長時間労働や残業などが見直され、より健康的に労働者が働ける環境を作る動きが各企業でも見られるようになりました。そんな中で、健康経営とともに近年登場するようになってきた言葉が「ウェルビーイング」です。「ニュアンスは何となく分かるけど、漠然としていてよく分からない」そんな方も多いと思います。 本記事では、このウェルビーイングの定義や、働き方にどのような影響をもたらすのか、導入ポイントなども、あわせて解説します。

世界幸福度ランキングで日本は58位。豊かさと幸福は別?

インターネットが誕生してから早20年。パソコン、スマホ、ウェアラブルデバイスなど、IT技術は日々進化しています。これらネットの力によって、例えばコミュニケーション、買い物、ビジネスなど、あらゆるものが効率化され、便利になりました。もはやインターネットなしには生きられない状態まで、IT技術はわれわれの生活に深く入り込んでいます。 特に先進国である日本においては、「不便」と感じる瞬間はほぼ皆無で、一見幸福な暮らしと感じるでしょう。しかし、「国際幸福デー」の3月20日に国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング2019」では、日本は58位でした。モノや情報にあふれ豊かなはずなのに、心は豊かになっていないということをこの結果が表しているように感じます。2015年の時点では46位でしたが、それ以降は下落気味で50位台を維持しています。

<参照:World Happiness Report 2019> https://worldhappiness.report/ed/2019/#read

「世界幸福度ランキング」で定められている6つの指標

「世界幸福度ランキング」は、一体どのように決められているのでしょうか?以下の6つのポイントで、総合的に採点されます。

・社会的支援(困ったときに頼れる親戚や友人がいるか)

・人生の選択の自由度(人生の選択自由度に満足しているか)

・汚職・腐敗(政府や企業内)

・社会の寛容度(過去1カ月以内に寄付したか)

・一人あたりのGDP

・健康寿命

<参照:World happiness Report 2019>

https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2019/WHR19.pdf

あくまで6つの項目での比較のため、人によってばらつきはあると思いますが、概ね言い当てている統計結果と言えるでしょう。

人生100年時代では、自分の健康を基盤に働き方を考えることが主流に

特に長寿国である日本。海外の研究では、2007年に生まれた日本の子供の約半数が107歳まで生きるといわれています。まさに「人生100年時代」という言葉のままの結果ですが、今後は「いつ死ぬかわからない」よりも「長く生きてしまう」リスクを考えなければいけない時代です。

若いうちに寝食を忘れてバリバリ働いた無理がたたり、40代〜50代で病気になり、残り50年を病床で過ごすなんてことも考えられます。 また、少子高齢化によって社会保障のあり方も変わってきました。以前話題になった「年金2000万問題」でも象徴されるように、若いうちから貯蓄計画を作り、高齢者もセカンドキャリアとして再就職の道を考える必要があります。

年取っても健康的に長く働ける、そのために日々ストレスなく、元気に健康に過ごすことが大切です。 まさに、「良好な状態」を表す「ウェルビーイング」とは、今日本にもっとも足りない概念と言えるのではないでしょうか。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングとは、「身体的、精神的、社会的に、良好な状態になること」を意味する概念です。1948年には、すでにWHO(世界保健機関)の憲章前文に「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます」と記載されており、これがまさに今「ウェルビーイング」と言葉で、再注目されています。 もともとは、社会福祉で使われていた言葉でしたが、ビジネスシーンでも用いられるようになり、ウェルビーイングをもとに、職場環境や働き方を見直す一つの指標になっています。

引用:世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)

https://www.japan-who.or.jp/commodity/kensyo.html

ウェルビーイングとハピネスの違い

幸せという言葉は直訳すると「ハピネス」になりますが、ウェルビーイングとは意味が異なります。ハピネスとは、「単一的で持続しない瞬間的な幸せ」であるのに対し、ウェルビーイングは、「持続可能で多面的な幸せ」を指します。幸福を研究する幸福学でも、現在は幸せを「ウェルビーイング」という訳している例が増えているそうです。

ウェルビーイングを構成する要素

幸福を構成する要素として「快楽」「意味」「没頭」が挙げられます。この要素をさらに分解したものが以下の5つです。

・Positive Emotion(ポジティブな感情)

・Engagement(エンゲージメント、没頭)

・Relationship(ポジティブな人間関係)

・Meaning and Purpose(意味や目的)

・Achievement(達成)

これらは、セリグマン博士が2011年に提唱したもので、イニシャルをとって「PERMAの法則」とも呼ばれ、マーケティング心理学としても活用されています。

ウェルビーイングで変わる働き方

会社や従業員がウェルビーイングを意識するようになると、働き方にどのような影響を与えるのでしょうか?

