テレワークの普及により、場所や時間の制約がなって、地方移住や多拠点居住など、新たな生き方の選択肢が生まれています。そのなかでも近年注目されているのがバンライフです。キャンピングカーやバンに、最低限の荷物を積み、移動しながら働くスタイルで、密にならず生活コストを抑えられることから、コロナ禍でさらに需要が高まっています。

 

本記事では、バンライフの魅力、メリットについて詳しくご紹介します。

 

バンライフとは?

バンに必要最低限の荷物や調理道具を積み、移動しながら生活するスタイルを指します。バンライフを実践する人は、バンライファーと呼ばれます。バンライフは、ラルフローレンのコンセプトデザイナーであったフォスター・ハンティントン氏が作った造語です。

 

フォスター・ハンティントン氏は、忙殺されるような日々から脱却するため、2011年ごろに家を捨て、バンで生活することを決めました。その日々の様子を「A Restless Transplant」というサイトに記録することにしました。その後、行く先々で知り合った同じようにバンライフをしている仲間と出会い、アメリカ西海岸でムーブメントが起こります。Instagramでは、#vanlifeというハッシュタグ投稿が500万以上になるなど、世界的に実践している人が増加していることが伺えます。

バンライフと車中泊の違い

バンライフと車中泊の違いは目的です。バンライフは、家を持たずに車を生活拠点にする、あるいは家を所有しつつも、車が生活の中心になるライフスタイルです。それに対して車中泊はサーフィンやキャンプ、スキーをおこなうために実践されるものです。また、バンライフは数ヶ月など長期にわたりますが、車中泊は週末のみ、あるいは数日間と短期です。

バンライフが普及する背景

ここまで、日本でバンライフが注目されるのには、どのような背景があるのでしょうか。

テレワーク環境の普及・整備

バンライフを続けるには、場所や時間にとらわれないワークスタイルの実現が必要不可欠です。新型コロナウィルスの感染拡大にともない、皮肉にもテレワークが広く浸透しました。これがバンライフの流行をあと押しした形となり、Z世代やミレニアム世代である20〜30代の若者を中心に、実践する人が増加しつつあります。

 

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ソーシャルディスタンスとの親和性

電車やバスなどの公共交通機関では、時差通勤で密を回避できますが、完全に人との接触を遮断できません。しかし、バンライフは家族以外と接することはなく、プライベートな車内で過ごせるため、感染リスクも最小限に抑えられます。この点にメリットを感じ、バンライフを始める方も増えています。

 

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バンライフの魅力・メリット

バンライフには、自然の景色を味わえる、好きなときに行きたい場所に行けるなど、日常生活では味わえない体験、ライフスタイルが実現できます。

好きなときに行きたい場所に行ける

一番の醍醐味は、やはり自由に行きたい場所に行けることではないでしょうか。今日は金沢、明日は名古屋、その次の日は京都など……。時間が許す限り、移動しながら生活ができます。また、公共交通機関の通っていない港町や山合にある村などでのんびりし、昼は自然の風景を見ながら現地のご飯を食べ、夜は星空をみて過ごす、刺激的な日々を送ることができます。

固定費の削減

固定費で大きな割合を占めるのは、家賃や水道光熱費です。バンライフでは、これらの固定費をほぼゼロに抑えられるため、生活費を稼ぐために日々忙殺されるといったことも起こらず、好きな場所に行きたいときに行き、好きなときに仕事をするという自分のペースに合ったライフスタイルを実現できます。

災害に強い

自宅が倒壊して怪我をする、火事に巻き込まれるなどのリスクは低くなります。また、女性にとっては不安な避難所での生活も、バンライフであれば安全やプライベートが保たれた車内で過ごすことができます。

トラブル対処能力が身につく

バンライフでは、日常的にガス欠、故障、大雪など、さまざまなトラブルに見舞われます。それを一つずつ対処し、クリアしながら日々暮らすことになります。まさに自然を肌で感じ、自然とともに生きてるため、災害を含めたトラブルに対処する能力が格段に上がります。

バンライフのデメリット・問題点

バンライフは魅力やメリットだらけと思いがちですが、要は家がなく、ヤドカリのように仮住まいのままです。毎日試行錯誤を繰り返しながら暮らすタフさが求められます。

故障のリスク

常に、車で生活をしていれば、ときには故障することもあるでしょう。車は住む場所同然であり、修理が終わるまでは、宿泊場所や入浴できる場所を新たに探す必要があります。

 

行動の制約がある

行きたい場所に行き、疲れたら途中の道端で朝を迎える……では、普段どおりの生活を安全に送ることはできません。銭湯やコインランドリー、レストラン、公衆トイレ、こういった場所を常に探し続けなければなりません。

 

意外と費用がかかる

 先にも書いたように、お風呂や洗濯はスパや銭湯、ホテルなどを利用する必要があります。家賃や光熱費が浮くとはいえ、バンライフに使う車の給油、メンテナンス、車検、自動車税など、意外と費用がかさみます。

 

家族との距離をとるのが難しい

四六時中、車の中で一緒に生活しているため、自分の時間がとれず、ストレスが溜まりやすくなります。お互い、定期的に、一人になれる時間を定期的に作ったり、一ヶ月に1回、民泊やホテルに長期滞在するなど、メリハリをつけることが大切です。

 

法整備が追いついていない

バンライファーの多くは、寝る場所として道の駅を使うことがあるそうですが、法律的に宿泊目的での利用はNGですが、仮眠はOKという規約になっており、グレーゾーンです。このように、バンライフを対象とした法律はまだ整備されていません。

 

道の駅によっては、明確に車中泊をNGとしているところもあり、事前に情報を収集しながら、日々の宿泊場所を探さなければなりません。

 

気温の変化を受けやすい

バンライフでは、気温の変化を受けやすいです。夏は高温の太陽が降り注ぎ、クーラーをつけていても灼熱のような暑さになります。また、冬の夜は寝られないほどの寒さが襲いかかります。季節に合わせて、避暑地や避寒地に行くなど計画的に行動をしないと、日々の生活すらまともに送れなくなります。

 

公的書類(住民票など)の取得が面倒

住所不定だと、公共料金の支払い、納税、郵便物の発送など、様々な面で不都合が生じます。そのため、バンライファーの多くは、実家またはADDressやLiving Anywhere Commonsといった長期滞在施設などを仮住所としています。もちろん、公的書類の取得や手続きをする場合は、その住所まで戻らないといけません

 

バンライフで、収入はどうやって作る?向いている仕事・向いていない仕事

バンライフでは、山間部を走っていて電波が悪く、仕事が思うように進まなかったり、車がガス欠したりなど、予期せぬハプニングが起こります。そのため、出勤の必要がなく、時間も比較的融通が利く仕事が向いています。

 

  • ライター
  • プログラマー
  • デザイナー
  • セミナー講師
  • トレーダー

 

これとは反対に、一箇所にとどまらなければいけない仕事、定期的に出勤しなければいけない仕事は、バンライフをするのは現実的ではありません。

 

  • ジムトレーナー
  • 医師
  • 弁護士
  • 教師

まとめ

バンライフは、カルチャーの一つとして、とても華やかなものとして、紹介されることが多いですが、その実はとてもハードです。毎日、寝る場所やお風呂に入る場所、洗濯をするコインランドリーを探すなど試行錯誤のなかに身をおくことになります。人によっては、「家でじっとしていたほうがよかったな」と考える人もいるでしょう。しかし、「毎日がサバイバルで生きている実感を得られる」と考える人であれば、バンライフのデメリットもスパイスとして前向きにとらえ、楽しむことができるかもしれません。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等