パラレルワーカー、複業、スラッシュキャリア、IT技術の発展により、どこでもいつでも働けるようになってから、さまざまな働き方が生まれています。 パラレルワーク、複業、兼業、副業、なんだか似たような言葉がいっぱい、どれも同じ意味と思っていませんか?本日は、混同しがちなこれらの言葉の違いを解説しつつ、パラレルワーカーの魅力や事例について解説いたします。

パラレルワーカーとは

本業だけに依存せず、複数の仕事やキャリアを持つ労働者のことを指します。パラレルは「平行」という意味を持つ英語で、このようなキャリアを「パラレルキャリア」と呼びます。 2019年3月には、労働基準法のモデル就業規則で、労働者の遵守事項における「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除し、副業・兼業についての規定が追加されました。

<参照:モデル就業規則について|厚生労働省

 

厚生労働省労働基準局が2017年に行った調査によれば、副業を希望している雇用者数の変化は、年々増加しており、計測開始の1992年から比べると、2351万人から、3850万人になっています。また、複数就業者の推移は、1992年に757万人から2017年には1288万人まで伸長しています。

<参照:副業・兼業の現状①/就業構造基本調査|厚生労働省

副業や兼業との違い

一般的には、副業は本業以外にサブの仕事を持つ働き方のことを指します。兼業は、メイン、サブという関係性がなく、いくつかの仕事を同じ熱量で行う働き方のことです。どちらかと言えば、兼業の方がパラレルワーカーの定義に近いと言えるでしょう。

パラレルワーカーに注目が集まる理由

なぜ、パラレルワーカーに注目が集まるようになったのでしょうか?それは大きく以下の3つの要因が関係しています。

ワークスタイルの多様化

働き方改革を契機に、徐々にワークスタイルの多様化が始まっています。大手企業の事例では、2016年にはロート製薬、2017年にソフトバンク、2018年には新生銀行、エイチ・アイ・エスなど、名だたる大手企業が副業解禁を行っており、働き方の変化の波が訪れています。今後は、5Gの本格的普及、テレワークサービスの台頭により、テレワーク・リモートワーク、Web会議の普及率も向上し、より個人のライフスタイルに沿った働き方が増えてくるでしょう。

終身雇用の終焉

終身雇用の終焉はすでに始まっており、今後さらに進行するものと思われます。2019年の5月には、日立製作所会長、中西宏明氏が日本経済団体連合会(経団連)の定例会見にて、「終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言をし、物議を醸しました。 また、2019年11月には、味の素が50歳以上の管理職を対象に、100人程度の希望退職者を募ると発表しています。2020年には、未曾有のコロナウィルスの大流行により、終身雇用という仕組みは瓦解し、テレワークや複業など、新しい働き方へ急激に変容しつつあります。

出社主義からの脱却

前述した5Gなどのネットワーク環境、Web会議やテレワーク関連のサービスが台頭することで、出社を伴わない働き方が広く浸透するでしょう。また、オリンピックで浸透するといわれていたテレワークが感染症による外出自粛という形で、奇しくも、普及せざるを得ない状況になってしまいました。今後は、「出社主義」は薄れていき、より実力を元にした評価、オンラインで完結する働き方へ本格移行するでしょう。

パラレルワーカーに人気の仕事とは

パラレルワーカーとしては、どのような仕事や職種で人気なのでしょうか?ソネットが2019年に全国の20〜50代の男女2,500人を対象にした調査の「あなたが現在やっている複業は?」という質問では、最もおおかった回答はライター・作家で「20.2%」、続いて投資家で「18.2%」、そして第三位がWeb制作で「11.2%」となりました。

<参照:パラレルワークに関する実態調査|ソネット

人気の職業上位に共通していることは、どれもオンラインで場所を問わずできる仕事ということです。ランサーズやクラウドワークスといったクラウドソーシングサービス、仮想通貨やFXなどが手軽に取引できるアプリの普及、そして複業解禁により、ライターや投資家などでパラレルワーカーをする人が増えたのだと予想できます。

パラレルワーカーになるメリット・デメリット

パラレルワーカーは、収入がアップする、人生を豊かにする、人脈が増えるなどのメリットもありますが、反面、長時間労働になりやすい、本業とのバランスを調整するのが難しいなどデメリットもあります。

メリット①収入源を分散させられる

在籍している会社一つだけでなく、パラレルワーカーとしてさまざまな組織に関わり仕事をすることで、万が一、不況や倒産などで会社員の収入を失っても、収入がゼロになるリスク減らすことができます。今は大手企業であっても、倒産、破産する時代。パラレルワーカーの最大のメリットといえるでしょう。

メリット②自分の肩書きで仕事をする経験ができる

会社では、会社のネームブランドを使い、仕事をします。なかなか自分の名前で仕事する経験に巡りあいません。個人として仕事をする場合、まず信用信頼を積み重ねるところから始める必要があります。小さな仕事をコツコツと行い、信頼を積み重ね、自分の肩書きで価値を生み出す経験をすることができます。

メリット③社内ルールに囚われない働き方ができる

たとえ、自由な社風の会社といっても、組織は組織。必ず、会社独自のカルチャーやルールが存在します。ひとたび、会社以外で仕事をすることで、自分の会社を客観視できるとともに新しい常識やルール、仕事の進め方を学ぶことができます。多様な価値観の人や組織と仕事をする経験が得られます。

