「ワークライフインテグレーション」という言葉をご存知ですか?

「仕事もプライベートも人生の一部であると定義し、両輪を回すことで人生が豊かになるという考え方」です。

仕事と生活を柔軟に統合する「ワークライフインテグレーション」は、 仕事とプライベートを切り分けて考える「ワーク・ライフ・バランス」 に次ぐ新しい考え方として知られるようになってきました。 今回は、ワークライフインテグレーションとはなにか、メリットやデメリット、導入事例についてもあわせてご紹介します。

 


ワークライフインテグレーションとは?

ワークライフインテグレーションとは、慶應義塾大学の高橋俊介教授や経済同友会によって提唱された言葉で、「仕事もプライベートも人生の一部であると定義し、両輪を回すことで人生が豊かになるという考え方」です。

今まで、仕事とプライベートはトレードオフの関係でした。しかし、ワークライフインテグレーションでは、仕事が充実すればプライベートも充実するというように相互に好循環をもたらします。ワーク(仕事)とライフ(生活)をインテグレート(統合)させることで、多様で柔軟性のある生き方を設計できます。

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ワークライフインテグレーションとワーク・ライフ・バランスの違い

ワークライフインテグレーションはワーク・ライフ・バランスを発展させたもので、根本の「人生を豊かにする」という目的は変わりません。ワーク・ライフ・バランスは仕事とプライベートを切り分けて考えるのに対し、ワークライフインテグレーションは、境界線をなくしもっと俯瞰的な視点から生き方を設計します。

ワークライフインテグレーションが必要な背景

高度経済成長期の日本には「終身雇用」「年功序列」といった働き方が適していました。それは、働き続ければ年収が上がり続けると確約されていたからです。多くの従業員は安定を求め、日夜働き続けました。

 

しかし、IT技術の登場によってグローバル化が進み、「20世紀型の働き方」では立ち行かなくなりました。1990年代初頭にバブルが崩壊し、日本は「失われた15年」といわれる暗黒期に突入します。さまざまな施策を講じるも、日本経済の悪い流れを断ち切ることは未だできていません。

 

スイスのビジネススクールIMDが発表した「世界競争力ランキング」を見ると、日本は1990年にランキング首位だったのが、1995年に4位、2000年に21位、そして2018年は30位まで順位が下落しています。

参照:Singapore topples United States as world’s most competitive economy

 

世の中が「多様化社会」になる中で、日本の働き方はほとんど変化していません。近年は「長時間労働による過労死」「粉飾決算問題」という形で綻びが出始めています。まさに働き方を変革するタイミングに差し掛かっているように感じます。

ワークライフインテグレーションが必要な理由

2000年頃から「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が使われるようになりました。ワーク・ライフ・バランスの目的は「仕事と生活の調和」であり、より従業員が健康に生活を送れるように促す取り組みです。

ワーク・ライフ・バランスは、仕事とプライベートを区別する働き方ですが、近年は、仕事とプライベートを統合して考える「ワークライフインテグレーション」という働き方に注目が集まっています。

 

この考え方が主流になった背景には、「労働人口の不足」が挙げられます。シニア世代、外国人労働者、ママ社員など、多様な人材を有効活用することが必要になっています。

 

2019年には、厚生労働省が働き方改革に関する法案を発表、モデル就業規則を改定し、副業・兼業の規定が追加されたことを皮切りに、働き方や生活のニーズも多様化しつつあります。今までのように出社を義務付ける画一的な労働条件では上手く機能しません。リモートワーク、フルフレックス制度、ハイブリッドワークなど、さまざまな働き方の選択肢を用意することが重要です。

 

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ワークライフインテグレーションのメリット・効果

ワークライフインテグレーションのメリット・効果は大きく分けて3つあります。

多様な働き方が実現できる

ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートに線を引く必要がないため、リモートワークや在宅勤務といった柔軟な働き方ができます。育児中や介護中の方、療養中の方など、働きたいけど働けない人も自分の生活レベルにあった働き方を選択できます。
 

