グリットとは、やり抜く力、粘り力のことで、ペンシルバニア大学心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏(以下、ダックワース氏)が定義したスキルです。現在では、ビジネスや学習の分野での活用が期待され、注目が集まっています。本記事では、グリットの定義と伸ばすコツについてお伝えします。

人生を成功へ導くスキル、グリット(やり抜く力)とは?

グリットは、ペンシルバニア大学心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏が定義したスキルで、困難に直面しても、自分の情熱やエネルギーを持って目的を遂しとげる力のことを指します。

また、脳科学者である茂木健一郎氏は、著書「続ける脳 最新科学でわかった!必ず結果を出す方法」において、グリットを「困難があっても、続ける力」「情熱を持って取りくも粘り強さ」と表現しています。

グリットは、「度胸(Guts)」「回復力(Resilience)」「主体性(Initiative)」「執念(Tenacity)」のイニシャルと、気概や闘志をあらわす「GRIT」をかけた言葉で、これら4つの能力を鍛えることで、粘り強く困難に立ち向かい、目的を遂行できる(GRIT)することができます。成功者は共通して、このグリットを持つ傾向にあると言われています。

例えば、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は、「仕事での成功するためのカギは信念とグリットを持つこと」と語り、また言葉は違いますが、スタンフォード大学でスティーブ・ジョブズ氏が語った演説の「“Stay hungry. Stay foolish.”」にも、やり遂げることを大切にするグリットの意志が感じられます。

レジリエンスとグリットの違い

グリットは「やり抜く力」を指すのに対し、レジリエンスは直訳すると「回復力」「弾力」となり、困難や逆境が訪れても挫折することなく、立ち直ることもできる「しなやかな強さ 」のことを言います。グリットの意志を貫く強さと、レジリエンスの柔軟性は、それぞれ両極に位置しているように見えますが、前述したように良いグリットでは「ただ意地っ張りに貫く」のではなく、謙虚に周りのアドバイスに耳を傾け、自制心を保ちながらグリットすることなので、グリットを達成する過程にレジリエンスが必要であることが分かります。

グリットに大切な8つの要素

グリットは、8つの要素が全て揃ってはじめて良いグリットとなります。どれかが欠けても良いグリットとは言えません。

・情熱

・幸福感

・目標設定

・自制心

・リスク

・テイキング

・謙虚さ

・粘り強さ

・忍耐

良いグリットと悪いグリット

グリットにも、良いグリットと悪いグリットが存在します。悪いグリットは、情熱、幸福感、目標設定、自制心、リスク・テイキング、謙虚さ、粘り強さ、忍耐の8つのどれか一つの要素が欠けており、そのために嫉妬心や慢心などを持った、いわゆる「偽りの成功」へと突き進んでしまいます。

キャロライン・アダムス・ミラー著、「実践版 GRIT(グリット) やり抜く力を手に入れる」によれば、悪いグリットには、「虚栄グリット」「強情グリット、」「セルフィーグリット」の3種類に分類できるとされています。

虚栄グリット

周囲からの称賛や名誉を得るため、自分を偽り、他人を欺くことにグリットするタイプ。謙虚さ、自世親、粘り強さが欠けており、悪化すると犯罪行為に手を染めることもあります。

強情グリット

目的を達成したいがあまり、日々の努力を怠り、お金や自分の強靭な精神力を武器に、強情なまでに目的をやり遂げようとするグリット。目的の裏にある名声や称賛を手に入れることが目的になってしまっていて、正しい選択ができなくなります。

セルフィーグリット

困難な目的を達成するまでの道のりをより過酷、苛烈に演出し、執拗に目的の遂行にこだわること。ナルシシズムという言葉に置き換えると非常に分かりやすいです。虚栄グリットと異なるのは、実際に目的をやり遂げてしまう点です。

「やり抜く」強い意志を持っていた情熱的な起業家が、いつの間にか周囲のアドバイスに耳を傾けずに「暴走する」といったことが時々起こるように、謙虚さを失い、周りの意見を蔑ろにすることで、自制心はきかなくなり、失敗への罠にはまるのです。

情熱を注ぎ、気合いで乗り切るというのは、決して良いグリットではありません。あくまで良いグリットは、自分の行動によって、周りの人から賞賛され、そして自分以外の人のモチベーションも高める、好影響を与えることができるのです。

