DXに続き、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)という経営手法が注目されています。SXとは、社会全体の課題を踏まえ、中長期的な価値創造を高めていく、持続可能性を重視した経営を指します。なぜ、SXが注目されているのか、概要や背景について解説します。

 

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)とは?

SXとは、企業が短期的な売上を追求せずに社会全体の課題を踏まえ、中長期的な価値創造を高めていく持続可能性を重視した経営を指します。

 

SXは、2019年から経済産業省が主体で始まった「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」のなかで初出した言葉で、そこでは下記のように定義されています。

 

「企業のサステナビリティ」(企業の稼ぐ力の持続性)と「社会のサステナビリティ」(将来的な社会の姿や持続可能性)を同期化させる経営や対話、エンゲージメントを行う経営の在り方や対話の在り方

 

参照:「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」中間取りまとめを行いました

 

グローバル化、IT技術の発展、異常気象の発生などにより、会社を取り巻く環境は今まで以上に変化に富んでいます。企業の営利活動とESCの両立を行って、経営のあり方を検討する必要があります。

SXとDXの関係性

SX、DXともに既存のシステムを変革する意味合いがある点では共通していますが、DXはあくまでデジタル技術を用いて、ビジネスモデルや業務そのものを改革する取り組みです。それに対し、企業のサステナビリティとESG(環境・社会・ガバナンス)の両立がキーポイントとなります。

関連記事:デジタルトランスフォーメーション(DX)で働き方改革|分かりやすく解説

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)に必要な3つの要素

SXを満たすには、どのような要素が必要なのでしょうか。「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」によれば、下記の3つを挙げています。

 

企業の稼ぐ力を強化する

稼ぐ力とは分解すると、企業の強み、競争優位性、ビジネスモデルを中長期的に強化し続けることです。たとえ、会社が価値のある取り組みをしていても、存続ができなければ意味がありません。日本企業は、世界的に最高峰の技術がありながら低収益といわれています。

 

少し前のデータにはなりますが、2012年の国際比較データではアメリカは22.6%、欧州は15%、それにたいし、日本は5.3%と群を抜いて低いのがわかります。

 

参照:持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~

 

このような状況を打破するためには、デジタル技術を駆使し、ビジネスモデルの転換や生産性向上を高め、企業価値を高めることが重要です。

 

社会のサステナビリティを経営に反映させる

ここ半世紀で、パソコン、スマートフォン、SNSが登場し、今では電気、水道、ガスと同様のインフラとしての地位を確立しています。今後は、ここまでの半世紀での進化スピードを凌駕する勢いで技術発展をするでしょう。このように、VUCAと呼ばれる先の読めない不確実なビジネス環境では、常に想定外の変化(良い変化・悪い変化)が起こることを念頭に置きながら、投資家と対話を重ねていき、事業経営を実施する必要があります。

関連記事:VUCA(ブーカ)の意味とは?|激変する時代を生き抜く組織のあり方・働き方

 

企業経営のレジリエンスを高める

レジリエンスとは、急激な変化や逆境に見舞われても自律的に立ち直る能力を指します。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に注目されている言葉です。ここでいうレジリエンスとは、想定外の事態におけるリスク対応を指しています。例えばBCP対策を講じたり、デジタル技術を活用した柔軟な働き方や採用など、変化に適応するために柔軟性のある組織経営がSXでは必要不可欠です。

 

関連記事:レジリエンスとは|変化の激しいビジネス環境を、しなやかに強く生き抜く力

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)への転換が注目される理由

なぜ、今DXに続き、SXという言葉が注目され始めたのでしょうか。

急激なビジネス環境の変化

IT技術の発達、グローバル化などにより、ビジネス市場のライフサイクルは短期化し、先の読めない非連続な変化に富んだ時代に突入しています。その最たる例として、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。オリンピック開催に伴い、インバウンド需要は高まりを見せ、飲食店、ホテル、エンタメ業は成長市場とされていましたが、状況は一転しました。2020年に帝国データバンクが行った調査によれば、飲食店事業者の倒産は 780 件で、過去最高の件数となっています。

 

参照:飲食店の倒産動向調査(2020 年)

 

また、東京商工リサーチの調査でも、大手チェーン居酒屋にカテゴライズされる上場主要企業13社の店舗数は2020年の1年間で12.5%減少していることがわかっています。

 

参照:大手居酒屋チェーン 1年間で店舗数12.5%減少、コロナ影響が深刻

地球資源の枯渇

人々の生活を豊かにするため、今までさまざまな地球資源を消費し、経済や文化、文明を発展させてきました。しかし、地球資源は永続的に発生するものではなく、いつか枯渇します。

 

エネルギー資源別にみると、掘削をして利用できる限界年数は、石炭は118年、ウランは106年、天然ガスは59年、石油は46年とされています。あと、100年前後で人類にとって不可欠なエネルギー資源は底を尽きてしまいます。

 

限られたエネルギー資源を巡って戦争や略奪といった悲劇を辿らないためにも、繰り返し生産できるエネルギー資源に置き換えたり、限られた資源の再利用をしたりなど、エコロジーな取り組みが個人だけでなく、企業にも求められています。

利益追求主義の限界

会社は営利を追求する活動を行う法人格でありますが、利益を追求するあまり、長時間労働の蔓延、食品ロス、途上国の労働搾取など、法律に違反しないがモラルには反する「グレーゾーン」のアクションが実行されることもあります。

 

しかし、先述したように、利益を追求するがあまり、われわれが生活する地球環境が破壊されてしまっては矛盾した結末を迎えます。これからは、利益追求だけでなく、環境や社会やガバナンス、いわゆるESGとのバランスを図りながら、事業を推進していく必要があります。

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)の成功に欠かせない「ダイナミック・ケイパビリティ」

ダイナミック・ケイパビリティとは、予測できない変化に対し、企業が迅速かつ柔軟に対応する能力を指します。

 

ディビッド・ティース氏が発表した論文によれば、ダイナミック・ケイパビリティには脅威や危機を察知する「センシング」、チャンスをとらえ、今ある資産やノウハウを再構築して優位性を作る「シージング」、環境に応じて組織全体を変革する「トランスフォーミング」の3つの要素が不可欠とされています。このサイクルを回すことで、改善だけでなく、変革しながら組織を成長へ導くことができます。

まとめ

事業活動は、株主やカスタマーだけのものではありません。SXでは、従業員、従業員の家族、地域、地球環境など、あらゆるステークホルダーが幸せになれるように努めることが求められます。まだ、一般化していないトピックではありますが、これからDXと同様に浸透していく概念になるでしょう。ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等