UberEATSや出前館の配達員でお馴染みの「ギグワーカー」。「フリーランスとは何が違う?」「自由に働けそう」などさまざまなイメージがある働き方だと思います。今回は、ギグワーカーのメリットと問題点について解説します。

 

ギグワーカーとは?

gig(ギグ)は、英語で「単発の演奏会・コンサート」や「単発の仕事」を意味します。つまり、ギグワーカーは、単発(一時的)な仕事を受けて働く人を指します。

 

大きな特徴は仕事の請け負い方です。フリーランスは特定の会社に所属せず、自由に契約を結び働く人を指します。その一方ギグワーカーは、インターネット上のプラットフォームやアプリを通じて、単発で仕事を受注する人を指します。

 

ギグワーカーの仕事の一例としては、

  • 引越しの手伝い
  • ホテルの受付
  • 工場での梱包
  • コンビニのレジ業務
  • 家事代行
  • 配達代行

などがあります。

 

ほかにも、

  • Webデザイン作成
  • グラフィックデザイン作成
  • プログラミング

など、専門領域のギグワークもあります。

 

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ギグワーカーと日雇い派遣の違い

日雇い派遣とギグワーカーの大きな違いは、仕事を請け負う流れです。日雇い派遣はまず派遣会社に登録し、合う案件を紹介してもらいます。一方ギグワーカーは、派遣会社への登録は不要です。ギグワークを専門に扱うプラットフォームサービスのアプリ上で希望の仕事を検索し応募後、依頼主から直接仕事を受けます。

 

ギグワーカーが広まる背景

これほどまでに、ギグワーカーが普及したのはどのような背景があるのでしょうか。

 

副業の解禁

クラウドソーシングサービスの大手、ランサーズ株式会社が発表した調査によれば、ギグワーカーに該当する「自由業系フリーワーカー」の人数は、2021年1月時点で308万人でした。2020年の58万人と比較すると、およそ6倍も増加しています。

 

参照:【ランサーズ】フリーランス実態調査 2021

 

急増した理由のひとつに、政府の働き方改革の推進があります。2017年に閣議決定された働き方改革実行計画で、副業はじめリモートワークなどのフレキシブルな働き方の実現が目標になりました。そのあと2020年9月に改定された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、副業のルールが明確に記載されました。これにより副業を解禁した企業が増えて、本業以外の時間にギグワーカーとして働く人が増えました。

 

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雇用への不安

コロナ禍による雇用情勢の不安も大きな要因のひとつです。多くの企業がコロナ禍で業績が悪化し、今までのように従業員の雇用を継続できなくなったり、従業員が大量に退職したりしてしまいました。

 

人手不足だけど採用をする予算がない企業にとっては、ギグワーカーは重要な戦力です。面接や研修なども不要で、かつ人手が欲しいときに活用できるため、大きな助けになります。また、ギグワーカー側も面接なしで即日働けるほか、自分の都合に合わせて働けます。

プラットフォームの普及

ギグワーカーと仕事をマッチングするプラットフォームも、ここ数年で大きく普及しました。特に、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」や「Wolt(ウォルト)」「出前館」などのいわゆるフードデリバリー業界は、コロナ禍で需要が急激に高まりました。

 

フードデリバリー配達員の正確な数は分かりませんが、2021年5月時点でおよそ15万7,000人と発表されています。

参考:第97回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録)

 

また、2021年6月時点では、ウーバーイーツに所属する配達員は約10万人、同じくフードデリバリーサービスの「menu(メニュー)」は2021年4月時点で約3万2,000人となっています。

ギグワーカーの問題点

時間や組織に縛られず自由な働き方ができるギグワーカーですが、その自由さゆえに多くの問題点も抱えています。

 

海外のギグワーカー事情

もともと、ギグワークは数年前からアメリカを中心に欧米諸国で浸透していました。2017年にはアメリカの全労働人口の34%がギグワーカーという統計データもあります。

 

しかし、各国で不安定な労働環境や法律適用外の働き方が問題視されてきました。2021年12月、欧州委員会はギグワーカーの保護を目的とした法案を施行しました。ギグワーカーを雇用する会社に、酬水準の決定や労働状況の監督などギグワーカーを守る基準を設定しました。

 

