政府がすすめる「働き方改革」により、今日本の働き方は大きく変わりつつあります。よりグローバルに向けた、先進国としてのあり方を問われています。
 

「働き方」の変遷

まずは、終身雇用・年功序列から今の働き方になるまでのワークライフの変遷をおさらいしたいと思います。

終身雇用、年功序列制度の崩壊

従来の日本では、終身雇用、年功序列制度を前提に企業も労働者も回っていました。しかし、グローバル化、インターネットの発展などにより、世の中の状況は大きく変わり、終身雇用、年功序列というシステムでは成り立たなくなってきているのが現状です。

1997年、バブル崩壊の時期に大手証券会社だった「山一證券」が破産したのは記憶に新しいですが、ここ数年でも日本航空やタカタの倒産、東芝のPC事業からの撤退などさまざまな大手企業が倒産、事業撤退しています。

メガバンク三行では、AIによる業務自動化により、みずほ銀行では19,000人、三菱UFJ銀行では9,500人、SMFGでは4,000人と相次いで人員整理の計画を発表しました。

女性の活躍の場が広がる

1985年に制定された「男女雇用機会均等法」から、女性の社会進出は始まりました。しかし、法律が制定されても現場ベースではまだまだ男性優位で、昔の言葉でいう「お茶くみ」「コピー取り」という雑務が主で、「女性管理職」が珍しい状況でした。

しかし、少子高齢化が問題視され、1992年に育児と仕事の両立を支援する「育児・介護休業法」が制定されます。総務省が行った「労働力調査」によれば、女性の労働力人口は平成7年の2,700万人から比べると、平成30年は3014万人と300万人まで増加しており、10年以上ほぼ右肩上がりで成長しています。

>>労働力調査(基本集計)平成30年度(2018年度)平均

平成29年には、育児・介護休業法が改正され、男性の育児休暇所得促進の内容も盛り込まれました。

厚生労働省が行った「雇用均等基本調査」によれば、平成19年時点で男性の取得率はわずか1.56%、平成29年には5.14%と10年間で5倍まで増加しましたが、女性に比べればまだまだ低い状況です。

>>「共同参画」2018年6月号
 

長時間労働の限界。多様な働き方の台頭

2017年には、ヤマト運輸の残業代未払い問題、電通の過労死問題、学校教員の長時間労働問題など、さまざまな問題がメディアで取り沙汰されました。今まで、長時間労働で乗り切っていたあり方に限界が来たことを示す出来事でした。

2018年4月には、政府は働き方改革の一環として、長時間労働の規制のための法案を成立しました。実質、残業時間が青天井になっていた状況から、法律によって時間外労働を定め、違反した企業に罰則が課せられるものとなりました。これにより、多くの企業が長時間労働の規制に動き出しました。

プロジェクト単位でゆるくつながる?”フリーランス的”働き方に変わる!?

厚生労働省が「モデル就業規則」の労働者の遵守事項にある「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を削除し、副業・兼業の規定を新設したのを皮切りに、複業ブームが幕を開けました。

このころから、会社員が本業を持ちつつもさまざまな組織で働く「複業」、自分が持っている得意分野を活かし、社会に貢献する「プロボノ」という働き方が浸透しました。

今後はさらに働き方の多様化が進むことが予想されます。場所、時間、雇用形態はより柔軟になり、プロジェクト単位でゆるくつながる働き方が、会社員にも浸透していくでしょう。

「働き方」の変遷がもたらす社会のメリット

働き方が変わると、社会にはどのようなメリットがあるのでしょうか?それは大きくわけて以下の3つになります。

・少子高齢化の抑止

自分に合った多様な働き方が実現されることで、育児、結婚、介護など、仕事以外の家族・パートナーと過ごすプライベートの時間に目を向ける余力ができ、少子高齢化の抑止につながります。

・労働力・生産力のアップ

個々人に適した働き方が実現されることで、各々が最大限のパワーを発揮し、仕事をすることができます。

・心身の健康の向上

労働力・生産力が上がり、慢性的な長時間労働の状態から開放されます。自分に合った働き方ができることで、精神的、肉体的ストレスも減り、心身の健康につながります。

新しい働き方と実現するための1stステップ

新しい働き方とは具体的にどういうものか、そしてその新しい働き方を実践するには、どのような一歩を踏み出すことが適切なのでしょうか?

新しい働き方とは?

新しい働き方は、以下の3つの要素で考えることができます。

1.場所の自由

業務管理ツールやコミュニケーションツールが発達し、リモートワークやテレワークが可能になります。プログラマー、デザイナーといった一部の仕事ではすでにリモートワークを実践している人もいるでしょう。東京など物価の高い場所から地方都市に引っ越し、生活費を抑えながら貯蓄を増やす会社員も増えていきそうです。また、特定の場所に居住せず、国内外を行き来する「多拠点居住(コリビング)」も一つのライフスタイルとして定着するでしょう。

2.関わり方・雇用形態の自由

従来は、正規雇用が圧倒的に優遇され、非正規雇用にはどこかネガティブなイメージがついていました。しかし、働き方が多様化し、今では派遣社員、契約社員、アルバイトという働き方を選ぶ人も増えています。正社員をしながら、別の会社と業務委託で複業をする、複業社員という言葉も登場し、雇用形態の名称にとらわれない多様な関わり方が増えています。

3.時間の自由

雇用形態が自由になり、出社の必要がなくなることで、自分の都合に合わせた働き方が実現します。育児や親の介護をしながら、長期の海外旅行をしながら仕事もできるようになります。

結局楽になってるの?大変になってるの?

ここは意見が分かれるところでもあります。IT化によって作業が効率化されたという意見もあれば、効率化されて時間が空いて、さらに追加の仕事が増えてむしろ前よりも忙しくなったという意見もあります。

この原因のひとつに「IT化による弊害」があります。業務を効率化し、さらに新しい仕事を入れていく。これを繰り返すことで、現場は疲弊してしまいます。

仕事は効率化しても減りません。仕事の量自体を減らす努力が大切です。経営者には、単価を上げて受ける仕事を選択する力が問われるでしょう。ITやAIの使い方は枝葉末節の議論であり、本質は人の考え方です。人の考え方そのものが変わっていかないと、当面は現場の人が楽になったという印象は持てないかもしれません。

働き方が変わっても大切な意識・考え方

会社員という働き方はそこまで歴史が長いものでもありません。江戸時代には、自給自足をするもの、つまり「自営業者」が大半を占めていました。この頃は、外国との貿易・取引はほとんどない鎖国の時代で他国との競争に巻き込まれることもなく、自給自足でも生活することができました。

しかし開国が始まる明治時代から、国民も日本国外の状況を知ることとなり、「早く移動したい」「美味しいものを食べたい」「外国に行きたい」といった新しい欲望が出てきたことにより、新しい産業が次々と発展しました。

そして、そこから100年以上経ち今はまさに成熟期、大きな転換点を迎えています。明治時代の開国の時も、そして今の働き方改革の時も、どの時代でも生き残るのは「変化に順応する」かどうかです。

変化に順応するということは、誰かの指示待ちではなく、自分の頭で考えて行動するということです。

終わりに

世の中がめまぐるしく移り変わる時代。今の世の中の動きを見て、今後どのように進むのか、今の常識をうのみにせず、現状を疑うことが重要になってきます。自分を感覚を頼りにし「生きるとはなにか?」「働くとはなにか?」といった深く答えのない問いに頭を巡らし、考えることが重要なのかもしれません。