多くの会社でリモートワークが推進されたことによって、ブレジャー(ブリージャー)というワークスタイルに注目が集まっています。「仕事(Business)」と「余暇(leisure)」を組み合わせた造語で、コロナ禍によって下火になった観光業の需要創出につながるとして、期待が高まっています。

 

ブレジャー(ブリージャー)とは?

ブレジャー(Bleisure)とは、「仕事(Business)」と「余暇(leisure)」を組み合わせた造語です。「ブリージャー」と読むことも。観光庁では「出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこと」と定義しています。日本ではあまり浸透していないワークスタイルですが、欧米では少しずつ利用が広がっています。

 

「Global Business Traveler Association(GBTA)」の調査によると、2017年にアメリカ企業に勤める約4割が、出張先で滞在期間を延長して余暇を楽しんだという結果が出ています。

 

参照:4 Ways to Optimize Your Employees’ Bleisure Travel Experience

ブレジャー(ブリージャー)とワーケーションの違い

ブレジャーはワーケーションと非常に似ていますが、両者は似て非なるものです。ワーケーションは、「仕事(Work)」と「休暇(Vacation)を組み合わせた造語で、レジャースポットやリゾート地などで働く過ごし方であるのに対し、ブレジャーは仕事(出張)を前提に余暇を楽しみます。

 

ワーケーションは、レジャースポットやリゾート地などで休暇を楽しみながら働けるため、一石二鳥ですが、オンオフの区別は難しく、人によってはかえって疲れてしまうことも。

 

関連記事:旅行しながら働く「ワーケーション」という働き方。バカンスと仕事の両立はできる?

 

一方、ブレジャーは、あくまでも出張の機会を活用して余暇を楽しむ過ごし方であるため、仕事とプライベートにメリハリをつけることができます。

ブレジャー(ブリージャー)が日本で注目される理由

海外では、すでに浸透しているブリジャーですが、近年、日本でも注目が集まってきています。そこには、一体どのような理由があるのでしょうか?

有給休暇の取得促進

厚生労働省の令和3年の調査によると、令和2年度における平均の有給休暇付与日数は1人あたり17.9日でした。そのうち実際に取得された有給休暇は10.1日で、有給取得率は56.6%となりました。この数値は昭和59年以降最高値となっていますが、いまだ有給休暇の完全消化には至っていません。

 

参照:令和3年就労条件総合調査の概況

 

ブレジャーを導入すれば、例えば「せっかく東京から大阪に出張に行くし、1日有給休暇を取得して観光も楽しもうかな」と有給休暇の取得促進にもつながります。

観光需要の平準化

政府は、コロナウイルス感染症対策の一環として、特定の場所と時期に集中させない「分散型旅行」を推奨しています。

 

本来はお盆休みや年末年始、ゴールデンウィークなど長期休暇に集中しがちな旅行を、ブレジャーの導入で分散できる可能性があります。カレンダーどおりのまとまった連休ではなく、平日に旅行をしやすくすることで、観光需要の平準化が期待できます。

関係人口の創出

関係人口とは、移住者でも旅行者でもない形で、特定の地域と関わりをもつ人のことを指します。ブレジャーでは、一般の観光よりも滞在日数が長くなる傾向が強く、地域との接点もより濃密になります。その結果、地域の担い手としての活躍や、長期的な移住促進につなげることができます。

関連記事:移住でも観光でもない、ゆるく関わる「関係人口」|地方創生のカギとなる概念

ブレジャー(ブリージャー)のメリット

ブレジャーを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。利用側におけるメリットを3つご紹介します。

生産性が向上する

出張でいつもと異なる場所に足を運ぶことで、心身ともにリフレッシュでき、気分の切り替えがしやすくなります。その結果、仕事の質が高まったり、生産性が向上したりします。

長期休暇を取得しやすくなる

ブレジャーは、「出張のついで」であるため、有給休暇の取得のハードルがグッと下がります。土日や三連休とブレジャーをうまくつなげれば、長期休暇も取りやすくなります。

新たな出会いやアイデアの創出

いつもの職場とは違う場所に身を置くことで、未知の文化を知れたり、新しい人との出会いが生まれたり、その会話によって学びや気づきを獲得できたり……と、感性が刺激される瞬間がたくさんあります。

計画された出会いではなく、偶然の出会い(セレンディピティ)だからこそ、今まで考え付かなかった斬新なアイデアが閃くきっかけとなるかもしれません。

関連記事:セレンディピティの意味とは|偶然を呼び寄せるビジネススキル

ブレジャー(ブリージャー)のデメリット

このようにメリットが多いブレジャーですが、デメリットもいくつか存在します。

通信環境における懸念

ワーケーションやリモートワークにも共通する点ですが、不安定な作業環境で業務効率に支障が出るリスクもあります。出張先にネットワーク環境の整備されているサテライトオフィスがあれば安心ですが、必ずしもそうとは限りません。Wi-Fi環境があっても、通信量を大きく消費するビデオ会議ツールなどの利用では、接続がやや不安定になる恐れがあります。

労災認定が難しくなる

出張先で事故や災害などの被害に遭った場合は労災がおります。ただし、ブレジャーの場合は出張の前後で休暇を取得するため、労災の認定判断が難しくなります。あらかじめ、会社と取り決めしておく必要があるでしょう。

セキュリティ上の懸念

出張先で、社用パソコンや携帯を紛失してしまった、滞在先で知り合った人に機密情報を漏らしてしまったなど、日頃と違う場所にいるからこそ、いつも以上にケアレスミスが起こる可能性が高くなります。

 

カフェなどで作業をする際には、離席時に必ず画面ロックをかける、社用パソコンや携帯はむやみに持ち歩かない、無料Wi-Fiスポットは使用しないなど、出張先でのセキュリティ対策を徹底しましょう。

終わりに

「仕事である出張に休みをつけるなんて……」とブレジャーの導入に罪悪感を感じてしまう方もいるかもしれません。しかし、うまく活用すれば、仕事の生産性も上がり、かつ新しい経験もでき、仕事上のメリットもたくさんあります。ブレジャーを導入して、新しい仕事の楽しみ方を体験してみてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等