単発の仕事をインターネット経由で依頼発注する労働形態「ギグエコノミー」。

アメリカから始まり、現在は日本にも広まりつつあります。コロナウイルスの世界的蔓延で、場所の制約を必要としないギグエコノミーという働き方の需要が高まりを見せています。 とはいえ、まだまだギグエコノミーは未成熟市場であり、定義もあいまいなのが現状です。

本記事では、ギグエコノミーの定義や問題点、メリットデメリットについて解説いたします。

世界で拡大しつつある「ギグエコノミー」という働き方

単発の仕事をインターネット経由で依頼発注する働き方を指す「ギグエコノミー」は、もともと音楽分野で使われていた、ミュージシャン同士が行う短いセッション「Gig」が語源とされています。Master Cardの調査によれば、ギグエコノミーの市場規模は22兆円(2040億米ドルほど)といわれています。

<参照:Mastercard Gig Economy Industry Outlook and Needs Assessment| Mastercard and Kaiser Associates>

https://newsroom.mastercard.com/wp-content/uploads/2019/05/Gig-Economy-White-Paper-May-2019.pdf

また、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査では、2025年ごろには世界で37兆円の市場になると予測しています。

ギグエコノミーが生み出す貧困。課題と問題点とは?

ギグエコノミーは、2000年代頃から米国で広がり始めました。米国のある調査によれば、2018年には5300万人、全労働人口の約35%がギグエコノミーであることが明らかになっています。

ただ、アメリカではギグエコノミー市場が成熟、求人よりもギグワーカーの数が増え、参入障壁の低い配達業務、清掃業務などが著しく報酬額が低下し、貧困を助長していると懸念されています。

ギグエコノミーにおける雇用契約はあくまで業務委託となり、社会保険や労災などは適用されません。これを悪用し、実質正社員と同等の労働をさせ、いわゆる「搾取」をしているケースが長らく問題となっていました。これを受けて、米カリフォルニア州では、2019年にギグエコノミーの労働者を保護する議会法案第5号(通称AB5)を成立しました。

ギグエコノミーとは?

ギグエコノミーとは、インターネットを通じて単発の労働を受発注する働き方のことを指します。ギグエコノミーをする働き手は、「ギグワーカー」と呼ばれます。似た言葉にクラウドソーシングがありますが、こちらは企業(発注主)が不特定多数の外部のワーカー(受注者)に対して、業務を発注する業務形態のことであり、単発or継続の区分はありません。ギグエコノミーよりも、広義的な意味合いを持ちます。

ギグエコノミーとシェアリングエコノミーの違い

ギグエコノミーと似た概念として、シェアリングエコノミーがあります。ギグエコノミーは、自分の労働力や時間というリソースを提供するのに対し、シェアリングエコノミーは「メルカリ」に挙げられるように、モノをシェア(貸し出し)します。 ただし、日本ではギグエコノミーという呼称が根付いておらず、人をシェアする「タイムチケット」や「ストリートアカデミー」などもシェアリングエコノミーとして定義されています。

ギグエコノミーの代表的企業サービス例

現在、ギグエコノミーで代表的と呼ばれる企業をいくつかご紹介します。

Airbnb(エアビーアンドビー)

Airbnb(エアビーアンドビー)は、2008年に設立。2020年現在では、220以上の国々、10万都市、700万以上の物件数を誇る世界最大の個人宅宿泊仲介のサービスです。日本には、2014年に上陸、日本でも年々増加し、人気都市ランキングでも、東京、大阪が10位以内にランクイン。世界で2都市がランクインしている国は日本だけだそうです。

家を提供するホストがAirbnb(エアビーアンドビー)を通して旅行客を宿泊させた場合、その対価として報酬を得ることができます。つまり、部屋を貸すほど、多くの報酬が得られます。

Uber(ウーバー)

2009年アメリカで立ち上がった自分の車でお客さんを移送するライドシェアサービス。本事業のライドシェアサービスを含め、「UberEats(ウーバーイーツ)」や「「Other Bets(アザーベッツ)」などを含めた拠点数は、世界63カ国、700都市まで拡大しています。 日本ではUberEats(ウーバーイーツ)のギグワーカーが特に急増しています。専門用アプリを登録すると、通知が来るようになります。

