「ハイブリッドワーカー」をご存じでしょうか?本業を続けながら副業で好きな仕事もする新しいタイプの働き方です。今回は、ワークスタイルが多様化してきた時代だからこそ注目したいハイブリッドワーカーの魅力や事例などについて解説します。

 

ハイブリッドワーカーの意味とは?

ハイブリッドワーカーとは、本業と副業をかけ合わせて働く方法です。平日は会社員として企業に勤めながら、仕事終わりや週末に副業を行います。副業の内容は、例えば音楽活動や漫画家など、本業では叶えられない仕事や自己実現のための活動になります。

ハイブリッドワーカーとパラレルワーカーの違い

ハイブリッドワーカーと似た言葉にパラレルワーカーがあります。ハイブリッドワーカーは、本業に副業をプラスする働き方で、働く時間や収入の大部分を占めるのは本業になります。それに対してパラレルワーカーは複数の仕事を掛け持ちします。

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ハイブリッドワーカーとハイブリッドワークの違い

ハイブリッドワーカーと似た言葉にハイブリッドワークがありますが、この2つは全く異なる概念です。ハイブリッドワークは、オフィスとそれ以外の場所(自宅やサテライトオフィスなど)を併用して働くワークスタイルです。

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ハイブリッドワーカーがなぜ注目されているのか?

ハイブリッドワーカーが注目されている背景には、以下の3つの背景が考えられます。

複業(副業)を容認する会社の増加

2018年1月、厚生労働省はモデル就業規則の改定を行い、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言を削除しました。

さらに、2020年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定に伴い、モデル就業規則も「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」という記述に改めています。

参照:副業・兼業の促進に関するガイドライン

 

また、新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークが普及しただけでなく、収入が減少する人が出てきたことも、複業の普及を押し上げた原因と言えるでしょう。

 

ランサーズが2021年に行った調査では、フリーランス人口は1,577万人、経済規模は23.8兆円としています。コロナ禍以前の2020年1月が1,062万人、経済規模17.6兆円であることから、コロナ禍のわずか1年で急激に伸長していることが見て取れます。

参照:新・フリーランス実態調査 2021-2022年版

労働力不足

国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、2030年には人口のおよそ三分の一にあたる3,715万人が65歳以上になり、高齢化率は31.6%にものぼります。2015年の26.6%と比較すると、わずか15年で5%も増加していることが分かります。

参照:日本の地域別将来推計人口(平成 30(2018)年推計)|国立社会保障・人口問題研究所

 

高齢化率が増えるということは、労働人口が減ることと同義です。特に高齢化率が高いとされる地方都市では、すでに人手不足が発生しています。

収入源の分散

コロナウイルスの感染拡大や世界を巻き込んだ国家間の紛争など、ここ数年で目まぐるしく世界情勢は変化し、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。このようにいつ何が起こるかわからない時代を「VUCA(ブーカ)」と呼びます。

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このような状況下では、1つの会社にとどまる状況はリスクになり得ます。不況や恐慌によって勤務先の会社が倒産すれば、収入はゼロになってしまうからです。複業をしていれば、収入源が分散されているため、生活が困難になる状況を回避できます。

ハイブリッドワーカーになるメリット・デメリット

働き方の可能性が広がるハイブリッドワーカーですが、メリットだけではなく一方でデメリットも存在します。ここでは、ハイブリッドワーカーのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

メリット1.経営者視点が身に付く

ハイブリッドワーカーでは、本業をする傍らで理想の実現にチャレンジします。本業とは違い、自分の看板で勝負をしなければいけません。経理、営業、人事、PR/集客、ライブ企画など、経営者のように俯瞰的に物事を見る力が養われます。

メリット2.自身の新しい可能性に気づける

ハイブリッドワーカーは、自分のキャリアや収入を考慮したものではなく、やってみたいこと、好きなことを重視します。本業とはまったく異なる経験や知見を獲得できるため、自分自身の新しい可能性に気付けます。

メリット3.社外の人脈を構築できる

ハイブリッドワーカーでは、本業ではまず出会えない人たちとの縁が生まれます。会社という枠組みにとらわれず、自由につながることができます。近年は、SNSやYouTubeといった発信媒体もあります。SNSなどで自身の活動をシェアすることで、思わぬところにファンができたり、仕事につながったりすることも。

デメリット1.トラブルは自身で解決しなければならない

会社でトラブルが発生した際には、上司や相談窓口などに相談ができますが、ハイブリッドワーカーで発生したトラブルは自身で解決しなければなりません。よくありがちなのが、報酬未払い、損害賠償の請求といった金銭面のトラブルです。事前にトラブルを回避するためにも、仕事を受注する前に業務内容や、納期、支払い条件をチェックしましょう。

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デメリット2.自己管理能力が問われる

本業に加えて副業をするため、時間管理が重要です。ついスケジュールを詰め込んでしまいがちですが、疲労が溜まって本業に影響が出てしまっては本末転倒。本業も副業も体力が資本です。しっかり休み、無理のないスケジューリングをすることが、ハイブリッドワーカーを充実させるコツと言えるでしょう。

ハイブリッドワーカーに向いている人・不向きな人

続いて、ハイブリッドワーカーに向いている人、不向きな人の特徴について紹介します。

ハイブリッドワーカーに向いている人

ハイブリッドワーカーは、本業をしつつ副業で自己実現のための活動を行います。そのため、本業で成果を出しつつ、副業の時間を捻出できる自己管理能力が高い人に向いています。また、自身の名前で活動することになるため、一定のコミュニケーション能力が求められます。初対面の人と難なく信頼関係を築ける人は上手くいきやすいでしょう。

ハイブリッドワーカーに不向きな人

反対にハイブリッドワーカーに不向きなタイプは、自ら動けない人です。副業はどう活動しようと自由であるからこそ、アクションをしなければ何も起きません。いわゆる「指示待ち」タイプの方だと、ストレスに感じるかもしれません。

 

また、副業をすればその分オフの時間は確実に減ります。オンオフの区別をつけたい人や、オフの時間を常に持っておきたい人もあまり向いていません。

ハイブリッドワーカーの事例

最後に、ハイブリッドワーカーの実践事例をご紹介します。

会社員+お笑い芸人

お笑いコンビ「にゃんこスター」として活躍するアンゴラ村長さんは、ネットショップを支援する会社で会社員として働きながら、芸人活動を続けています。会社が副業OKでお笑い活動にも理解があったことや、フレックス社員だったので柔軟なスケジュールで働ける環境が良かったようです。会社員の仕事がお笑いのネタ作りにも活きているとのことで、良い相乗効果が生まれています。

会社経営+漫画家

漫画家の岡山里香さんは、メディアプロデューサーとして会社を経営する傍ら、Instagramなどで恋愛や仕事にまつわる漫画を発信し続けています。もともとは、求人広告の会社に勤務したり、ヘアメイクアーティストとして活動したりしながら、漫画を描いてSNSで発信を続けていたら、しだいに漫画の仕事依頼が入るようになったそうです。

終わりに

「本業があるから好きなことはできない」ではなく、「本業があるからこそ収入面を気にすることなく好きなことができる」というのがハイブリッドワーカーの魅力です。

 

本業を辞めずにやりたいことが実現できることで、生き方の可能性が広がり、夢を諦めずにすむかもしれません。ぜひ本日の内容を参考にしてみてください。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等