この記事では、ティール組織の意味や、変遷の過程と歴史を紐解きながら、ティール型組織の重要性やメリット、意義についてわかりやすく解説いたします。また、後半ではティール型組織の導入事例や注意点についてもご紹介。

ティール組織とは?

ティール組織とは、「組織内でマイクロマネジメントをせずに、目的に向かって自発的に進化し続けることができる組織」を意味します。

また、指示系統の概念がなく、メンバーがそれぞれルールや仕組みを理解し、セルフマネジメントを行いつつ、意識決定をしていくという特徴を持っています。以下で更に詳しくご紹介します。

ティール型組織と達成型組織(ヒエラルキー組織)の違い

従来の達成型組織では、売り上げや利益といった目標に向かって組織を構築します。人間関係や人の感情の機微を重要視せず、利益追求が優先されます。目標達成を最優先させるあまり、パワハラ、セクハラ、不正といった人権を無視した行為が行われることもあります。

その点、ティール型組織は、一人一人の特徴を活かし利益にコミットします。指示系統がないため、それぞれが主体的、分権的に動くという特徴を持っています。

報酬の面でも異なります。従来の達成型組織では、個人のコミット量に関係なく、ほぼ平等な報酬を受け取ります。しかし、ティール型組織では、自分で報酬を決めるため、足の引っ張り合いがなく、常にメンバーが協力的であるという面を併せ持ちます。

また、各チームに権限が委譲されているため、人事や財務経理の部署がありません。ここも従来の組織との大きく異なるポイントと言えるでしょう。

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ティール型組織とホラクラシー組織の違い

ホラクラシー組織は、社内において上司や部下、役職などといった階級制度が存在しないフラットな関係の組織構造のことを指します。ティール型組織と非常に類似していますが、ティール型組織が従業員の主体的な判断や考えを尊重し、それに基づき自走する組織であるのに対し、ホラクラシー組織は細かいルールによって、フラットな組織を構築・運用します。より、ティール型組織の方が抽象度の高い組織構造と言えるでしょう。

ティール組織型の歴史と変遷

組織の在り方は、人類の文化と共に変遷してきました。産業革命から近代の日本の社会へと進化を遂げる、更に前からです。

それでは、「ティール型組織」は歴史の中でどのように変遷を遂げ生まれてきたのでしょうか。ティール型組織を知るには、「ティール組織」(原題:Reinventing Organizations)の著者であるフレデリック・ラルー氏が提唱した5つの組織モデルが参考になります。これは、組織の進化段階を5つの「色」で分類したものになります。

衝動型組織|色:レッド(衝動型)

レッド組織は、特定の個人が支配的なマネジメントを行っている組織形態。個人が力を持って組織を率いているため、メンバーは安心して行動します。また、長期的な目標を持たず、短期的な行動水準で動くため、組織全体が一丸となって機動することが少ないです。そのため「オオカミの群れ」と比喩されることも。 特定の個人のみに頼る独裁的な組織形態のため、再現性がないとも言われています。

順応型組織|色:コハク

コハク組織は、徹底された上意下達で社会的な階級に基づくヒエラルキーにより、指示系統が明確に行われます。その厳格さは「軍隊」と比喩されるほど。レッド組織と違う点は、長期的な目線をもって組織が動く点です。目標に向かう際、ハッキリとした役割分担を行うため、特定の個人が強い力を持たない仕組みになっています。

強固な指示系統にはデメリットの要素も。それは環境が不変でなければいけないという前提があるため、状況変化に柔軟に対応することが難しくなります。変化や競争よりも、上意下達の中にあるヒエラルキーの構造が優先されるためです。

達成型組織|色:オレンジ

オレンジ組織は、コハク組織と同様にヒエラルキー構造が特徴の一つとなっています。異なる点は、その構造に「流動性」が付与されている点です。ここでいう流動性とは、分担された役割の中で、一定の評価を受けると出世できるというものになります。長期的な目標に向かい、柔軟に対応できる組織でもあります。メンバー間で、変化や競争が起きやすい構造であるため、コハク組織と比べ、革命的な進化を遂げる可能性を秘めています。

多元型組織|色:グリーン

グリーン組織は、上意下達のヒエラルキー構造を残しつつも、個人の多様性が尊重されている点が特徴的です。これまで機械的であった働き方が一変し、「人間らしく」をモットーに形成された組織です。一人一人の意見が通りやすく、風通しが良い強みもあります。ただし、合意形成に時間がかかったり、社長に意思決定を委ねたりなど、スピード感にやや欠けます。

進化型(ティール)組織|色:青緑

組織変遷の物語も終盤です。ティール型組織は、より人間らしく働くことに焦点を当て、メンバー一人一人が生命体のように共鳴しながら目的を実現します。これまでにあったヒエラルキー構造がなく、上意下達の指示系統も存在しません。それぞれのメンバーが組織の目的に向かって突き進みます。目的に向かう際は、メンバー独自にルールや仕組みを形成します。個人間でのコミュニケーションも信頼によって成立します。組織運営の基盤は「目的実現」にあるため、より本質的な問いが議論されます。

