テレワークの推進により、変わる働き方、暮らし方。場所や時間の制約がなくなり、さまざまな新しい働き方が生まれています。今回、取り上げるのは、多拠点生活で日本全国を転々としながら、会社員の仕事と複業の仕事をされている西出さん。本記事では、西出さんに「多拠点生活とはどのような暮らし方?」「お金はどのくらいかかる?」「メリットは?」多拠点生活の気になる部分を詳しくお聞きしました。

※当取材は、オンラインにて実施しています。

西出さん

家族の病をきっかけに、働き方や暮らし方に疑問を持つ

ーーまず、西出さんの今のお仕事について簡単におしえてください。

現在は、株式会社ニットという会社で働いています。株式会社ニットでは、事務作業や給与計算などバックオフィス系の幅広い業務をオンラインでアウトソーシングできるサービス「HELP YOU」を運営しています。私は、コミュニティマネージャーという立ち位置で、クライアントと円滑にコミュニケーションがとれるよう、400人のメンバーのチーム活性化やテレワーク活用をはじめ、さまざまな企業向けの研修を設計・講師を行うなどしています。

もともとは、カスタマーサクセスというポジションでしたが、好きをシェアするコミュニティ「HITOKOMA」や、チーフコミュニティビルダーとして関わっている「YADOKARI」など複業の活動をはじめ、ニット社内でコミュニティの可能性を発信してきたことで、コミュニティマネージャーというポジションに就くことができました。

ーー複業の活動が本業に結びついたんですね。今はとても自由で自分らしい働き方をされているように感じます。現在に至るまで、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか?

大学生の時は音楽フェスが好きなごく普通の学生でした。他の人と少し特殊だなと思うキャリアは、就職後にフェスの立ち上げを行ったことですね。

僕が新卒で入社したワークスアプリケーションズという会社では、卒業後一年以内ならいつでも入社できる「内定パス」という制度があって。全国を回るほど音楽フェスが好きだったし、これをきっかけに大阪で音楽フェスを立ち上げてみようと、大学卒業後、友人と二人で企画を始めました。結果、600〜700人を動員するフェスを開催できました

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ーー学生の頃にフェスを立ち上げる…。とてもインパクトのあるエピソードですね。その後はワークスアプリケーションズに入社されたのですか?

そうですね。ワークスアプリケーションズでは、主に大手企業の人事関連のコンサルティングや人事システムの販売を担当していました。ただ、入社して4年目くらいで達成感とともに自分で事業を興す経験をしたいと思いが強くなり、AI開発関連のベンチャー企業に転職しました。

転職して1年くらい経ったころ、父親が末期がんで余命1年と宣告されてしまって。そのころ、私は東京に住んでいて大阪に帰るのは年に2回ほどでした。今の仕事や東京で働く意味について本気で向き合うようになったんです。

ーーそれが、今の働き方や暮らし方を考える大きなきっかけだったんですね。その会社にいながら、二拠点生活をする選択肢はなかったのですか?

検討はしたのですが、AIは本社の中枢業務であることが多いのと、お客さんと打ち合わせする立場だったので、現実的に東京から離れることが難しい状況でした。また、当時は、今のようにオンラインで打ち合わせすることが一般的ではありませんでした。そこで、リモートワークができる転職先を求めて、転職活動を始めました。そこで出会ったのが今のニットでした。

ーーそういう経緯があったのですね。ちなみに、二拠点生活なら東京である必要はないと思うのですが、何か理由があったのですか?

最初は大阪に帰ることも考えました。しかし、東京で「HITOKOMA」というイベントの主催や他のフェスのコンサルティングもしていて、人のつながりが多くできていました。やはり面白いことをするとなると東京のほうがやりやすいし、新しい情報や人とも会いやすい。そういう理由から、東京にも軸足を置ける東京・大阪の二拠点生活をすることにしました。

「多拠点生活」をはじめたキッカケ

実は、提携している物件に住み放題できる多拠点生活サービス「ADDress」については、二拠点生活のころから少し気になっていました。ただ、そのころはオープンしたばかりで、クラウドファンディングでしか会員募集していなかったのに加え、年間利用料48万円を一括で払うプランしかありませんでした。人見知りだし、一人が大好きな人間なので、いきなりできるか不安でした。それにクラウドファンディングのページを見ると、すでに1100人がエントリーしていて、人気すぎて十分に使えるのか分からなかったため、この時は利用を見送りました。

ーーそれでも、多拠点生活を始めようと思ったわけですね。なかなか、勇気のいる決断だと思いますが、どのあたりが決め手でしたか?

二拠点生活といっても、東京には仕事をしに行くだけで、自宅には眠りに帰るだけだったんです。でも、それで東京で家賃と光熱費を合わせて11万円位を支払っている、これはもったいないなと思って。

そこで、ふとADDressのことを思い出し、あらためてWebサイトを見たら月額4万円の支払い方式に変わっていて、しかも最悪3ヶ月で契約をストップできると。またちょうどタイミングよく、最初の2ヶ月間だけ半額になるキャンペーンをしていたんです。合わなければ、実家やホテルぐらしの二拠点生活に戻ればいいし、ひとまずやってみようと。そんな気軽な感じで始めたのがきっかけです。

ーーまずは「やってみよう」だったんですね。多拠点生活といっても、どのように生活しているかイメージできない人も多いと思います。改めて「ADDress」の仕組み・システムについておしえてください。

ADDressに登録すると、まず無制限に住める自分専用の拠点を一つ選ぶことができます。一方で、それ以外の拠点にも行くことができて、拠点によっては個室やドミトリー、一軒家の場合もあります。一拠点につき最長で連続7日間まで予約でき、予約できる最大日数が14日までとなります。一日経過するごとに予約可能日数が更新されていきます。

ーーということは、1日ごとに違うエリアの拠点に住むことも?