さらにスペインでは、2021年に料理宅配サービスを行う会社に対して、配達するギグワーカーを従業員とするように義務付ける法令が施行されました。

ウーバーイーツユニオン紛争

日本国内でもギグワーカーの労働環境を問題視する声は大きいです。2019年10月、ウーバーイーツの労働環境改善を求めて、労働組合「ウーバーイーツユニオン」が発足しました。ウーバーイーツユニオンは、同社で働くギグワーカーたちへの労災適用と労働環境の改善を訴え、団体交渉を求めています。ウーバーイーツ側は、「私たちはあくまでも(仕事をつなげる)プラットフォームにすぎない」と団体交渉を拒否し続けています。

 

フリーランスのガイドラインの策定

2020年12月には、経済産業省も「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定しています。今後増え続けると予想されるフリーランスが安心して働ける環境を整備するのが目的です。

 

ギグワーカーのメリット

ギグワーカーのメリットについて、働く側と雇用側でそれぞれいくつかご紹介します。

 

働く人のメリット1:時間や場所に縛られない働き方が実現できる

ギグワーカーの最大のメリットは、自由に働けることです。時間や場所だけではなく、会社の人間関係や社内規則に縛られることもなく、働くペースも自分で決められます。

 

働く人のメリット2:収入を増やせる

会社が休みの日にギグワークすることで収入のアップも見込めます。働き方改革によって、時間外労働の上限が月45時間までとなりました。今まで残業していた時間が自由になり、その時間でギグワークなどの複業を始める人は今後も増え続けるでしょう。

 

働く人のメリット3:新しいスキルを獲得できる

ギグワーカーは、本業では体験できない仕事に携われます。さまざまな仕事に薄く広く関われるため、自分にマッチする仕事を探すきっかけになるかもしれません。

 

雇用側のメリット1:採用コストを抑えられる

雇用側の大きなメリットは、人件費を削減できることです。従業員を1人雇用するだけでも、求人広告の出稿、採用面接、入社後教育など、多大な労力とコストがかかります。一方ギグワーカーは、必要な期間だけ必要な人数をアサインできます。採用や人材教育に時間をとられることなく、本来の業務に専念できます。

 

雇用側のメリット2:優秀な人材を採用できる

雇用をすると、能力が低くても合理的な理由がない限りは会社都合で解雇することはできません。しかし、ギグワーカーは即戦力人材であるため、能力が見合わないと判断すれば、次の依頼から別の人を検討することも可能です。人の入れ替わりが激しい分、優秀な人材に出会える確率も高いです。

 

ギグワーカーのデメリット

多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。

働く人のデメリット1:収入が安定しない

仕事したいときだけ働ける柔軟さが魅力ですが、収入が不安定になりやすいです。さらに、病気やケガで一定期間働けなくなっても保証はありません。

 

働く人のデメリット2:自己責任を伴う

ギグワーカーはあくまで個人事業主という位置づけです。雇用契約ではなく、業務委託契約となるため、労災保険や福利厚生はありません。自分で自分の身を守る必要があります。

 

働く人のデメリット3:買い叩かれやすい

ギグワークの需要が高まり、プレイヤーが増加しているため、価格を買い叩かれる傾向にあります。ギグワーカーを始める際は、事前に業務内容と報酬金額のバランスが適切か確認しましょう。

 

雇用側のデメリット1:情報漏えいのリスクがある

人手が不足しているときだけ仕事に入ってくれるギグワーカーは頼りになる存在です。しかし単発といえど、どうしても業務内容や社内の情報に触れることになります。万が一、機密情報や重要情報などが流出した場合は、取り返しのつかない状況に陥ってしまいます。ギグワーカーに依頼する場合は、閲覧権限の設定をする、機密情報や重要情報に関する書類を渡さないなど、事前の対策を講じましょう。

 

雇用側のデメリット2:人材の入れ替わりが激しい

新卒採用や中途採用では、候補者が長期的に働くことを前提に採用します。しかし、ギグワーカーはあくまで単発の仕事の地続きでしかないため、続けてもらえる保証がありません。そのため、優秀な人材に出会えてもすぐに辞めてしまうこともあります。

終わりに

コロナ禍によって、大きく変わった私たちの働き方。自分の都合に合わせて、企業に雇用されるしがらみもなく自由に働けるギグワークは、一見メリットばかりに思えます。その裏にあるリスクも把握したうえで、自分のライフスタイルに沿った働き方の選択肢のひとつとして、ギグワーカーも検討してみてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等