VUCA(ブーカ)は、2016年にダボス会議(世界経済フォーラム)を筆頭に経済会議で使われて注目されるようになった言葉です。ここ数年ではビジネスシーンでも一般的に使われており、コロナウィルスによってさらにVUCAを重要視する論調が強まりました。働き方や組織のあり方、経営などの方針に関わるフレームワークの一つにもなっています。

世界規模の大変革。新たな時代へと突入

複合的な要因が重なり、世界規模で類を見ない大きな変革が起こっています。

グローバリゼーション

今の経済の流れに大きな影響を与えているのがグローバリゼーションです。国内にとどまらず、インターネットを通して世界中の企業が競合となり、ビジネスシーンの競争はより激化しています。覇権国家であるアメリカの弱体化と、中国の「一帯一路構想」による世界進出により、世界のパワーバランスは不均衡になりました。また、アメリカを筆頭とする自国ファースト主義は世界各地に飛び火し各国で極右派が台頭、世界経済に影響を与えています。 また地球温暖化によるかんばつ、サイクロン、大規模な山火事といった気候変動や昨今騒がせている新型コロナウィルスなど正体不明の疫病が多発しており、今まで以上に予測不能なリスクに世界が混迷しています。

AI・IoTの技術発展

完全自動運転、IoT、5Gなど新しい技術が次々と登場し、その技術に関連するビジネスが誕生しています。また、GAFA(ガーファ)など外資系企業が次々と資本を投下し、IT分野だけでなく自動運転車の「Google Car」音楽ストリーミングサービスの「AmazonMusic」など異業種に参入を始めています。IT技術を駆使し、業界構造そのものを革新しつつあります。

いまだかつてない超高齢化社会、100年時代

先進国、特に日本においては、超高齢化社会が喫緊の課題です。死なないリスクではなく生きてしまうリスク、いわゆる「人生100年時代」を見越した人材マネジメント、経営戦略、プロダクト開発が必要になるでしょう。 高齢化社会では労働力不足が生じます。

外国人労働者に頼るのか、それともシニア世代や現役ママ、非正規雇用者など人的リソースを最大限に活用するのか、今日本がまさに直面している問題です。


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VUCA(ブーカ)とは?

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、読み方は「ブーカ」となります。「VUCAワールド」、「VUCAの時代」と呼ばれることも。VUCAをわかりやすく解説すると、取り巻く社会環境の複雑性が増し、次々と想定外の出来事が起こり、将来予測が困難な状況を意味します

 

もともとは1991年にアメリカ陸軍戦略大学校「US Army War College」で提唱された軍事用語です。ロシアとアメリカが対立していた冷戦が集結し、二分構造からより複雑で混沌とした時代を迎えることを予想した言葉でした。

 

2010年代に、ダボス会議やASTD (米国人材開発機構)などで頻用されるようになり、その後徐々にビジネスシーンでも用いられるようになりました。

 

下記で、それぞれVUCAについて解説します。

1. Volatility(変動性)

変化の量・質が予測不可能な状態を指しています。例えば、IT技術の進展によりコモディティ化してしまう例や、環境問題によって業界規模が急激にシュリンクするなど、これまでとは違う視点や行動が求められます。

 

2. Uncertainty(不確実性)

地球温暖化に伴う気候変動、また新型インフルエンザやコロナウィルスなどの未知の疫病など、突如的に現れた事象を予測することは困難です。また、終身雇用制度の終焉、複業解禁など、個人レベルでも不確実性の高い事象が増えてきています。

 

3. Complexity(複雑性)

IT技術の発展によって、SNSやインターネットにおける個人の発信力が高まりました。個人がさまざまなコミュニティや組織と接点を持ち、ビジネスはさらに複雑性を増しています。GAFAのように、業界を越境する企業も増加し、業界同士の壁は薄れつつあります。

 

4. Ambiguity(曖昧性)

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)が組み合わさることによって、因果関係が不明、かつ前例のない出来事が増え、過去の実績や成功例に基づいた方法が通用しない曖昧性の高い世界へ突入します。

VUCAフレームワークとOODAループ

VUCAフレームワーク

入江仁之の著書、「「すぐ決まる組織」のつくり方 ー OODAマネジメント」では、VUCAを体系化した「VUCAフレームワーク」が紹介されています。 VUCAフレームワークでは、既知、未知、予測不能、予測可能の4象限で体系化されています。このように、象限別に体系化することで、直感的に課題を把握でき、経営戦略やビジネスの方向性を決めやすくなります。

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VUCAフレームワーク :臨機応変の適応法 の図をもとに作成

 

OODAループとは?

