変化の多い時代、自分一人のキャリアを設計するのも難しくなりました。誰も正しい答えを持っていない中で、何を基準に我々は自分のキャリアを考えれば良いのでしょうか?「ライフキャリアレインボー」という言葉はご存知ですか?仕事にとらわれず、趣味、家庭、地域活動など多角的な視点からキャリアを総合的に考える理論で、まさに現代の人にうってつけの理論です。本日は、このライフキャリアレインボーの意義、ライフキャリアレインボーによってどのように自分のキャリアが変わるか、書いていきたいと思います。

そもそもライフキャリアとは?

ライフキャリアとは、仕事に囚われず、趣味・遊びや家庭、地域活動など全ての活動を包括するキャリア形成を指します。 人生は仕事だけでなく趣味、家庭、全てが合わさって形成される集合体と考えます。特に妊娠・出産・育児とライフステージの変化が大きい女性にとっては有用なキャリアフレームです。

ライフキャリアの「4つのL」

サニー・S・ハンセン氏の著書「統合的人生設計(Integrative Life Planning )」によれば、 ライフキャリアには4つのL(役割)があるといわれています。
その4つとは……

・労働(Labor)
・学習(Learning)
・余暇(Leisure)
・愛(Love)

労働とは、その名の通り「仕事」を指します。学習とは「教育」、余暇は「遊び・趣味「社会活動」を指し、そして愛は「家庭や子育て」「介護」を指しています。この4つのどれが欠けても成り立たず、自分にとって心地の良いバランスに保つことが重要とされています。

 

ライフキャリアレインボーについて

ドナルド・E・スーパー氏が提唱した考え方で、仕事に関わらず人生の様々な局面で訪れる役割を組み合わせてキャリアが形成される、多様なキャリアが積み重なっていく様子を虹にたとえ、「ライフキャリアレインボー」と名前がつけられています。1950年代に誕生している理論ですが、現代にも通ずる普遍的な定義であり、今でも多くの国で模範的な概念として採用されています。

ライフキャリアレインボー|mazrica times

参照:文部科学省「高校生のライフプランニング」

人生における7つの役割とは?

ドナルド・E・スーパー氏によれば、人生には大きく8つの役割があるとしています。

 

・子供

・学習者

・親

・余暇人

・市民

・職業人

・家庭人

・その他の役割(年金生活者、余生を過ごす)

 

ほとんどの人は、これら8つの役割を経て人生を過ごします。これらの役割の重なりや相互関係を形にしたのが「ライフキャリアの虹」、いわゆるライフキャリアレインボーです。歳を重ねるごとに役割の重なりは増えていきます。職業人としてのキャリアが完ぺきでも、家庭人、市民としてのキャリアにほころびがあれば、トータルとしてのキャリアは崩れ、トラブルや矛盾をきたします。

キャリアの形成というのは、自分だけで成り立つものではありません。そこには地域コミュニティや組織、家族といった社会環境のサポートが必要です。ライフキャリアレインボーでは、自分個人だけでなく周りを取り巻く家庭、地域コミュニティ、さらに社会を含めた視点から自分のキャリアを考えることを重視します。

 

5つのライフステージ(ライフスパン)

ライフキャリアレインボーには、上で書いた役割の他に、5つの時間軸(ライフステージ)が存在します。

・成長期(0〜15歳)
・探索期(15〜25歳)
・確立期(25〜45歳)
・維持期(45〜65歳)
・解放期/下降期(65歳〜)

この一連のライフサイクルを「マキシサイクル」と呼びます。また、マキシサイクルの中には、マキシサイクルのように成長期〜解放期を繰り返す「ミニサイクル」がいくつも存在しているとされています。

アーチモデルとは?

