モバイルワークとは、テレワークの一種で、自宅に限らず、カフェやシェアオフィスなど、場所にとらわれず働く働き方のことを指します。近年は、ICT技術の発展とともにモバイルワークという働き方に注目が集まっています。本記事では、モバイルワークのメリット・デメリット、導入ポイント、導入事例について解説いたします。

モバイルワークとは?

モバイルワークとは、カフェや電車や車の中、自宅など、どこでも仕事ができるような働き方またはその状態を指します。

ICT(情報通信技術)の発達により、モバイルワークが実施できる環境整備は容易に行えるようになり、さまざまな企業が導入を進めています。さらに、コロナウィルスの蔓延により、ソーシャルディスタンスを維持する観点から、多くの企業は従来の小馬環境を見直すことを余儀なくされています。そのため現在、人を一箇所に密集させず、事業活動を継続できる働き方として、モバイルワークが改めて注目されています。

モバイルワークとテレワークの違い

モバイルワークは、テレワークの一種でコワーキングスペースやカフェ、電車など場所にとらわれずに働く働き方です。一般社団法人日本テレワーク協会では、テレワークを「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」の3つに分類しています。

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モバイルワークの普及が進んでいる背景

モバイルワークの普及が進んでいる背景には、以下のような要因が考えられます。

ICT(情報通信技術)の発達

ICT(情報通信技術)とは、パソコンやスマホ、IoTなどのデバイスを使い、情報通信を行う技術全般を指します。ICT(情報通信技術)の分かりやすい例がGoogleドライブやDropBoxといったクラウドサービスです。クラウドサービスの登場により、書類はペーパーレス化し、また社内PCに依存せず、どのパソコンからもファイルにアクセスできる環境が実現できるようになりました。

また、2020年からは大手キャリア各社が、5G対応プランを発表しました。現在は、プレサービスが始まっただけで本格運用はされていませんが、数年先には通信速度がさらに向上し、モバイルワークが容易に行える通信環境になるでしょう。

ワークライフインテグレーションの実現

ワークライフインテグレーションとは、ワーク(仕事)とライフ(私生活)を対立の構図とせず、調和しながらQOL(生活の質)を高めるワークスタイルのこと。場所の制約がなくなることで、疲れたらカフェで一休みし、その後カフェで仕事を再開するといったメリハリを自分の裁量で行えるようになります。ワークライフインテグレーションが整うことで、従業員の生産性向上にもつながり、長期的には企業へのエンゲージメントも高まります。

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固定費削減

モバイルワークを推進することで、オフィス機能を最小限にとどめることができます。丸の内や銀座など、一等地に本社を構える大手企業ほどコストダウンの効果が大きく期待できます。スペースマーケットが2020年5月に行った調査でも、約40%が現在入居中のオフィスの解約・縮小を検討していることが明らかになっています。

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BCP(事業継続計画)対応

BCPは、(Business Continuity Plan)の略で、企業がテロや災害、疫病、大規模システム障害など緊急事態に陥った時に、被害を最小限にとどめ、事業を存続させる戦略のことを指します。

BCPはアメリカ同時多発テロやSARSなどに起因して普及し始め、日本では阪神淡路大震災を契機に広がりました。本社に重要な機能を集中させず、場所に制約されず、従業員が個々に事業活動を行うことで事業活動が停止するリスクを最小限にとどめることができます。

モバイルワークに向いている仕事・向いていない仕事

向いている仕事

一つの場所にとどまる必要のない仕事、かつ成果が明確な仕事が当てはまります。

【向いている仕事一覧】

・プログラマー・システムエンジニア

・デザイナー

・ライター

・営業

・事務

・カウンセラー

ただし、機密情報を扱うことが多い、専用のシステムを使う必要がある等の場合、環境が現実的に構築できない、情報漏えいのリスクの観点から、モバイルワークを実施するのが難しくなります。士業などは、在宅勤務(テレワーク)の導入は進んでいるものの、顧客の機密情報を扱うため、モバイルワークは現実的に難しいケースが多いとされています。

向いていない仕事

一方、向いていない仕事はどのようなものがあるのでしょうか?モバイルワークに向いていない仕事の共通点は、「接客を伴う仕事」「製造を伴う仕事」です。飲食店や百貨店など、サービス・小売業は、販売行為そのものがサービスであるため、モバイルワークが実施できません。このほか、医療・介護なども専用の医療器具を必要とするため、現実的に導入が難しいでしょう。また、建築、土木、医薬品の開発・研究なども、現場で製造する・研究することが仕事になるため、モバイルワークには向いていない仕事です。