実際にそのライフスタイルをされている会員さんもいらっしゃいますね。ADDressは、「知らない土地で過ごす」がコンセプトなので、郊外の物件が多いですが、品川、二子玉川、雑司が谷など都心部にも新しく拠点がオープンしています。

あたらしい人や土地との出会い。変わる価値観・暮らし方

ーー多拠点生活になって変わったことはありますか?

まず一つ大きく変わったことが、モノを持たなくなったことですね。洋服、本、家具・家電など、身の回りにあるものはほとんど処分しました。実家に保管してあるキャンプ用品を除けば、私物はダンボール3箱分くらいしかないと思います。

ーーダンボール3箱…。とても身軽ですね。やはり、多拠点生活を始めて移動距離も増えましたか?

そうですね。月一回の大阪と東京の移動をベースに、どこか別の拠点に寄り道することが増えました。ついこの前は、長野の小布施町の拠点に約1週間滞在していました。東京にいるときも、なるべく二子玉川や習志野など複数の拠点を回るようにしています。それにADDressはANAと提携もしていて、追加で月3万円払えば提携の飛行機を最大4回まで使うことができるんです。(2020年7月時点)東京⇔大阪などの2往復はもちろん、東京、大阪、札幌、東京のような使い方もできます。さらに、行動範囲が広がりそうですね。

ーーちなみに、今月の移動スケジュールはどんな感じですか?

もともと、うちの会社はフルリモートですが、今回のコロナの影響で、より一層リモートワークが推進されています。今月は品川、小田原、白馬に行く予定で、今まで以上に多くの地域に足を運ぼうと思っています。これから夏を迎え気温も高くなるので避暑地に行きたいですよね。

ーー暑いときに避暑地に行けるのは、一つ大きなメリットですね。他に多拠点生活を始めて感じたメリットはありますか?

普段出会えない人と出会えて新しい刺激をもらえることですね。学生の人もいれば、全国飛び回っている会社員・フリーランスの人などもいるし、多種多様な方々と交流することができます。

また、知らない場所に訪れることで価値観も変わります。3月は九州を回っていたのですが、まちおこしの事例を知れたり、その土地の名産物を知ることができたり、九州独自の文化に触れることができました。

大阪と東京の二拠点生活をしているときは予定を詰め込みがちで、よく体調を崩していました。ただ、長野の小布施にいたときは、とにかく好きなように過ごそうと決めて、予定をあまり決めませんでした。しんどくなったら、温泉に入って、昼寝して、本を読んで。このときに2年ぶりに自炊もしました。その土地の新鮮な野菜や旬のものに触れて、生活が整う経験をすることができましたね。

「多拠点生活」は失うモノも大きい。まずは小さな一歩から

現状で、二拠点先を探している人に関しては、まず実践者の話を聞き、なぜその場所を選んだのかを聞きながら決めていくとよいです。

ーーリモートワークが普及する中で、今後、二拠点居住・多拠点居住の意味は、どのように変わると思いますか?

地方移住、二拠点生活や多拠点生活というライフスタイルは広がると思いますね。実際にADDressの会員も増えていると聞きます。もちろん、全ての会社がテレワークに切り替わるわけではないし、オフラインの方がスムーズにいく仕事もあると思っています。なので、テレワークをする/しないの2択ではなく、オンラインとオフラインが共存・グラデーションになるという選択肢ができてくるのかなと思います。

そういう社会になれば、会社に行く必要があるのか、会社のそばに住み続ける必要はあるのかという問いを持つ人は増えますよね。移住や二拠点生活に関する補助金・助成金を新設している地方自治体も増えているし、地方移住がしやすい環境は整ってきています。

ーー今後の展望についておしえてください。

まずは自分の武器をつくり、自分で食べていける状態を構築したいですね。個人の仕事をもらいながら、住む場所を自由に選択できる状態をさらに加速させていければと思います。

ただ、多拠点生活をこの先もずっと続けているかというと、それはわかりません。子供が生まれたり結婚したりすれば、また考え方も変わると思います。だからこそ、今やりたい今できる暮らし方を追求したいですね。

ーー最後に、多拠点生活をしたい方へ、アドバイスがあればお願いします。

やはり、人と関わることが好きなほうが多拠点生活に向いていると思いますね。僕自身もそうですが、人と話すことで自分の考えが整理されたり、視野が広がったりするので、人と会うことを楽しむ努力をしてもよいのかなと思いますね。

そして、その新しい人との出会いにメリットを感じ、かつリフレッシュができて、住む場所が自由に選べるとなれば、月額4万円という金額はむしろ安く感じると思います。

また、1人になる時間や新しい人と出会う時間、気の知れた仲間と話す時間など、選択肢を複数持ちつつ選べる状態でいることが大切かなと思います。そうすれば、余白も生まれ、多拠点生活を存分に楽しめますね。

とはいえ、多拠点生活は初期投資もかかるし、多くモノを捨てることになるので、リスクは決して小さいとはいえないです。まずは、リスクの低い「実家-1人暮らし」間を起点とした二拠点生活をしてみましょう。その暮らしをやってみて、生活や仕事がまわる実感がでてきたら、次は住んでみたいエリアのホテルやゲストハウスをおさえて1週間くらい滞在してみる。多拠点生活をするのは、それからでも遅くないと思います。まずは、スモールスタートでチャレンジするのが良いかなと思います。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等