VUCAの時代を生き抜くためには、OODAループという思考法が必要不可欠です。OODAループとは、アメリカのジョン・ボイド氏が提唱した理論で、Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとった言葉です。

先の予測ができない状況でも、成果を出す意思決定方法としてビジネスシーンで活用されています。日本では、主にPDCAサイクルが用いられますが、PDCAサイクルとOODAループの決定的な違いは前提条件です。

PDCAサイクルは、あくまで想定外の出来事が起きず、状況が変わらないことを前提としたフレームワークであり、現状を打破し革新する、先読みできない事態を進む際には有効な手法ではありません。その点、OODAループは人間的要素を重視する、汎用性の高いフレームワークで、戦略や手順よりは機動性や柔軟性のある思考法です。

 

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VUCAで変わる組織・人事のあり方・働き方

VUCAの時代では、具体的に組織、従業員、人事はどのように変化しまたどのような変化を求められるのでしょうか?

従業員の変化

変化をチャンスと考える

VUCAの時代では、過去の成功事例、実績に基づいた戦略は通用しません。常に変化し自らを成長させていく力が必要になります。変わることを恐れずに、面倒くさがらずに、チャンスと捉える姿勢が大切です。

自身も含めた多様な働き方の実践

ダイバーシティー&インクルージョンが推進されているように、今後、外国人労働者、シニア世代、現役ママの活用など、多様なバックグラウンドを持った人とコミュニケーションをとる機会も増えるでしょう。自分自身も含め、テレワーク、時短勤務、子連れ出勤など、常に新しい働き方を実践し、相互理解を深めることが大切です。

 

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業界を越境した柔軟な思考

常に環境が激変する昨今では、従業員一人ひとりが異業種の人と交流し、思考の柔軟性を高めることが重要です。他の業界で得た知識をまた自分の業務に活用し循環を作ることが求められるでしょう。

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経営者の変化

ビジネスモデルに依存しない

画期的なビジネスモデルに頼ることは、短期的には市場においてオンリーワンの地位を築けるかもしれません。しかし、いずれITやAIなどによってコモディティ化されてしまいます。ビジネスモデルに安易に依存するのは危険です。先の読めない中では、企業の進むべきビジョンを明確にすることが大切です。今何が求められているかではなく、「どんな世界を作りたいか」を追求することが重要です。

 

トライアンドエラーを重視する

VUCAの時代では、計画にかける時間はありません。せっかく良い事業計画ができても、気がついたら競合が先に開発を済ませていた、市場ニーズがなくなっていたということにもなりかねません。必要以上にシナリオや計画を策定せず、プロトタイプを市場に出すことで、ビジネス環境に合わせて、正しく軌道修正ができます。

 

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アジャイル型組織へ

組織の意思決定を遅くしてしまう原因の一つが、ウォーターフォール型の組織体制です。上司の判断待ちにならないよう、従業員の意思決定を尊重するアジャイル型組織を形成しましょう。

アジャイルは、英語で「俊敏」「機動性のある」という意味を持ち、つまりアジャイル型組織とは、迅速な意識決定、そして素早い改善サイクルを回せるフラットな組織を指します。アジャイル型組織では、現場に権限を与えることが重要で失敗や軌道修正を容認します。失敗を責めるのではなく、カルチャーとして育てていくことができるかが定着のカギになります。

 

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人事の変化

経営と現場の橋渡しに

経営者と現場の間に立って人事業務を執り行うCHO/CHROという役割が、ベンチャー企業を筆頭に増えているように、VUCAの時代では、フレキシブルに動ける”緩衝材”のような人事が求められます。人事業務はもちろん、経営の基礎知識、人事分野から経営課題を発見し、プロフェッショナルな提案が期待されます。

 

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強いリーダーシップ

従来の人事業務は、バックオフィス的な人材マネジメントが主でした。しかし変化の激しい環境下では、企業のビジョンを達成するために現場を変革する強さが求められます。経営のビジョンをブレイクダウンし、それを明確な方向性でもって遂行するグリット力も必要になります。

 

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予測できないからこそ、確固たるビジョンで”前に進む強さ”を

VUCAの時代で全く先が予測できないのはどの企業も同じです。予測できないからと、ビジョンやシナリオを放棄するのではなく、明確なビジョンを掲げそれを実現する強さを持つことがこれからは重要になるのではないでしょうか?

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等