【向いていない仕事一覧】

・飲食店

・小売店の販売スタッフ

・介護士、看護師

・工場作業員

・設備スタッフ ・研究者

モバイルワークのメリット・デメリット

モバイルワークを導入すると、どのような効果が期待できるのでしょうか?まず、メリットとして挙げられるのが「業務効率の向上」です。社内決済をとるために、営業先から社内に戻る、モバイルワークであれば移動時間も削減でき、営業先から近いカフェやシェアオフィスで仕事ができます。

次に挙げられるのが「固定費の削減」です。モバイルワークが浸透すれば最低限のミーティングルームと通信環境、OA機器の設置で済み、莫大なオフィス賃料やOA機器のリース代、光熱費等のコストを削減できます。特に、一等地にオフィスを構えている企業ほど、絶大な効果が期待できます。

最後に、「離職率の改善」です。モバイルワークにより、ワークスタイルに柔軟性が生まれ、育児や介護、病気療養中の人でも働きやすい環境が整備できに、長期的には離職率の改善も期待できます。

反対にデメリットも存在します。まず一つ代表的に挙げられるのが「コミュニケーション不足」です。オンラインコミュニケーションが基本になることで、雑談などもしにくい空気感になる上、疑問点を聞くことにも気を遣うようになります。

この点においては、経営陣が率先して、コミュニケーションが活性化するランチ会やチャットツール内に雑談スレを用意するなど、工夫が必要です。

そして、モバイルワーク導入を躊躇する理由の一つとしてよく挙げられるのが「セキュリティ上のリスク」です。モバイルワークのように、自宅だけでなくさまざまな場所が勤務地になる場合、書類紛失や情報の盗み見などの情報漏えいのリスクは頭に入れておかなければなりません。セキュリティ研修などを定期開催して、セキュリティに対する意識を高めるほか、持ち出し用PCへセキュリティ対策ソフトの導入は必須となるでしょう。

モバイルワークの導入に必要なポイント

モバイルワークを導入するには、どのようなポイントが重要になるのでしょうか?それは、以下の3つです。

勤怠管理システムの構築

モバイルワークにおいては、実際に勤務した時間をどう把握するか、残業時間をどう定義するか、モバイルワークを導入する前に検討する必要があります。自己申告制による勤怠管理が、最も導入のハードルが低いですが、その際には入力された労働時間と実働時間に相違がないか、確認する手段を用意しておく必要があります。

最も正確な勤怠管理を行う手段としては、パソコン端末などの閲覧時間や利用時間で実働時間を管理する方法が有効です。ただし、端末のモニタリングツールの導入は、従業員に過度なプレッシャーを与え、作業効率面で逆効果になることもあるので、導入は慎重に検討しましょう。

ネットワーク環境の整備

モバイルワークでよく導入されるのがVPNです。VPNは「Virtual Private Network」の略で、日本語では「仮想専用線」と訳されます。VPNを使うと、遠隔地の拠点同士のLANをつなぐことができます、つまり、出張先やシェアオフィスなど、社外から社内システムやサーバにアクセスすることができます。

万全なセキュリティ対策

モバイルワークでは、情報漏えいリスクに十分留意しなければいけません。そのためには、従業員に支給する持ち出し用PCへのセキュリティ対策ソフトの導入やパソコン端末のローカルにファイルを保存しない、Web会議は誰にも聞こえない密室で行う、ウィルス感染をした場合はただちに情報システム部門に連絡するなど、セキュリティルールを社内規程に盛り込むだけでなく、eーラーニングやオンライン研修を通して、セキュリティに対する啓蒙を行うことも重要です。セキュリティルールの整備に関しては、総務省が発表しているテレワークセキュリティガイドラインを参考にしてみましょう。

参考記事:テレワークセキュリティガイドライン(第4版)

モバイルワークの導入事例

最後に、モバイルワークを導入している企業事例をご紹介します。

ポリコムジャパン

ポリコムジャパンでは、東日本大震災をきっかけにモバイルワークを導入。当初は、営業職など一部の従業員が対象でしたが、現在では全ての従業員にモバイルワークの権利が与えられ、週に1回以上モバイルワークを実施する従業員も多くいるそうです。2012年に開催された社団法人日本テレワーク協会主催の「第13回テレワーク推進賞」では奨励賞を受賞しました。

カルビー

カルビーでは、2017年4月より、モバイルワークを導入。2010年には人事考課を廃止、完全成果主義に移行しています。モバイルワークは、直属の上司の承認が下りた従業員のみで、新卒入社3年以内の従業員はこの制度を利用できません。また、モバイルワークを使って成果が出なかった場合も許可が取り下げられるなど、シビアな面も。

モバイルワークで自由な働き方を推進しよう

モバイルワークは、従業員へ自由な働き方をもたらし、業務効率アップや離職率低下などの効果も期待できますが、その反面、情報漏えいリスクや勤怠管理の難しさといった課題も存在します。導入する際には、これらの課題を解決できる施策や方法を検討しながら進めていきましょう。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等