働き方の多様化により、一つの組織が従業員を終身雇用する時代は終焉を迎えつつあります。一人の従業員にスキルやナレッジを保有させるのではなく、いかにして組織自身がスキルやナレッジを保有するかが大切です。ダブルアサインメントを導入すると、属人化されていた業務の解消ができるだけでなく、従業員の長時間労働の改善にも効果があり、今注目されている働き方です。本記事では、ダブルアサインメントの概要、メリットなどについて解説いたします。

ダブルアサインメントとは?

ダブルアサインメントとは、一人の従業員が専属で担当している専門的な業務をペアで担当させる制度。これにより、業務が属人化せず組織にナレッジが蓄積するだけでなく、 介護や育児など、なんらかの事情により時短勤務せざるを得ない従業員の雇用維持にも効果が期待できるということで、注目を集めています。

2017年に日本経済団体連合会が行った調査によれば、長時間労働につながりやすい職場慣行として、「業務の属人化」が27.3%と断トツで、次に「時間管理意識の低さ」が21.7%、「業務効率の悪さ」が18.5%と言う結果が出ており、属人化を課題とする企業が多いことが見て取れます。

<参照:2017年労働時間等実態調査|日本経済団体連合会>

このように、多くの企業では一部の従業員に業務が集中しており、長時間労働が慢性化しています。このように、業務の属人化が起こると、従業員が離職したときにナレッジやノウハウが外部へ流出するだけでなく、業務が回らなくなり、また別の従業員を専属の人材にするという悪循環から抜け出せなくなります。このように、業務の属人化では常にリスクと隣り合わせの状態にさらされます。

社内ダブルジョブやワークシェアリングとの違い

社内ダブルジョブは、パーソルキャリアやロート製薬などが採用している働き方で、現在の業務に加えて、別の部署や事業部の業務も担当する制度。ダブルアサインメントのように、ペアで業務を遂行するというルールは特にありません。

一方、ワークシェアリングは、名前の通り、従業員同士で業務をシェアする働き方で、生産性向上や雇用維持などの効果が期待できます。1970年頃にヨーロッパで始まった働き方で、近年は日本でも注目されています。

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ワークシェアリング|仕事を分かち合い、従業員の健康と雇用を守る働き方

ダブルアサインメントが求められている背景

ダブルアサインメントは、まだまだ認知度の低い働き方ですが、今後、日本でも少しずつ普及していくと予想されます。その理由は以下です。

労働人口の減少

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った調査によれば、労働力人口は2023年までは増加傾向が続きますが、65歳以上の人口比率の増加に伴い、2024年から減少に転じるという結果が出ています。

<参照:2030 年までの労働力人口・労働投入量の予測~人数×時間で見た労働投入量は 2023 年から減少加速 ~

また、東京一極集中が続く日本においては、東京とそれ以外の地域では、減少の速度には差があり、人口が少ない都市では労働力不足の傾向は、2023年よりも前に深刻化すると想定されます。

働き方の多様化

帝国データバンクが2019年に行った働き方に関する調査によれば、働き方改革の取り組み状況について、「取り組んでいる」と回答した企業が60.4%と、前年の22.9%も上昇しました。

一方、「取り組む予定はない」「取り組んでいない」は合わせて10%程度で働き方を変える取り組みを実践している企業が増加していることが伺えます。また、今後の取り組みについて「サテライトオフィスやテレワークの導入」が23.6%、「副業の許可」が22.5%と多様化する働き方へ適応する取り組みが目立った印象でした。

今回の外出自粛の事態によって、世界的に広くテレワークが推進されたことで、さらに他の新しい働き方も推進されることでしょう。

<参照:働き方改革に対する企業の意識調査|帝国データバンク

ダブルアサインメントのメリット・デメリット

では、ダブルアサインメントを導入すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

メリット1:業務の属人化を防げる

前述したように、ダブルアサインメントの最大のメリットは業務の属人化を防げること。業務が属人化すると、担当している従業員に業務が集中し、例えばその従業員が離職・休職した際に、人手が不足し、サービスの品質の低下やカスタマーからの信頼悪化につながります。ダブルアサインメントを導入すれば、業務量を均一化でき、より多くの従業員がフレキシブルにさまざまな業務に対応できるようになります。

メリット2:従業員の精神的負荷が減る

業務過多になることが減り、従業員が感じる責任感やプレッシャーも軽減できます。結果として、離職率の減少やエンゲージメントの上昇などにつながります。

メリット3:組織力が強化される

今まで、従業員のスキルやノウハウに依存していたところを、チームワークによって業務を遂行するようになるため、暗黙知の共有など、ナレッジマネジメントなどの手法が浸透し、よりチームワークの強い組織へと成長します。 これだけ多くのメリットがあるダブルアサインメントですが、従業員側では収入が減る、 生産性が低下する、また企業側においては、社会保険料などのコストがかかる、制度の改革の必要性などのデメリットがあります。

デメリット1:収入が減る

労働時間が少なくなる分、収入も減少します。企業側は、従業員の収入の減少に合わせ、副業容認など、ダブルアサインメントに沿った就業規則を作る必要があります。

デメリット2:生産性の低下

今まで一人で業務を行っていたところを、ペアで業務を遂行することで、引き継ぎやコミュニケーションが多くなり、場合によっては業務の効率低下につながることも。ダブルアサインメントは、専門的なナレッジやスキルが必要で、替えのきかない業務において効果を発揮するのであって、他の従業員にも問題なく遂行できる業務に、無理にダブルアサインメントを導入する必要はありません。

デメリット3:人事制度の見直しが必要に

ダブルアサインメントを導入するには、短時間勤務制度の導入や前述した就業規則に副業容認の追加など、全体的な制度設計の見直しが必要になります。また、ダブルアサインメントをする従業員、しない従業員の間で不平等にならないような人事評価制度の設計も重要です。

デメリット4:社会保険料等のコストが増える

従業員が増えるほど、社会保険料はもちろん、採用コスト、教育費も増大します。現状で行っている業務の中で、ダブルアサインメントを導入する余地がありそうか、入念な検討が必要です。

ダブルアサインメントの導入事例

最後に、ダブルアサインメントの導入事例について紹介します。

株式会社日本レーザー

株式会社日本レーザーでは、2007年頃にダブルアサインメントを導入している先進的企業です。一人の従業員が複数の仕事を持つ「マルチタスク制度」もあわせて導入したところ、ダブルアサインメントの難点である人件費の圧迫をうまくカバー。23連続黒字化、10年離職率がほぼゼロという快挙を達成しています。

ダブルアサインメントで「業務の属人化」を解消しよう

ダブルアサインメントは、万能薬や特効薬ではありません。業務の属人化を解消するというメリットもある一方、企業側は人事制度の見直しや人件費の増加、従業員側には、収入が減る、生産性が低下するというデメリットもあります。自社の業務内容や体制状況を判断しながら、入念に導入することが重要です。