仕事と家庭を両立できる

仕事が忙しくて「出会いのチャンスを拡げられない」「家族といる時間がない」など、プライベートを犠牲にすることがなくなります。子育てに集中する際は時短勤務やリモートワークを活用し、時間に余裕のある時は仕事に専念するというように、一日の中でメリハリをつけることができます。
 

生産性が向上する

仕事とプライベートに境界線がないため、休みたい時に休めます。残業して無理やり終わらせることがなくなり、結果的に会社全体の生産性が向上します。プライベートの時間も柔軟に確保できるので、ストレスフルな状態から解放されます。

ワークライフインテグレーションのデメリット・課題

ワークライフインテグレーションにはメリットがある反面、デメリットもあります。

自己管理能力が重要になる

仕事とプライベートの境目がないため、従業員は今まで以上に自己管理能力を問われます。自己管理能力が低い人は、慢性的に長時間労働に陥ってしまったり、プライベートの時間を確保できなくなる恐れがあります。
 

平等な評価制度を設計するのが難しい

ワークライフインテグレーションは、従業員に多様な働き方の選択肢を提示できますが、企業側は平等に従業員を評価することが難しくなります。綿密な評価制度の設計が重要になります。
 

ワークライフインテグレーション|毎日の景色を変える働き方

ワークライフインテグレーションを導入する際の注意点

ワークライフインテグレーションは、「生活が全て仕事に直結する」とも捉えられて誤解されることもあります。従業員に対してワークライフインテグレーションの導入目的を周知・理解してもらうことが重要です。
 

制度の目的を理解してもらう

ワーク・ライフ・バランスと同じく「従業員の人生を豊かにする」ことが本目的です。「仕事中心の生活をしてほしい」と誤解されないよう、継続的に社内向け説明会を開催して啓蒙していきましょう。
 

従業員を信頼し「管理しない」ことが重要

管理システムを設計することは重要ですが、過度に従業員の行動を制約する仕組みは逆効果で、ワークライフインテグレーションが上手く機能せずに形骸化します。社外でも社内と同じ状態で仕事できる環境を整備することが重要です。

 

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ワークライフインテグレーションを導入する企業事例

最後に、ワークライフインテグレーションを導入している企業事例をご紹介します。

 

・日本アイ・ビー・エム株式会社

日本アイ・ビー・エムでは、職種ごとに適した働き方を設計しています。SE・コンサルタント・研究開発職には「裁量労働制」を、営業職には「みなし労働時間制度」を、管理部門は「フレックスタイム制」を採用しています。また、時間と場所の制約をなくす「eワーク制度」「ホームオフィス制度」も取り入れています。

・ソウ・エクスペリエンス株式会社

ソウ・エクスペリエンスでは、「子連れ出勤制度」があります。託児所に預けるのではなく、同じ空間で子供と一緒にいながら働くことができます。ちなみに、子連れ出勤できるのは3歳までとしています。

・アディダス

こちらは日本の事例ではありませんが、事例としてご紹介します。アディダスのドイツ本社では、2010年ごろにワークライフインテグレーションを導入しています。1ヶ月の就労時間の20%はどこで仕事しても良い制度や、週40時間以内であれば、勤務時間を自由に振り分けられる制度など、多様な働き方が実践されています。

・株式会社マツリカ

マツリカでは各々がモチベーション高く、生産的に働ける状態を創るため、コアタイムなしのフレックス制を導入しています。また、各々が最高のパフォーマンスを発揮できる環境で最高の成果を出すため、リモートワークが可能です。これらを利用してワークライフインテグレーションを実現している方もいます。
マツリカに興味を持った方はこちらを参考に。

 

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終わりに


日本は少子高齢化を迎えています。今後、ますます労働人口は減り、外国人労働者やシニア世代、現役ママ社員など、多様な人材を活用することが必須になります。従業員の人生を充実させることは企業の成長にとっては縁遠いように思えますが、長期的には実は重要です。

企業がしっかりとした制度設計をすることが重要なことは大前提として、従業員一人ひとりが意識を変えることもまた重要です。自分だけで仕事を抱え込まず、他の人と共有・連携し仕事をする。仕事・プライベートを充実させるために、皆で一丸となり考えることそのものがワークライフインテグレーションなのではないでしょうか。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等