アーチモデルはドナルド・E・スーパー氏が提唱したライフキャリアレインボーに次ぐ理論です。より現実に即した汎用性の高いものになっています。左側の柱には、内的キャリア(自分のやりたいこと、興味、価値観)、右側の柱には外的キャリア(生活環境、所属している組織、地域社会)が描かれます。上にはアーチがあり、そこにはキャリアの虹があり、2つの柱をつないでいます。下の基礎にはその人の価値観や考え方を下支えする出身国や環境が描かれています。

ライフキャリアレインボー|mazrica times

引用:【キャリコン】スーパーのライフキャリアレインボー【5つのライフステージ

ライフキャリアレインボーが注目される理由

ライフキャリアレインボーが注目されるようになったのには、世の中の変化が深く影響しています。以下で理由を一つずつ見ていきましょう。

人生100年時代の到来

医療やITが発達し、長寿の時代(人生100年時代)に突入しました。厚生労働省が2018年に発表した「平成30年簡易生命表の概況」によると、日本人の男性の平均寿命は81.25歳、女性が87.32歳と過去最高値を記録しています。要因としては、三大疾病の治療技術の発達や健康志向の高まりが主な要因とされているようです。世界で見ると男性が3位、女性が2位となっています。


参照:平成30年簡易生命表の概況


このように、平均寿命が伸びる中で、長く楽しく人生を過ごすためには、先を見据えた人生設計が重要になります。長寿化することで、これまでにはなかった問題が多発します。代表的なのが「多重介護問題」です。多重介護とは、介護する人が要介護者を複数見ている状態のことを指します。多重介護になれば、フルタイムで働くというビジョンは崩れていきます。仕事のキャリアだけでなく、フレキシブルに家庭、職業、趣味などの将来の変化を見据え、多角的にキャリアを構築していくことが大切です。

 

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グローバリズムによる人材の多様化

厚生労働省が平成30年10月末に行った「外国人雇用状況の届出状況まとめ(現在)」によれば、外国人労働者の数はおよそ146万、過去最高の数値となっています。今後は、入管法改正により、さらに外国人労働者が増えると見込まれています。そうなれば、今後の自分の働き方や仕事のあり方も変わってくるかもしれません。

 

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予知できない世の中の変化

働き方の多様化、AIの普及、SDGsの推進など、もはや仕事にとどまらず、私達の生活全体を揺るがす変化が目まぐるしく起こっています。仕事という観点から少し引いて、人生をどう生きるか、もう少し大きな視点で考えることが必要になりそうです。ワーク・ライフ・インテグレーションという言葉にも表されるように、今後はさらに仕事とプライベートの境目があいまいになるでしょう。

ライフキャリアレインボーを描くことで広がる自分のキャリア

ライフキャリアレインボーを描くことで、仕事を中心に考えていた時代だったら、本来、肩書きにもならなかったものが見えてくるものもあるでしょう。 例えば、「外資系コンサル/2児のパパ/サーフィンを楽しむ40代」のように、仕事以外の要素が見えることで、その人の生き方・あり方の輪郭が見えてきます。 1人の人間に与えられる時間は限られていて、かつ平等です。人にとって重要な役割である家庭人、配偶者、余暇人といった役割をないがしろにせず、仕事と同様に考えることで、よりカラフルな充実した人生を描くことができるでしょう。

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また、人は年齢で役割が変化することも忘れてはいけません。自らが親になり、また親が要介護者になることも、そして自分の子供が親になることもあります。自分の役割の変化はもちろん、自分の身のまわりの人の役割の変化も理解し、共に支え合って仕事や家庭の割合を調整する努力をすることが、これからの時代を生きる上で大切なのかもしれません。

「何をしているか」よりも「どうありたいか」

より人の流れが複雑化・多様化していき、単純な作業はAI等の機械に自動化される。そんな中で考えるべきなのは、自分が「何をしているか」ではなく「どうありたいか」ということに尽きるのではないでしょうか。 どう生きたいか、また反対にどう生きたくないのか。そんな問いを自分に投げかけていけば、これからの100年時代を生きるヒントが見つかるかもしれません。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等