仕事と生活を柔軟に統合するという「ワークライフインテグレーション」。「ワーク・ライフ・バランス」に次ぐ新しい考え方として導入する企業が増えています。今回は、ワークライフインテグレーションについて、メリットや導入事例についてもあわせてご紹介します。



ワークライフインテグレーションとは?


ワークライフインテグレーションとは、慶應義塾大学の高橋教授や経済同友会によって提唱された言葉で、「仕事もプライベートも人生の一部であると定義し、両輪を回すことで人生が豊かになるという考え方」です。
 

今までは、仕事とプライベートがトレードオフの関係でした。しかし、ワークライフインテグレーションでは、仕事が充実すればプライベートも充実するというように好循環をもたらします。インテグレート(統合)させることで、多様で柔軟性のある生き方を設計できます。

ワーク・ライフ・バランスとの違い

ワークライフインテグレーションはワーク・ライフ・バランスを発展させたもので、根本の「人生を豊かにする」という目的は変わりません。ワーク・ライフ・バランスは仕事とプライベートを切り分けて考えるのに対し、ワークライフインテグレーションは、境界線をなくし、もっと俯瞰的な視点から生き方を設計します。

「ワークライフインテグレーション」という言葉をご存知ですか?「仕事もプライベートも人生の一部であると定義し、両輪を回すことで人生が豊かになるという考え方」です。
 

ワークライフバランスは、仕事とプライベートを切り分けて考えるため、今の多様化社会で取り入れるのは難しいとされ、「ワークライフインテグレーション」が注目されています。


ワークライフインテグレーションのメリット


ワークライフインテグレーションのメリットは大きく分けて3つあります。
 

・多様な働き方が実現できる

ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートに線を引く必要がないため、自宅に仕事を持ち込む、いわゆるリモートワークや在宅勤務といった柔軟な働き方ができます。育児中や介護中の方、療養中の方など、働きたいけど働けない人も、自分の生活レベルにあった働き方を選択できます。
 

・仕事と家庭を両立できる

仕事が忙しくて「出会いのチャンスを拡げられない」「家族といる時間がない」など、プライベートを犠牲にすることがなくなります。子育てに集中する際は時短やリモートワークを活用し、時間に余裕のある時は仕事に専念するというように、一日の中でメリハリをつけることができます。
 

・生産性が向上する

仕事とプライベートに境界線がないため、休みたい時に休めます。残業して無理やり終わらせることがなくなり、企業全体の生産性が向上します。プライベートの時間も柔軟に確保できるので、ストレスフルな状態から解放されます。
 

ワークライフインテグレーションのデメリット


ワークライフインテグレーションにはメリットがある反面、デメリットもあります。
 

・自己管理能力が重要になる

仕事とプライベートの境目がないため、従業員は今まで以上に自己管理能力を問われます。自己管理能力が低い人は、慢性的に長時間労働に陥り、プライベートの時間を確保できなくなる恐れがあります。
 

・社員の評価制度を設計するのが難しい

ワークライフインテグレーションは、従業員に多様な働き方の選択肢を提示できますが、企業側は平等に社員を評価することが難しくなります。綿密な評価制度の設計が重要になります。
 

ワークライフインテグレーション|毎日の景色を変える働き方

現在の働き方でよくあるパターン

高度経済成長期は、「終身雇用」「年功序列」といった働き方が適していました。それは、働き続ければ年収が上がり続けると確約されていたからです。多くの社員は安定を求め、日夜働き続けました。
 

しかし、IT技術の登場によってグローバル化が進み、今までの「20世紀型働き方」では立ち行かなくなりました。1990年代初頭にバブルが崩壊し、日本は「失われた15年」といわれる暗黒期に突入しました。さまざまな施策を講じるも、日本経済の悪い流れを断ち切ることは未だできていません。
 

スイスのビジネススクールIMDが発表した「世界競争力ランキング」を見ると、日本は1990年にランキング首位だったのが、1995年に4位、2000年に21位、そして2018年は30位まで順位が下落しています。
 

https://www.imd.org/news/updates/singapore-topples-united-states-as-worlds-most-competitive-economy/


