レジリエンスとは、英語に直訳すると、回復力、立ち直る力となりますが、ビジネスシーンでは外的な衝撃にも折れることなく、自立的に立ち直ることのできるしなやかさのことを指します。

異常気象、疫病、業界再編、めまぐるしく変化を求められる昨今において、ますます必要とされるのがこのレジリエンス。本日は、レジリエンスの概要と高め方について解説します。

レジリエンスとは?

レジリエンスは、逆境や困難が訪れても、自立的に立ち直ることのできる強さ・柔軟性のことを指します。このレジリエンスという言葉は、1900年代初頭ごろから物理学や生態学の分野で使われていましたが、1980年ごろから心理学や精神医学の分野でも、対の意味を持つストレスとともに広く浸透し、精神的な回復力や復元力という意味合いで使われるようになりました。

特筆すべきなのが、米国心理学会会長であったマーティン・E・P・セリグマンが作った理論である「ポジティブ心理学」の研究の一つで行われたレジリエンス研究「Master Resilience Program (MRT) 」です。

MRTは、ペンシルベニア大学がアメリカ軍に提供している教育研修プログラムで、戦地で生死を分かつ環境に身を置いたことで、躁うつ、無気力感、PTSDなどに襲われる兵士が数多く出ましたが、このプログラムを取り入れたことで、一定の成果が現れたということで、現在は米軍のみならず民間企業などにも採用されています。

従来、PTSD(外傷後ストレス障害)は原因を追求するために「発祥モデル」を分析することが一般的でありましたが、レジリエンスの概念の普及とともに、回復過程にも注目されるようになりました。

深刻な事故や災害を経験したとしても、特にレジリエンスを持っている人は発祥しない傾向にあることが研究であきらかになりつつあります。 変化の激しいビジネス環境下では、ストレスを抑え込む、なくすのではなく、いかに苦境を乗り切り、逆境からすぐに回復できるか、その力が特に求められます。

レジリエンスとグリット(GRIT)の違い

レジリエンスに似た言葉にグリット(GRIT)があります。 グリット(GRIT)は、アメリカの心理学者、アンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した考え方です。Guts(困難に立ち向かう力)、Resilience(困難から立ち直る力)、Initiative(自らが目標を定め取り組む自発力、Tenacity(最後までやり遂げる執念)の頭文字をとった言葉で、最後までやり抜く力のことを指します。それに対し、レジリエンスは困難や逆境から立ち直る力のことを指します。レジリエンスは、グリットを達成する過程において必要な一要素として位置づけられます。

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レジリエンスを構成する6つの要素

Master Resilience Program (MRT)では、以下の要素をレジリエンスを構成するものとして、レジリエンス・コアコンピテンシーと読んでいます。要素は、「自己認識」「セルフコントロール」「現実的楽観性」「精神的柔軟性」「キャラクター・ストレングス」「人とのつながり」の6つです。

自己認識

自分の思考や感情、反応を自覚できること

セルフコントロール

自分の思考や感情を制御し、環境や状況に応じて適応させられる力

現実的楽観性

ポジティブな面や事柄に気づき/発見し、目的に沿ったアクションを起こせる性質

精神的柔軟性

状況に応じてフレキシブルに考え、思考できる性質

キャラクター・ストレングス

自分らしさ、強みを見出し、その強みを最大限に発揮し、困難も突破する強さ

人とのつながり

信頼関係を構築し、維持していく力

なぜレジリエンスが必要?

ここ数年、急激にレジリエンスという言葉を聞くようになりました。なぜ、レジリエンスがビジネスシーンで求められているのでしょうか。

不確実性の強い「VUCA(ブーカ)」の時代

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、予測困難で複雑性が増した現代の世界を表した言葉です。

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AIやIoT等の技術発展によるビジネス環境のめまぐるしい変化、そして医療技術の発展に伴う超高齢化社会への突入、また世界経済の拡大の弊害ともいえる地球温暖化による異常気象、そして定期的に訪れる疫病など。

今までは常識として考えられていたことが、ある日突然、非常識となるのは往々にしてあることです。近年で分かりやすい例が、脱プラスチックの動きです。従来、ストローはプラスチックが一般的でしたが、海洋プラスチックごみ問題に伴うSDGsの動きにより、世界的に脱プラスチックの動きが高まり、紙ストローの導入が始まっています。日本国内ではレジ袋も2020年7月から有料化になることが決定しています。

このように、数年でビジネス市場が縮小または消滅に追い込まれるリスクを常に孕んでおり、変化に折れず、自立的に立ち直れるレジリエンスの力が必要不可欠です。

ストレスを回避するのではなく、立ち向かう力が必要に

働き方やライフスタイルの多様化、ジェンダフリー、デジタル革命におけるビジネス環境の連続的変化と、個人にとっては昔に比べて生き方の選択肢が広がり、より自分の強みを活かせる時代に突入しつつあります。しかし、変化に伴いストレスもまた大きくなっているのも事実です。