デメリット:自己管理が難しい

複数のワークスタイルで、複数の仕事を掛け持ちするため、時間管理能力が必須になります。一つの仕事の残業を想定せずに、もう一つの仕事の納期に間に合わないともなれば、信頼に関わります。全て自分がしっかりと稼働できる分仕事をうけているか、それに見合った報酬は得ているか、徹底した管理、判断が大切になります。

パラレルワーカーを採用するメリット・デメリット

では、雇用主側には、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

メリット①従業員のスキルアップ

企業がパラレルワークを容認することで、従業員のスキルアップが期待できます。複数の仕事をすることで、幅広いスキルが社内外で磨かれます。また、異業種の知見やノウハウも得ることができます。

メリット②採用力の向上

パラレルワーク・複業容認とすることで、優秀層へのアプローチが期待できます。パラレルワークを容認することで、離職率が上がるのではという懸念もありますが、実際は、離職率の減少にもつながるという例も存在しています。

デメリット①他社へのノウハウ・スキルの流出

パラレルワークを容認することで、他社へノウハウやスキルが流出するリスクがあります。 競合他社ではパラレルワークを禁止するなど、あらかじめ決まりをもうけておきましょう。

デメリット②情報漏えい

パラレルワークに限った話ではありませんが、不特定多数の社外の人間と会う機会が増えるため、情報漏えいのリスクは高まります。常日頃より、セキュリティ教育などで情報漏えいの恐ろしさを啓蒙することが大切です。

デメリット③パフォーマンス低下

パラレルワークを容認しない企業の多くが反対理由として挙げるのがパフォーマンス低下です。実際に、パラレルワークによって、シナジーが生まれ、パフォーマンスが上がるケースも多いですが、かえってパフォーマンスが低下したという例も。パラレルワークには時間管理能力が必須で、無茶なスケジュール、無謀な仕事の受注を繰り返せば社内でのパフォーマンスは低下してしまいます。

選択肢が広がる「パラレルワーカー」という働き方

パラレルワーカーでは、多様な働き方を実現できます。ここでは、いくつかパラレルワーカーを実践されている方をご紹介します。

会社員×NPO法人×アンバサダー

高島さんは、IT企業に勤めながら、業務終了後の時間や週末の時間を活用し、認定NPO法人PIECES(ピーシーズ)でサポート業務、株式会社cotreeではアンバサダーとしてcotreeのイベントやサービスを広める手伝いをされています。

https://times.mazrica.com/interview/parallel-career-worker-takashima-san/

会社員×地域団体

赤間さんは、IT企業で会社員をする傍ら、週末の時間で「コマエカラー」という地域団体で、地域のイベントやフェスを主催する活動をしています。具体的な業務内容としては、協賛金の獲得、当日ボランティアのシフト表作成や管理など、普段の業務とは異なる活動をされています。

https://times.mazrica.com/interview/parallel-carrier-practice-1/

編集者×地方複業

週4回東京と熱海を行き来する二拠点居住を送っている水野綾子さんは、東京で編集者の仕事をしつつも、家族で実家の熱海に移住。熱海では、複業として「CIRCULATION LIFE」というサービスを立ち上げ、地元企業と首都圏の人材をつなぐ複業マッチングの立ち上げ・運営を行っています。

https://www.businessinsider.jp/post-177669

パラレルワーカーを支援するおすすめサービス

最後に、パラレルワーカーを支援するおすすめサービスをご紹介します。

シューマツワーカー

週10時間からスタートアップに参画できる複業マッチングプラットフォームです。登録すると、専属の複業コンシェルジュが、スキルや要望にあった案件をご紹介、マッチングが成立すると、業務が開始されます。主に、エンジニア、デザイナー、マーケター関連の案件が多いです。報酬は時給制、オフィス勤務を条件にしている案件も。

kakutoku

企業と営業職のパラレルワーカーをマッチングするプラットフォームサービス。リモートや週3日程度などの稼働条件のものもあります。全て成果報酬制ではなく固定報酬なので、安定した収入も獲得できます。

Going・Going・Local

2019年に立ち上がった、地方企業と地方で働きたいパラレルワーカーをしたい人材をマッチングするサービスです。特徴としては、地場産業や伝統産業に特化した地方企業の案件が豊富なこと。特に職種の条件などはなく、複業、フリーランスどちらも登録可能です。

Teamlancer(チームランサー)

パラレルワーカーまたはフリーランスでプロジェクトを募集、加入したい人をマッチングするプラットフォームサービスです。名前の通り、フリーランスやパラレルワーカーがチームで仕事をすることを支援するサービスで、プロジェクトは、地域活性からアプリ開発、ECサイト立ち上げなど、多岐にわたります。

まとめ:パラレルワーカーでキャリアに彩りを

収入を単に増やすためだけのパラレルワーカーでももちろんよいですが、パラレルワーカーになれば、会社員の仕事とのシナジーを生め、さらにスキルも高めることができ、転職、独立、昇進といったキャリアプランの一つの手段としての非常に有用な働き方です。けっして、遠い働き方ではなく、身近な働き方。ぜひ、まずは自分のできる範囲でスモールスタートから、始めてみてはいかがでしょうか。