グリットが注目されている理由

日本では、グリットに関する研究が進んでいませんが、海外ではビジネス、学習などあらゆる分野において必要とされるスキルの一つとされています。グリットは、先天的な才能ではなく、後天的に身につけられるスキル、つまり、特別な才能や知性を兼ね備えていなくても、グリットを持っていれば、成功への確率をアップさせることができます。

「実践版 GRIT(グリット) やり抜く力を手に入れる」によれば、グリットがこのように求められている背景には、1980〜2000年代前半に生まれた、いわゆる「ミレニアル世代」に対する自尊心教育(日本では、いわゆるゆとり教育と言われているもの)の弊害があるとしています。

ミレニアル世代は、完璧主義的で、自分自身に対しての評価や批判に弱く、難題や逆境に立ち向かわず、すぐに近道を探そうとする傾向にあるとしています。 米国の調査機関の概算によれば、米国人労働人口のうち、ミレニアル世代の割合は「3人に1人」を上回るとされています。今後、ミレニアル世代は社会全体に及ぼす影響は大きいです。その上でこのグリットの考え方が浸透したのだと考えられます。

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グリットはどのように測定する?

グリットの第一人者、ダックワース氏が米国陸軍士官学校(ウェストポイント)向けに開発した「グリットスケール」によって、計測することができます。以下の10個の質問を5段階評価で回答した数値を合算し、10で割った数字が「グリットスコア」となります。グリットスコアは5段階評価で表され、5が最高値で1が最低値となります。また、低い数値が出たとしても、これはあくまで現在の状態を表したものであり、グリットを高める行動を重ねれば、数値は改善されます。

グリットは後天的な努力で鍛えられる?伸ばすコツとは

では、どのようにすれば自身のグリットを伸ばすことができるのでしょうか?ダックワース氏は、以下の4つの要素がグリットを伸ばすのに重要であると述べています。

目的意識

ここでいう目的意識とは、利己的なものではなく、誰かの売上をアップさせる、誰かの命を救うといった他の人の価値となる、役に立つ目的を指します。また目的意識と、決して自分が面白いと感じる個人的欲求とは別物です。

ビジネスで例えるならば、クライアントのニーズに沿って価値の提供をすることはもちろん重要ですが、それに携わる従業員がそのことに面白さ・興味を持たなければ、ただ苦痛なだけで成長もしませんし、やりがいも感じないでしょう。興味と目的が揃ってはじめて、良いグリットが高まります。

興味の範囲を拡張する

いくら、尊い目的意識を掲げていても、好きなことでないとやり抜くのは至難の業です。かの有名なスティーブ・ジョブズ氏も、「私は、本当に好きな物事しか続けられないと確信している。何が好きなのかを探しなさい。あなたの仕事にも、恋人にも。」という発言が、ハリーポッターの作者、J・K・ローリング氏は「私の本を読んで楽しんでくれている誰よりも、私はこの本を書くことを楽しんでいる」と語るように、多くの成功者は本当に好きなことを仕事にしています。

継続的な練習

興味の対象を持ち、実行の目的があっても、継続力がなければ、その目的へ到達することもできませんし、やがて興味も薄れるでしょう。継続で大切なことは、「継続は途切れることもある」という心持ちと、「やる気に頼らない仕組み化」です。 「やる気に頼らない仕組み化」とは、例えばダイエットなら日々の体重や食べたカロリーを記録することで、数値として改善すべき点が可視化され、次のアクションを決めやすくなります。このように、次のアクションを自動的に促す仕組みを設計することで、継続しやすくなります。

希望を持つ

これは、ポジティブシンキングとも言い換えられます。希望を持てるからこそ、困難に直面しても、挫折せずにまた立ち直ることができます。希望を持つには、「希望を持てないときもある」というマインドで日々過ごすこと。

人には、感情のバイオリズムがあり、毎日100%調子が良いわけではありません。希望を持てないときに、自分に対してネガティブな問いかけをすれば、さらにネガティブシンキングになり、負のスパイラルに陥ります。ただ、ありのままの状況を受け入れることが、「希望を持つ」につながります。

まとめ

グリットとは、単なる継続性とは異なり、さまざまな要素が絡み合った総合的なスキルです。一朝一夕で身につくものではありませんが、仕事で成果を出す上では大切なスキルの一つです。ぜひ本日の記事を参考にしてみてください。