利用するパソコンにセキュリティソフトを搭載するなど、事前にリスクを排除しておきましょう。

勤務実態を把握しづらい

休暇と仕事の境目がなくなるため、どれだけ業務を行ったか、その実態の把握が難しいです。勤務時間で判断するのか、プロジェクトのタスクの処理数で判断するのか、あらかじめ方針を決めておく必要があります。

ワーケーションに向いている人、向いていない人

休暇と仕事の境目がなくなるため、向き不向きが分かれる働き方です。むしろ、フリーランスのようにオンオフの切り替えがあいまいな方が楽しいという方にとっては、最高の働き方かもしれません。

きっちり仕事とプライベートの時間を分けたい人にとっては、どっちも中途半端になってしまい、ストレスがかかるかもしれません。

ワーケーションで最も肝心なのは時間管理です。休暇なので移動時間が予想以上にかかる、現地でWi-Fiがつながらない、地元のお店に入ったら思いの外飲みすぎてしまったなど、想定外のハプニングが多発します。仕事に支障が出ないよう、事前にトラブルを予測しながら仕事の予定を立てておく必要があります。

ワーケーションを導入する際に企業が注意すべき点とは

ワーケーションを導入する際は、以下の点に注意が必要です。

セキュリティ管理を徹底する

前述のように、社外にパソコンを持ち出すことになるので、セキュリティリスクが懸念されます。新しい働き方を導入したけど、情報が漏洩し企業の信頼が失墜したら、元も子もありません。あらかじめ、社内PCに外部監視ツールを入れる、社員個人のPCの使用を許可する場合は、セキュリティソフトを配布・搭載を義務付けるだけでなく、セキュリティ管理研修を行うなど、意識面での啓蒙も徹底しましょう。

有給休暇と切り分けて考える

ワーケーションは、あくまで働き方の一つであり、有給休暇をとりやすくする取り組みにすぎません。働いている場所が異なるだけで、通常の「勤務」と変わりません。もっとも誤解されるポイントなので、説明会などで従業員にワーケーションと有給休暇の違いについて理解してもらいましょう。

労災保険の適切な運用

ワーケーションは、「在宅」勤務扱いになりますが、この場合でも労災は適用されます。「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に、在宅勤務者であっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されるという記載があります。 しかし、あくまで業務中に関連する事故または傷病に限定するもので、私的行為が原因による事故・傷病は含みません。また、移動中に傷病または怪我した場合は、通勤災害が適用されます。ただし、家族との休暇中、寄り道などは適用外です。あくまで、作業可能な場所に行くまでの間に起こった事故に限定されます。詳しくは、厚生労働省の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」のページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000545678.pdf

ワーケーションを導入している企業事例

最後に、ワーケーションの導入企業をご紹介します。ぜひ、自社に導入する際の参考にしてみてください。

日本航空(JAL)

大手企業で、ワーケーションを最初に導入した先駆け的存在。日本航空では、2017年からワーケーションを試験的に導入しています。2018年4月には勤怠管理システムにワーケーション勤務という項目を追加し、今ではテレワーク経験者は50%を超えているそうです。 また、2019年5月には「ブリージャー制度」と呼ばれる出張と休暇が合わさった制度がスタートし、従業員に寄り添った多様な働き方を常に仕掛けています。

株式会社JTB

JTBでは、2019年4月から「ワーケーション・ハワイ」と呼ばれる制度を開始。休暇でハワイを訪れた際、ハワイにあるテレワーク拠点を利用し業務を行うことができます。ハワイという開放的な環境で仕事をすることで、クリエイティブな発想やアイデアが生まれることを狙いとしています。

まとめ

ワーケーションは、華やかなイメージが先行する働き方ですが、企業、従業員ともに十分な理解がないまま導入すると、「自分はオフィス勤務なのに、なぜ〇〇さんは遊んでいるのか」とチームワークが乱れたり、「休暇なのに仕事を強いられる」と従業員から反発が出たりと、うまく導入できません。 もし導入を目指すなら、ワーケーションが自社と従業員にどのようなメリットをもたらすのか、明確にしてみると良いでしょう。