働き方改革により、複業、時短勤務、リモートワークなど、多様な働き方が次々と登場しています。近年は、全国各地にある物件に定額で住める「コリビングサービス」が複数リリースされたこともあって、地方と都心部の2つの拠点で生活する「デュアラー」「アドレスホッパー」など、場所にとらわれないくらし方を実践する人も徐々に増えてきました。

といっても、二拠点生活は「お金がかかるんじゃないの…」「どちらも中途はんぱになりそう」など、なかなか最初の一歩が踏み出せない人が多いと思います。

そこで、今回は、東京と山梨で二拠点生活を実践している辻さんに、二拠点生活をはじめようと思ったきっかけや魅力、大変なことなどをお聞きしました。

前編では、辻さんの生い立ちから、二拠点生活に興味を持つきっかけについて、深堀りしました。ここからは、いよいよ、気になる二拠点生活のメリット、デメリットについて迫っていきます。

二拠点生活のメリット・デメリット

ーー実際に、二拠点生活をやってみて感じたメリットを教えてください。

メリットは全部で3つあります。1つ目が「視野が広がる」ことです。東京では、新しい人と情報に出会えます。反面、地元では、その土地に根付いた話を聞くことができます。人よりも二倍インプットをしている感覚ですね。

2つ目が「生活にメリハリが出る」ことですね。わたしの場合、二拠点先が地元なので、実家で過ごす時間や昔からの知人に会うことでリフレッシュできます。また、自然に囲まれた環境に身をおくことで新たな考え方が浮かんだり、自分を見つめ直す時間もとれたりするようになりました。

 

3つ目が「東京と地方の中継点になれる」こと。2つの地域に顔を出しているので、私を介して東京から山梨、山梨から東京という流れを作ることができます。例えば、地元で仲良くなった方と東京でPRイベントを開催したり、北杜に移住したい、北杜で仕事したいという方を地元に紹介したり。

 

ーー反対に、どんなデメリットがありましたか?

メインの収入源が東京にあると、つい東京にいる時間が長くなってしまうことですね。私も1年前は、金曜〜月曜は山梨、火曜〜木曜は東京と半々ずつでしたが、昨年末から今年にかけては本業が忙しくなり、東京にいる時間が長くなっています。たとえ熱量があっても、東京の忙しさに流されてしまいます。次、地元に帰ったときに何をするか計画を立てておかないといけないなと感じました。

ーー熱量があっても、東京に意識がよってしまうのは意外でした。二拠点生活だと、移動が大変そう、お金がかかりそうというイメージを持つ方が多いと思いますが、そのあたりはどうでしょう?

新宿から甲府までは特急あずさで90分、そこから在来線1本で最寄り駅まで帰れるので、慣れてしまえばそこまで苦になりません。また、私の場合は、実家を拠点にしていて、かつ車は妹と二人でカーシェアをしているので、コストを抑えられていると思います。

それに、特急あずさには電源もWi-Fiもついているので移動中も快適に仕事ができます。強いてあげるなら、体力面が少々厳しいくらいですね。

ーー辻さんのSNSで、「電車で仕事をしていたら、タイピング音を注意された」という投稿を拝見しました。

二拠点の人は、移動時間で仕事をすることが多いのでそれが当たり前と思ったのですが、なかには電車でゆっくりしたい方もいるので……。移動中の過ごし方は考えないと思っています。

 

二拠点生活で大切なスキルは、「巻き込まれ力」

ーー二拠点生活を始める際に気をつけた方が良いことやコツがあれば教えて下さい。

二拠点生活という暮らし方を誰もが歓迎しているわけではないということ。

二拠点生活を、「地元を思って活動してくれている」と捉える人もいれば、「二拠点生活は責任を取らない立場、都合が悪くなったら東京に帰るのだろう」と捉える人もいます。

二拠点先が地元でなければ、この二極化の傾向がさらに強くなると思います。 移住すると決断は覚悟を示すことでもあるので、これから二拠点生活するなら、住環境を地方に移し、定期的に東京に帰る方が、地域の人とのコミュニケーションも円滑になるし、生活が豊かになると思います。

ーー確かに、二拠点生活のスタンスを悪い方向に捉える人もいるという事実は、頭の片隅に入れておいたほうがよさそうですね。また、どこの地域にも必ず対立やしがらみがあると思いますが、どのように交流するのが良いでしょう?

