オフラインからオンラインを中心とした生活様式に変わる中で、現在注目されているのが「セレンディピティ」です。セレンディピティとは、偶然の幸運を手に入れる力で、オンラインで、どのようにしてこのセレンディピティを作るかが課題となっています。本記事では、セレンディピティの概要や使い方、事例について解説いたします。

セレンディピティとは?

セレンディピティとは「偶然の幸運を手に入れる力」を指します。セレンディピティは、科学者が研究中に「偶然生まれた発明や発見」を指す言葉で、実際に、2000年のノーベル化学賞受賞者・白川秀樹氏、ノーベル化学賞・鈴木章北海道大名誉教授なども、数々のインタビューや講演会などで、「セレンディピティ」という言葉を使っています。

セレンディピティは、固定観念や既存の価値観に囚われず物事をフラットに判断する「ラテラルシンキング」を強化するためにも必要な要素で、VUCAと呼ばれる変化がめまぐるしく訪れる昨今においては、習得必須のスキルとなっています。

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セレンディピティの語源

セレンディピティの語源は、英語「serendipity」から来ています。「serendipity」は、3人の王子の知恵と機転で人生が好転した話が書かれた「セレンディップの三人の王子たち」を読んだホレス・ウォルポール氏が1754年に生み出した造語とされています。

セレンディピティとシンクロニシティの違い

シンクロニシティとは、心理学者のカール・グスタフ・ユング氏によって唱えられた考え方で「意味のある偶然の一致」「共時性原理」などを意味します。シンクロニシティはあくまで現象そのものを指すのに対し、セレンディピティは、偶然の幸運を手に入れる、主体的な力を指します。

セレンディピティの使い方

セレンディピティは、さまざまな分野で活用されている言葉です。ここでは、具体的な使い方について解説いたします。

マーケティングとセレンディピティ

マーケティングでは、予期せぬ偶然の出会いを求める購買行動を「セレンディピティ消費」と言います。中身の分からない福袋や行き先の分からないミステリツアーなどに人が惹かれるのは、まさに消費行動の予定調和をなくし、新たな物事や人との出会いを期待している「セレンディピティ」と言えるでしょう。

ビジネスとセレンディピティ

ビジネスにおいては、セレンディピティは一つの能力・スキルとして捉えます。ただの偶然の産物で終わらせず、それを新たな視点と解釈しイノベーションに活用します。このセレンディピティをロジカルに管理してうまくビジネスに活用することを「セレンディピティ・マネジメント」と呼ぶこともあります。

セレンディピティが重要である理由

では、なぜこれほどまでにセレンディピティが注目されているのでしょうか。

オンラインを前提とした新たな生活様式

新型コロナの蔓延で生活様式が一変しました。今まで当たり前だった居酒屋での打ち上げ、夏フェス、海水浴場、旅行など、人が多く密集する場所や移動を避けることが求められ、オフラインからオンラインを主軸とした生活様式に変わりつつあります。

オンラインが主になったことで、物理的距離のある人・組織同士がビジネスを遂行できたり、交流ができたりと、今までにはないネットワーク構築、事業活動の広がり方がなされていますが、オフラインのように偶然性(セレンディピティ)は生まれにくく、予想外のつながり、発見、イノベーションを、どのようにオフラインと同レベルで構築するのかが今後の課題となるでしょう。

インターネットによる情報やニーズの分断

ITが発達し、日々新たな情報がインターネットの海に生み出され続けています。2018年にvpnMentorが行った調査によれば、世界のWebサイトの数は12億4000万、インターネットのユーザ数は約41億で、2018年当時の世界人口74億の約半数以上がインターネットを使っている計算となります。

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これほどまでに、情報があふれかえっているのにもかかわらず、私達が取得できる情報はごくわずかです。検索結果は、SEO・SEM対策がなされた記事が上位表示され、そしてSNSでは自分の閲覧履歴を基に算出された広告の数々、見渡せば自分の興味の範囲の中でしかなく、そこに新しい情報や人との出会いに感じるワクワクやドキドキは多くはないでしょう。 現在、人とのつながりやコミュニティというものが見直されてきているのも、こういったインターネットの成熟や情報の分断に嫌気が指したことと関連性があるといっても過言ではありません。事業者としては、いかにユーザーの「セレンディピティ」を引き出し、想定を超えたプロダクトを生み出せるか、予想外の新たな出会いを作れるかが重要になってくるでしょう。

セレンディピティが起こりやすくするためには?

セレンディピティをより多く引き起こしマネージしていくには、一体どのような方法が有効なのでしょうか。

新しいことにチャレンジする

セレンディピティにおいて重要なのは行動量です。さまざまな価値観や物事に触れることで、思いもよらない結果や組み合わせが閃き、セレンディピティが起こりやすくなります。いつもと違うランチを食べてみる、新しいジャンルの本を読んでみるなど、小さなチャレンジから始めましょう。

「ゼンブラニティ」から抜け出す

ゼンブラニティとは、セレンディピティの反対の言葉で、幸運な予想外の出会いがない、 予定調和で無機質な決まりきったこと、またはその能力を指します。

ゼンブラニティは、ジェームズ・ボンド・シリーズなどの脚本で有名なイギリスの作家、ウィリアム・ボイド氏の作品「アルマジロ」で出てきた冷たく不毛な土地「ゼンブラ」に由来します。例えば、会社と自宅の往復にならないよう、週末は旅に出たり、社外のコミュニティの人と交流をしたりするなどして、考えや視点が閉鎖的にならないよう意識することが重要です。

自分の考えやアイデアを表明する

自分の考えやアイデアを頭の中にとどめておくのではなく、SNSで発信したり、周りの人に表明したりしてみましょう。自分では思いつかなかったアイデアをもらえたり、違う角度からの閃きを得られたりします。

ゼロベース思考を持つ

ゼロベース思考とは、今自分が持っている前提を一旦なくして考える思考法のこと。ゼロベース思考でよく取り払われる前提は、お金、時間、スキル、人脈、住む場所など。これらを一旦無視し思考することで、今までは想像もつかなかったアイデアの結びつきが起こり、セレンディピティを引き起こさせる確率が高まります。

セレンディピティが成功につながった企業事例

最後に、セレンディピティがビジネスに活かされた事例について解説いたします。

3Mポストイット

セレンディピティで最も代表的な成功事例は、3Mのポストイットです。3Mの研究員であったスペンサー・シルバー氏は、強力な接着剤の開発をしていましたが、うまくいかず粘着性の弱い製品が出来上がってしまいました。ただ、その中で「よく接着するが簡単にはがれる」ものもあることに気づきます。同じく研究員であったアート・フライが「しおりとして使えるのでは」と閃き、商品化に至りました。

コカ・コーラ

コカ・コーラの前身は、コカ・ワインの一つ、「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」という製品でした。当時のアメリカでは、爆発的な人気を誇りましたが、1886年にアトランタで 禁酒法が制定され、販売ができなくなりました。そこで、ワインを炭酸水に変えてみたところ、予想を超える美味しい味ができあがりました。これが、現在のコカ・コーラの原点となります。

まとめ

セレンディピティは、単なる幸運ではなく重要なスキルの一つです。今後、どのようにしてオフラインと同じようにオンラインでもセレンディピティの機会を作っていけるか、それが、今後の時代を生き抜くヒントになるかもしれません。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等