主体的に業務に専念できる

幸福を前提に仕事を行うようになります。つまり、相手基準ではなく、自分がどう思うか、これをやったら自分はワクワクするのか、ということを自分に問いながら、仕事をすることになります。そうすることで、受け身ではなく、自分がオーナーシップをとり、業務に専念できるようになります。

細やかな「快」「不快」に気づける

ビジネスにおいて、快、不快に気づけるのは非常に重要なスキルです。自分の幸せ、チームメンバーの幸せ、そしてお客さんの幸せを考えた時に、何がここちよくて、不快なのか、突き詰めて考えるようになります。ただ無機質に業務をこなすのではなく、しっかりと自分も含め、会社の中の人、クライアントの心を理解し気づき、感じる力が身につきます。

ウェルビーイングを達成するためには何が必要?

よくありがちな誤解が、「働きやすさ」を実現すればウェルビーイングは達成できるという考え方です。ウェルビーイングは「身体的、精神的、社会的に、良好な状態になること」であり、そこには「やりがい」「働きがい」も必要です。

働きやすい環境だけでは達成しない

例えば、「残業が少ない」「リモートワークが可能」など、働きやすさも大切ですが、ウェルビーイングは「身体的、精神的、社会的に、良好な状態になること」であり、ただ健全な働き方を作るだけでは実現できません。

働きがいと従業員の健康のバランスが大切

現状では、「働きやすさ」を主とした働き方改革が行われていますが、ウェルビーイングを実現するのであれば、従業員の「働きがい」も尊重した設計が必要です。そのためには、従業員に一つ一つの仕事の「やる意味」を持ってもらうことが大切です。ただ、やらされ仕事の会社の駒として動くのではなく、この仕事で社会にどのようなインパクトを与えているのか、なんのためにこの仕事があるのか、など仕事の本質を示すことが大切です。

成果を正しく評価する

自分が成し遂げた仕事に対し、正当な評価を得られるからこそ、また明日も頑張ろうという活力が湧いてきます。そのためには、属人的で主観的な評価ではなくタレントマネジメントを活用したデータによる客観的で正確な評価をする仕組みを構築しましょう。

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ウェルビーイングを採用している企業事例

最後に、ウェルビーイングの概念を推進している企業の事例をご紹介します。

株式会社イトーキ

イトーキでは、従業員の労働環境の裁量を広げることを目的とした新しい働き方「XORK Style(ゾーク・スタイル)」を推進。「XORK Style(ゾーク・スタイル)」では、ABWとウェルビーイングの考え方に基づいたオフィスデザイン空間「WELL Building Standard」を設計しています。

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伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社では、ウェルビーイングの取り組みとして、早朝出社を推奨しています。残業も原則禁止、10時以降は強制退社、また午前8時までに出社すると、パンやバナナなどの無料の朝食が提供されます。これらの施策により、早朝出社する社員は200人以下から300人ほどまでに増加したそうです。

オリックスグループ

2016年に職場改革推進プロジェクトが立ち上がり、現在では多様な働き方をサポートできるよう、ソフト、ハードの両面から様々な施策を行っています。ソフト面では、スーパーフレックスタイム制度の導入、自分のスキルアップのために6万円まで最大付与される「自分磨き制度」が導入され、ハード面では、ノートPCの全社導入、外部サテライトオフィス、フリーアドレス制などが導入されています。

まとめ

ウェルビーイングは、残業規制、リモートワークなどを導入すれば解決するものではなく、従業員の意識改革も必要です。ウェルビーイングとは、究極な話、「本当の幸せとはなにか」を追求することであり、従業員それぞれが常に自身に問いかけなければならない問題です。 短期的には、売り上げや業務効率に直結しないかもしれませんが、長期的に見れば確実にプラスをもたらす概念です。ぜひ、これを機にウェルビーイングを見直してみてはいかがでしょう?