人材育成の領域でよく耳にするリフレクション。英語で「reflection」と書き、直訳すると「反響」「反映」という意味になります。リフレクションは単なる振り返りではなく、次の行動につながる気づきを生み出すためのアクションであり、フィードバックや反省とは異なるものです。本記事では、リフレクションの意味や得られる効果、進め方などについて解説いたします。

リフレクションとは?

リフレクションは、英語で「reflection」と書き、直訳すると「反響」「反映」となります。人材教育・育成のシーンでは、仕事の進め方、業務に対する向き合い方などについて省察することを指します。リフレクションは、マサチューセッツ工科大学の哲学者ドナルド・ショーン氏が提唱した理論です。

また、ドナルド・ショーン氏は、リフレクションを「行為にもとづく省察(reflection on action)と「行為の中の省察(reflection in action)」の2つに分類しています。行為にもとづく省察とは、すでに行ったことに対し、良い面、悪い面に関して振り返りを行うことを指します。それに対し、行為の中の省察は、文字通り、現在進行中で経験していることをその場で振り返っていくことを指します。より主観的な視点が得られます。

リフレクションとフィードバック、反省の違い

似た言葉に、フィードバックと反省があります。まず、フィードバックは、「課題や結果を被評価者からヒアリングし、それに対しての改善策を検討しアウトプットすること」を指します。リフレクションとは違い、評価対象者が他人となります。

反省は、意味としては非常に近いですが、反省はあくまでも改善点や間違いなどを振り返り、それを次回に活かすことであり、リフレクションは悪い面だけでなく良い面も振り返ります。

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リフレクションで得られる効果

リフレクションを行うと、どのような効果が得られるのでしょうか?

内省力が高まる

多忙な日々を過ごす中でも、一つ一つの業務にささいな気づきを見出し、自問自答できるようになります。ただ、成功したor失敗したで終わらせず、なにがダメだったのかor良かったのか、また次はどうすればよかったのかorどうすればもっとよくなるか、と全ての行動を無駄にせず、自分に深く問い続けることが可能となります。

自律性の向上

リフレクションができるということは、つまり「自分で考える」ことが身についている証拠です。常に自分のとった行動、考えに対してリフレクションをすることで、他人から言われたことを実行するだけではなく、そもそもなぜこれを頼まれているのか、その背景までを読み解き、自分の意志・考えで行動できるようになります。

業務の効率化

リフレクションによって、従業員が改善意欲や向上心が芽生えることで、組織全体の問題意識に好影響を与え、それが結果として会社全体の業務効率化に結びつきます。

リフレクションの進め方

リフレクションは、主に「出来事」「環境」「自己の行動」の3つのプロセスで進めていくのが基本となります。

出来事の振り返り

自分が起こした行動でどのような出来事が起こったのかを客観的に正確に捉えます。ここでは、他者、自己による評価は一旦横に置き、出来事そのものを棚卸ししていきます。

環境を振り返る

出来事の良し悪しを決めた要素と関連する周囲の環境をリフレクションします。例えば自身の職務、役割、組織全体の体制、ビジネス環境、身近な上司、部下が求めていることといった環境について、様々なレベルで振り返ります。

自己の行動を振り返る

出来事の良し悪しを決めた要素と関連する自分の価値観や行動などをリフレクションします。自己の行動の先にある、行動をした理由、背景、感情などを俯瞰的に読み解いていきます。このステップが最も苦痛ですが、自分と正確に向き合うことで、新しい可能性を見つけることができます。

リフレクションで活用できるフレームワーク

ここでは、リフレクションで活用できるフレームワークについてご紹介します。

KDAのフレームワーク

KDAとは、「Keep(保つ)」「Discard(切り捨てる)」「Add(追加)」の頭文字をとった言葉で、3つのプロセスから経験、出来事を振り返ります。

【具体例:作業効率をテーマにした場合】

・Keep(保つ)…今後も引き続き実践していくこと(例:1時間起きにストレッチをする)

・Discard(切り捨てる)…今後やめること(例:ごはんを食べすぎない)

・Add(追加)…新たにやったほうがよさそうなこと(例:難しい仕事は早いタイミングで相談する)

YWTのフレームワーク

YMTとは、「Y(やったこと)」「W(分かったこと)」「T(次にやること)」の3つの軸で振り返るフレームワークで、経験にフォーカスして検討する場合に有効です。

Yでは、他者、自己による評価は排除し、純粋に事実、アクションだけを記載します。その後、WではYから得られた気づき、学びを書き出し、目標を達成できた/できなかった理由や背景などを深堀りします。最後に、TではYを踏まえて、ネクストアクションを考えます。Tでは、できれば粒度は小さく、より具体的な内容を記入するよう意識しましょう。

経験学習モデル

①経験(Concrete Experience)、②省察(Reflective Observation)、③概念化(Abstract Conceptualization)、④実践(Active Experimentation)の4つのプロセスで振り返るフレームワークです。

まず、①で成果や具体的なアクションについて整理します。その後、②で、さまざまな観点からその経験がうまくいった理由、ダメだった原因などを振り返ります。②では、新しい発見や意味を見出すことを目的とします。③では、②で得た気づきを他のシーンでも活用できるよう、セオリー化していきます。ここが最も難しいですが、特に書き方などを気にせず、重要なエッセンスだけを残すような意識で書き出しましょう。最後の④では、③で決めたセオリーに基づいて、次行うアクションを決めます。

LAMDAサイクル

Look(見る)、Ask(省察する)、Model(概念化する)、Discuss(議論する)、Act(実行する)の5つのプロセスで振り返るフレームワークで、PDCAの発展版とも。PDCAとの大きな違いは、現場主義的かつ、自分以外の他者の意見を参考にしながら、作り上げていく点です。

リフレクションの企業事例

最後に、リフレクションを実際に導入している企業事例についてご紹介します。

面白法人カヤック

面白法人カヤックでは、評価制度として「360℃フィードバック」を採用しています。自分が取り組んだことを専用サイトに記入すると、他のメンバーからフィードバックを貰える仕組みになっています。ここにも、一つのリフレクションが見られます。またミドルマネージャーの育成プログラムで行われる「リフレクションラウンド・テーブル」では、最近の起出来事について話す機会があり、聞いているメンバーはそれに対し、気づきを促すような質問を投げかけます。それにより、メンバーが次に繋がる新しい発見を得られる機会としています。

富士通マーケティング

カナダのマギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授が開発した研修プログラム「Coaching Ourselves(コーチング アワセルブズ)」を、2008年より幹部社員向けに継続的に実施しています。元々、ビジネス環境の変化によって、ミドルマネージメント層に大きな負担がかかっていることが現場課題としてあがっていました。そこで、ミドルマネージメント層の育成として、導入が実施されました。Coaching Ourselves(コーチング アワセルブズ)では、内省や議論を通して、新たな気づきや視点を増やせるだけでなく、組織間の交流も促進します。その結果、現場全体の活性化、組織間の連携が強化されるなど、目に見える導入効果が出ています。

まとめ

ビジネス環境が大きく変化する中では、自律性を持った人材の存在が必要不可欠です。自律性を高めるには、リフレクションを通して、内省する習慣をつけてもらうこと重要です。ぜひ、自社でも研修やワークショップなどでリフレクションを取り入れてみましょう。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等