最初のうちは、あまり気にせずに、いろいろな人に会うことをおすすめします。というのも、関係性を知ってしまうと、変に気をつかって、会いづらくなるので。

ーー確かに……!重要なポイントですね。意外と語られていない気がします。

わたしは地域に愛着があるので、地元と密に関わりたいし、外のコミュニティをどんどん巻き込みたいのですが、なかには距離をとることで、地元のしがらみに巻き込まれずに、やりたいことをやっている人もいます。「自然に囲まれたところで〜したい」と思っている方は、無理に地域と接点を持たなくても良いのかなと。

まず、自分が地域とのつながりを求めているのか、それとも他のことを求めているのか、そこを明確にしてから、行きたい街や関わり方を考えると良いと思います。

ーー二拠点生活で、ずばり必要だと思うスキルは?

「予定管理」「体調管理」「巻き込まれ力」の3つですね。二拠点生活では、とにかく移動が増えるので予定管理が命です。もし、時間を間違えたら、双方に迷惑をかけてしまうので。また、移動は思う以上に体力を使うので、常に体調管理にも配慮する必要があります。

最後の「巻き込まれ力」というのは、声をかけられる力とも言いかえられると思います。

地域の人たちは、深く関わっていくと実はいろいろな活動をしている人が多くて。こういう人たちに「一緒になにかやらない?」と言われるポジションというか雰囲気を作っておくことも非常に重要です。

最初から「こういうことをします」と宣言して、地域に関わるのも良いですが、そうすると、そこにはまらない話は自分に入ってきません。あえて決めなければ、いろいろなことに声をかけてもらいやすくなります。

裏を返せば、やりたいことが明確に決まっていなくても、地域の人と関わっていくことはできます。


ーー今回、コロナで生活様式が一変しました。今後、二拠点生活や地方移住という選択肢はどうなると思いますか?

今回の一件で、地方にスポットライトがあたると思っています。今までも、東京一極集中を是正する話は出ていましたが、現実的に住まいを地方に移せない人がほとんどだったと思います。

しかし、リモートワークが普及し、家族との時間や自分の生活や暮らし方を見つめなおす、丁寧な暮らしを考える人は増えたのではないでしょうか。

今後は、「なぜ高い家賃を払って都心に住むのか」と考えなおす人は増えるだろうと思います。そうなったときに、地方移住や二拠点生活は一つの選択肢になりそうですよね。人も密集していないし、自然が豊かなので、健康面においてもリスクが低いですし。また、兼業農家という暮らし方を選べば、最低限、家族が食べる分を確保することもできます。

 

ーー今後の展望について教えてください。

まず、会社の展望についてお話しすると、ゴールデンウィーク明けから、弊社に登録している専門家にコロナの状況でどのように対処すべきか話してもらうオンラインセミナーを定期開催しています。

▼Going Going Local
https://going-going-local.com/

また、少し先の話でいくと、地方で複業するハードルを下げるために、ツアーと現地での複業をパッケージにした「複業スクール」のようなコンテンツを、状況が落ち着いたらすすめる予定です。やはり、いきなり地方で複業する・複業してくれる人を受け入れるイメージができないことが多いので、ツアー形式にすることで、気軽に複業を実践してもらえるのかなと思っています。

個人の目標では、今年は自分のやりたいことを形にしようと思っています。今、友人と企画しているのが地元のお気に入りの通りで、デリ(サンドイッチや持ち帰り用の惣菜を販売する飲食店)を開くことです。友人は料理が得意で、少し前までイギリスのある有名なデリカフェで働いていて、山梨で作られた食材を使ってテイクアウトできる料理を提供する予定です。

ただのデリではなく、生産者さんとふれあいながら食を楽しむコンテンツを企画できたら良いなと思っています。これは引き続き、複業の活動として進めていければと思っています。拠点ができれば地域活動の幅も広がるし、そこで得た課題を本業のGoing・Going・Localの事業に役立てることもできます。

▼白州関連のオンラインイベント
https://www.facebook.com/events/2334390870188612/
https://www.facebook.com/events/1169385700097454/

白州関連のオンラインイベント

ーー最後に、二拠点生活を検討している人へ、メッセージをお願いいたします。

現状で、二拠点先を探している人に関しては、まず実践者の話を聞き、なぜその場所を選んだのかを聞きながら決めていくとよいです。

二拠点生活の行き先が決まっている方は、情報収集をした上で、まず現地に足を運んでみましょう。行かないと得られない情報はたくさんあります。旅行するのではなく、現地の人を訪ねることが重要です。

現地の人は、別に知り合いでなくてもよくて、もし検索していて気になる人がいればメールやSNSで連絡を取って会うのもありだし、イベントで登壇していた実践者に話を聞きに行くのでも良いと思います。

まずは、自分にできることから始めてみましょう!