例えば、メール、チャットなどの登場によって、いつでもどこでも仕事ができるようになりましたが、つい電車の中でもプライベートの時間でも、通知を気にしてしまい、仕事をしてしまうという現状が起こっています。

このような状況下では、ストレスから回避するということは現実的ではなく、ストレスは常に存在するものと認識し、その上で、ストレスにどう立ち向かっていくか、処理していくかという思考やマインドが重要になります。

レジリエンスを持っている人の特徴

ここでは、レジリエンスを持っている人の特徴について紹介します。

冷静に現実を直視できる

レジリエンスを持った人は、決して情熱的なわけではありません。常に冷静に現実を直視し、受け止める覚悟を持っています。起こったトラブルや出来事を、早とちりして思い込みで結論を出すのではなく、しっかりと現状を見据えた上で、客観的な視点から冷静に仮説を立てることができます。

多角的に物事を捉えられる

自分にとって都合の良いことばかりではなく、自分にとって都合の悪いことも受け入れ、多角的に物事を捉えます。レジリエンスの強い人は、「自分の都合の良いように解釈するクセがある」自分の弱さを受け入れ、常にフラットに見られるよう、さまざまな人の意見や情報に触れています。

自責しすぎない

問題の原因を全て自分のせいと考えることを個人化(自己非難とも)といいます。個人化傾向が強い人は、自責の念に苛まれ、メンタルに支障をきたしてしまうケースが多いです。しかし、レジリエンスが高い人は、個人化せずに事実に基づいて冷静に原因を分析します。

レジリエンスを高める方法

それでは、レジリエンスを高めるには、どのような方法が有効なのでしょうか?

1.思考のクセや傾向を理解する

まず、自分の思考のクセや傾向を理解しましょう。困難や逆境に直面しても立ち直るためには、現実を冷静に多角的に把握できる視野が必要です。

・悪い事象を拡大化していないか?

・他人の問題を自分の問題と捉えていないか?

・思い込みで結論を出していないか?

・一般化しすぎていないか?(一般的には〜だから)

こういった問いを立てることで、無意識に偏りのあった思考のクセを認知し、修正していくことができます。

2.ABCDE理論を活用する

ABCDE理論は、アルバート・エリスが提唱した理論で、の頭文字をとったもので、人の行動プロセスを体系化したもの。ABCDEはそれぞれ以下のような意味を表します。

A(Activating Event)・・・出来事

B(Belief)・・・出来事に対する考え方・受け取り方

C(Consequence)・・・生じる感情、それに伴う行動

D(Dispute)・・・Bに対する反論・論理的否定、自問自答

E(Effective New Belief)・・・Dによってもたらされる効果

必ずなにか出来事が起これば、それに対しての解釈が始まり、それに伴って何かしらのアクションを起こします。Bが無意識にネガティブ、または不適切な考え方になっていると、望ましくないもの結果が生まれます。そこで、Dの自問自答をすることで、Bを良い方向に軌道修正し、良い結果に自分を導きます。このABCDE理論で考える習慣が身につけば、前述した思考傾向の把握にもつながり、よりロジカルに冷静に物事を捉えることができます。

3.小さな成功体験を記録する

レジリエンス・コアコンピテンシーの一つである「現実的楽観性」を身につけるには、自分でもできるという自己肯定感を持つこと。そのためには、日頃見落としがちな小さな成功体験に注目しましょう。「社内マニュアルを修正した」など、ささいなことでもいいので、コツコツと自分が挑戦したことを記していくことで、成長している実感が得られ、自信がついてきます。

自分の強みを把握する

「今までどのような場面で活躍したか?」「どのような場面で人の役に立ったか?」整理してみましょう。ただ、これだけでは自分の強みを把握するのは不十分です。ジョハリの窓を活用してみましょう。

ジョハリの窓は、自己分析にでよく使われる心理学フレームワークの一つで、「自分も他人も知っている自己」「他人だけが知る自己」「自分だけが知る自己」「自分も他人も知らない自己」の4つで、自分の強み・特性を理解できます。ここで最も大切なのが、「他人だけが知る自己」で、これは周囲の自分をよく知る家族、同僚、上司、部下からにヒアリングすることより、情報収集が可能となります。

まとめ

常にめまぐるしく変化をするビジネス環境の中で大切なのは、「ストレスを回避する」のではなく、「ストレスを対峙し、どう乗り越えていくか」ということだと思います。レジリエンスがますます重要になる時代。本日紹介したポイントを参考にしてみてください。