世の中が「多様化社会」になる中で、日本の働き方はほとんど変化していません。しかし、近年になって「長時間労働による過労死」「粉飾決算問題」という形で綻びが出始めています。まさに働き方を変革するタイミングに差し掛かっているように感じます。
 

ワークライフインテグレーションが必要な背景

2000年頃から「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が使われるようになりました。ワーク・ライフ・バランスの目的は、「仕事と生活の調和」であり、より従業員が健康に生活を送れるように促す取り組みです。
ワーク・ライフ・バランスは、仕事とプライベートを区別する働き方ですが、近年は、仕事とプライベートを統合して考える「ワークライフインテグレーション」という働き方に注目が集まっています。
 

この考え方が主流になった背景には、「労働人口の不足」が挙げられます。シニア世代、外国人労働者、ママ社員など、多様な人材を有効活用することが必要になっています。
 

人材が多様化すれば、働き方や生活のニーズも多様化します。今までのように出社を義務付ける画一的な労働条件では上手く機能しません。リモートワーク、完全フレックス制度、ワーケーションなど、さまざまな働き方の選択肢を用意することが重要です。
 


ワークライフインテグレーションの例


実際に、ワークライフインテグレーションを導入している企業事例をいくつか紹介します。

・日本アイ・ビー・エム株式会社

職種ごとに適した働き方を設計しています。SE・コンサルタント・研究開発職には「裁量労働制」を、営業職には「みなし労働時間制度」を、管理部門は「フレックスタイム制」を採用しています。また、時間と場所の制約をなくす「eワーク制度」「ホームオフィス制度」も取り入れています。

・ソウ・エクスペリエンス株式会社

ソウ・エクスペリエンスでは、「子連れ出勤制度」があります。託児所に預けるのではなく、同じ空間で子供と一緒にいながら働くことができます。ちなみに、子連れ出勤できるのは3歳まで。
 

・アディダス

こちらは日本の事例ではありませんが、事例としてご紹介します。アディダスのドイツ本社では、2010年ごろにワークライフインテグレーションを導入しています。1ヶ月の就労時間の20%はどこで仕事しても良い制度や、週40時間以内であれば、勤務時間を自由に振り分けられる制度など、多様な働き方が実践されています。

・株式会社マツリカ

マツリカでは各々がモチベーション高く、生産的に働ける状態を創るため、コアタイムなしのフレックス制を導入しています。また、各々が最高のパフォーマンスを発揮できる環境で最高の成果を出すため、リモートワークが可能です。これらを利用してワークライフインテグレーションを実現している方もいます。
マツリカに興味を持った方はこちらを参考に。
 

導入の注意点


ワークライフインテグレーションは、「生活が全て仕事に直結する」とも捉えられて誤解されることもあります。常に従業員に対し目的を理解してもらうことが重要です。
 

・制度の目的を理解してもらう

ワーク・ライフ・バランスと同じく、「従業員の人生を豊かにする」ことが本目的です。「仕事中心の生活をしてほしい」と誤解されないよう、継続的に社内向けに説明会を行うなどして啓蒙していきましょう。
 

・従業員を信頼し「管理しない」ことが重要

管理システムを設計することは重要ですが、社員の行動を過度に制約する仕組みは逆効果で、ワークライフインテグレーションが上手く機能せずに形骸化します。社外でも社内と同じ状態で仕事できる環境を整備することが重要です。
 


終わりに

日本は少子高齢化を迎えています。今後、ますます労働人口は減り、外国人労働者やシニア世代、現役ママ社員など、多様な人材を活用することが必須になります。従業員の人生を充実させることは企業の成長にとっては縁遠いことに思えますが、長期的に見れば実は重要なことです。

企業がしっかりとした制度設計をすることが重要なことは大前提として、従業員一人ひとりが意識を変えることもまた重要です。自分だけで仕事を抱え込まずに他の人と共有・連携して仕事をする。仕事・プライベートを充実させるために、皆で一丸となって考えることがワークライフインテグレーションの第一歩だと思います。