配達員は、自身の予定に合わせて、配達リクエストを「受け入れる」「拒否する」選択権があります。配達をこなすほど、より多くの報酬が得られます。

ランサーズ

ロゴ制作、Webサイト制作、ライティングなどの業務を請け負うクリエイターと発注したい企業をマッチングするプラットフォーム。クラウドソーシングサービスとも呼ばれます。2008年にサービスがリリースされ、現在登録ユーザー数は約100万人、仕事依頼数は235万件となっています。クラウドソーシングでは、案件は専用のサービスページ上に掲載されます。

受注者は条件の合う案件を任意に選択し、発注者に実績や稼働時間、スキルなどの情報を送ります。発注者によって選ばれた場合、はじめて案件開始となります。発注者に提案し、案件を受注するほど、より多くの報酬を獲得できます。

ギグエコノミーが広まりつつある背景

今後、ギグエコノミーが広がると想定される背景にはどんな要因があるのでしょうか? それは、以下の3つになります。

ワークスタイルの多様化

日本では「働き方改革」が2019年4月に施行されました。そこから、複業解禁、残業規制、同一労働同一賃金など、さまざまな働き方に関する制度が増加しています。 働き方の柔軟性が高まるとともに、ライフスタイルに合わせて働く働き方が定着し始めました。例えば、介護や育児をしながら働く「短時間正社員制度」や「イクボス制度」、企業独自の取り組みとして、「子連れ出勤」「企業内保育所」を整備するところも。 このような背景もあり、本業のスキマ時間を使い、複業をする人も増えてきました。

また、コロナウィルスの蔓延を契機に、PC一台でできるシェアリングエコノミーやギグエコノミーに今まで以上に注目が集まっています。

プラットフォームの乱立化

シェアリングエコノミー、ギグエコノミーのプラットフォームは年々増え続けています。例えば、スキルシェアの部分で言えば、「ココナラ」「タイムチケット」「ストリートアカデミー」「Cyta」、スポットコンサルの「ビザスク」、ドクターシェアリングサービス「LEBER」など、その数は50以上にのぼります。

企業の人手不足

少子高齢化により、将来的に人口不足に陥ると言われています。多くの企業は、従業員を長期戦力化し、本業の拡大をはかりつつ、本業以外の雑務をAIなどのコンピューター、またはフリーランス、ギグエコノミーなどの社外人材に依頼する流れができるでしょう。

ギグエコノミーのメリットデメリット

ギグエコノミーには、メリットもあればデメリットもあります。それぞれ、企業側と従業員側におけるギグエコノミーのメリットデメリットについて解説いたします。

企業側

まずメリットとして挙げられるのは、人件費削減です。ギグワーカーとは、基本的に業務委託契約を締結するため、社会保障や厚生年金、福利厚生の費用負担が発生いたしません。 またもう一つとしては、多様な人材と出会えるということ。ギグワーカーの中にはリタイアしたベテランもいれば、若手の人もいたり、スキルセットも十人十色です。

反面、デメリットとしては、知識や技術の質が担保されないことです。また、知識や技術を 自社に蓄積しないため、常に一定の業務をギグワーカーに依存することになります。 また、業務上の過失においてのリスクも考えられます。例えば、ギグワーカーが秘匿情報や機密情報を流出する、SNS上で発注主の態度が悪かったなどと告発され、企業イメージが失墜してしまうことも。ギグエコノミーの使い所には十分注意が必要です。

従業員側

最大のメリットとしては、時間と場所に囚われず、自分の生活スタイルに沿った働き方が実現できることです。

また、本業で得たスキルや知見をギグエコノミーで活かし、さらにスキルを成長させることも。うまく活用すれば、起業やフリーランスのための足がかりにすることもできます。 反面、ギグエコノミーのサービス乱立化によって、ギグワーカーが増加、単価は下がりつつあります。価格競争に巻き込まれ、「搾取」される危険性もあります。また、正社員と違い安定の保証はありません。もし怪我をしても労災は降りませんし、単純労働をしているだけでは一向に報酬もアップしません。空いた時間で、知見やスキルを高め、自分ができることを増やしていく、ハングリーさが必要です。

まとめ

働き方改革により、従業員の労働時間は短くなり、今まで以上に余暇の時間を使い、自分のスキルアップや経験値をつけたいというニーズは高まるでしょう。その中で、ギグエコノミーという働き方は非常に有用性の高い働き方であると感じます。 法制度などは十分に整っていませんが、このように「場所や時間に囚われない」柔軟な働き方は、ますます広がりを見せそうです。