ティール組織のメリット

ティール型組織のメリットは大きく分けて以下の3つです。

主体性が発揮される

ティール組織では、階層や序列といった上下関係が存在しません。一人一人がのびのびと主体性を発揮し、自然とパフォーマンスの質を高めることが出来ます。

ブランド力・組織力の構築

ティール型組織では「組織の存在目的」を常に問い直すため、強いブランド力と組織力を自然な流れの中で強固なものにすることが可能です。

コミュニケーションが良好になる

ヒエラルキー構造によって生まれる権力闘争もなく、組織の目標や重要な判断の決定権も各チームに委譲されているため、メンバー同士が良好かつ円滑なコミュニケーションを図ることができます。

ティール型組織のデメリット・問題点

自己管理能力が問われる

ティール組織では、意思決定権を各人が持つため、各人の自己管理能力次第で、

組織全体のパフォーマンスが決まります。つまり、まだ成熟していない新卒社員が多い会社だと、ティール組織の導入がかえって業務効率の悪化につながる恐れもあります。

リスクマネジメントが難しい

共通の目的を持って動くティール型組織では、指示系統が存在しないため、万が一リスクの高いアクションをメンバーが選んだとしても、それを完全に捕捉することが難しくなります。承認プロセスに代替されるリスク管理ができる仕組みやフローを設計することが求められます。

 

ティール型組織を促進する3つのポイント

ティール型組織を促進するポイントは大きく分けて3つあります。順番にみていきましょう。

存在目的の再確認

ティール型組織では、自社の利益追求ではなく、組織自体を生命体であると捉え、常に組織がどこに向かい、どう変わっていくべきかを重要視しています。まず改めて、存在目的の整理を行いましょう。古くなっていたり、社員の理解度が低い場合は、共有する場を定期的に設けます。

セルフマネジメント

まず、ティール型組織で一番の肝が「セルフマネジメント」です。意思決定の方法が「上長承認」から「主体的に決定する」に変わります。この方法に移行するためには、「なぜ移行する必要があるか」「どういったメリットがあるか」という点について詳しく説明する必要があります。それと同時に、メンバーの知識や技術、仕事の進捗度合いを可視化し、それを常時、共有するための環境作りも必要です。

仕事とプライベートの境界線をなくす

メンバーを尊重し動く組織であるため、心身の健康状態を常に良好に保つ必要があります。そのためには、仕事・プライベート間での境目をなくして、仕事に対するストレスを極限まで下げることが重要です。

例えば、オフィスのインテリアを会社が決めるのではなく、メンバー間で備品を持ち寄って形成する、メンバーの子供やペット同伴出勤を認めるなど、従来とは異なる働き方や発想が不可欠です。組織の一人としてでなく、「一人の人」として、どれだけ素直に耳を傾けられるかが重要になるでしょう。

ティール型組織の導入事例

実際にティール組織を導入した企業をいくつかご紹介します。

株式会社オズビジョン

2018年1月に発売された「ティール組織」で日本企業として唯一取り上げられた企業です。ティール組織として行った制度「Thanks day」や「Good or New」は現在廃止されていますが、常識にとらわれず、社員のさまざまな意見を汲み取り、常に変化を続けています。

サイボウズ株式会社

サイボウズは、ティール組織の運営方法の一つである「セルフマネジメント」に通じた手法を採用。メンバーの仕事の進捗やプロジェクトの中身を共有し、透明性を高めています。また、2018年4月からは「100人100通りの働き方」を掲げ、個々の働き方を尊重しています。

ダイヤモンドメディア株式会社

ダイヤモンドメディアでは、ティール組織の特徴でもある「個人の尊重」を掲げ、組織を運営しています。例えば、「役職・肩書の撤廃」「給与はメンバー全員で考える」などです。透明性も高く、ティール組織の特徴が色濃く出ています。 

ティール型組織を導入する際の注意点

ティール型組織を導入する際、必ず気を付けなければいけないことがあります。

まず、ティール型組織の実現には手順がありません。そのため、段階的に導入させていくことが重要になります。導入にあたり、メンバーや環境に変化が求められるため、段階を踏まずに導入すると、反感を買い組織力が低下する危険性もあります。最初は部分的に試験的な導入から検討してみると良いでしょう。

また、ティール組織において、「セルフマネジメント」「ホールネス」を部分的に導入している企業はあるものの、まだ国内での完成事例がありません。このことからも分かるように、多くの企業はティール組織を導入することによって、社内の世界観や作り上げてきた組織構造が壊れることを恐もあります。

実際にそういったリスクがあることは事実なので、長期的な視点で導入を検討しましょう。

終わりに

時代が平成から令和へと変わったように、組織の形態も新たな形へと移り変わっています。変化を受け入れるとなると、リスクや摩擦という壁を避けては通れません。しかし、変化なくしては、存在することすらも難しい時代です。ティール型組織はまさに次世代の組織の形。これを機に更なる理解を深め、導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いたひと


 

俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等