近年、話題となっているデジタルトランスフォーメーション(DX)ですが、定義があいまいかつ広義的のため、正しく理解している人は少ないかもしれません。本記事では、デジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されるまでの経緯や定義、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって今後、ビジネス環境はどのように変わるのかについてご紹介します。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン氏が提唱した概念です。企業がデジタルテクノロジーを取り入れ、業務や働き方などを抜本的に改革する取り組み全般を指します。経済産業省の「DX 推進ガイドライン」によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義されています。

 

上記にもあるように、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が指す意味は幅広く、業界や企業によって様々な解釈がなされています。一部では、「IT化」と解釈しているケースがありますが、従来のオンライン化とは一線を画します。あくまで、IT化は情報化やデジタル化そのものが目的であるのに対しデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は情報化やデジタル化を使い、組織や企業、業務そのものを変革させることにあります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、日本そして世界でどのくらい浸透しているのでしょうか。アビームコンサルティング株式会社の調査によれば、年間売上1,000億円以上の企業のうちわずか7%しかデジタルトランスフォーメーション(DX)に関連する取り組みが成功していないという結果が出ています。

 

参照:日本企業のDX取り組み実態調査|アビームコンサルティング株式会社

 

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みのなかでも最も取り組みのハードルが低いとされる「業務の効率化による生産性の向上」でも、「既に十分な/ある程度の成果が出ている」と回答した企業は30%程度、また「既存製品・サービスの高付加価値化」では10%程度となっています。

 

参照:IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

 

では、海外の状況はどうなのでしょうか。富士通が行った調査では、9ヵ国の回答者の87%が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の検討、試行、実践を行ったと回答しています。内訳としては、「成果が出た」が36%、「実践中」が39%、「試行中」が10%、「検討中」が2%となっています。

 

参考:富士通 – グローバル・デジタルトランスフォーメーション調査レポート 2019

デジタルトランスフォーメーション(DX)とSociety5.0

Society5.0は、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く新たな社会を指す言葉で、内閣府の第5期科学技術基本計画で提唱されました。

 

情報社会では、縦割り的に知識や情報が共有され、情報格差が生まれることが課題となっていました。Society5.0では、全ての人やモノがインターネットを介してつながり、難しかった課題や問題を効率的に抜本的に解決します。このようなSociety5.0を実現させるには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が必要不可欠です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を語る上で外せない「2025年の崖」とは?

「2025年の崖」は、2018年9月に経済産業省が公開した「ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(以降よりDXレポート)」で初出した言葉で、さまざまな企業で、レガシー(既存)システムが事業部門ごとに管理され、問題がブラックボックス化・複雑化しています。この状況を打破できない場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が発生し、反対にデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現できた場合は、GDPが130兆円押し上がるという試算がなされています。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる背景

なぜ、これほどまでにデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されているのでしょうか。

レガシーシステムの限界

「DXレポート」によれば、2025年になると、21年以上稼働している基幹系システムが60%を占めるといわれています。

レガシーシステムが生まれる要因としては、システム内部構造の複雑化や老朽化による問題のブラックボックス化、ベンダーやSIer(エスアイアー)任せのスキル不足、スキルやノウハウの属人化などが挙げられます。早急にレガシーシステムから新しいシステムへの移行が必要であっても、運用可能である限り、優先度の高い業務として取り組まれません。また、抜本的な改革には多額の費用、また改修期間中の機会損失や失敗のリスクもあり、事態が進捗しないのが現状です。長年放置してしまうと、レガシーシステムサポートの終了、ベテラン技術者の退職・引退なども重なり、サイバーセキュリティの被害に遭う危険性も高まります。

デジタル化によるビジネス環境の変化

VUCAの時代といわれるように、ビジネス環境は日々めまぐるしく変化しています。多様化する顧客ニーズをデータとして収集し、成功した企業「GAFA」がその最たる例でしょう。かつてデータは、万が一のためのバックアップ機能しか果たしませんでしたが、存在するデータは膨大になった上、AIなど自動学習できる技術が普及したことで、膨大なデータを活用した、いわゆる「データドリブン経営」が可能となりました。

 

デジタル競争に取り残されないためには、レガシーシステムから脱却をはかり、膨大なデータを収集・処理できる新しい仕組み・システムを導入・構築することが肝心です。

 

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デジタルトランスフォーメーション(DX)と働き方改革

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、組織や業務だけでなく働き方も変革します。

時間・場所などの制約からの解放

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、2020年はオンライン会議ツール、ウェブ上での契約締結、請求書の郵送自動化といったITツールが急激に普及しました。それによって、時間や場所などの制約から解放された人も多いでしょう。「どこでもいつでも仕事できる」状況が確立したことで、育児や介護、病気療養のため出社できずにやむなく休職・退職していた人材も、自分の事情やペースに合わせてフレキシブルに働けるようになります。

 

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業務の効率化・自動化

近年は、RPAと呼ばれるツールに注目が集まっています。RPAは(Robotic Process Automation)の略で、定形作業を自動化する技術をいいます。このように、データ収集や分析、営業活動など、人が行っていたオペレーションを、AIやRPAといったツールによって自動化されることで、注力すべき業務に集中できます。業界の最新動向を常にウォッチしつつ、トレンドに合わせてフレキシブルにビジネス展開を進めていくことが可能となります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入に必要なステップ

最後に、経済産業省の「DX 推進ガイドライン」を参考に、要点をかいつまんで導入に必要な手順・ステップを解説します。

経営戦略の策定

変化の激しいビジネス環境において、自社のビジネスにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、どのようなビジネスモデルを構築し、経営するか指針を策定します。

DX推進のための体制構築

策定した経営戦略やビジョンから逆算し、各事業部門と連携し、DX推進のための体制を構築します。各事業部門で仮説検証のプロセスが設計されていなければ、やがてDX推進は形骸化します。方向性などを適宜修正する推進事業部「DX推進部門」の設置も必要です。

既存システムの見直し・移行

体制が構築されたら、既存システムの見直しを行います。デジタルトランスフォーメーション(DX)では、事業部ごとに個別管理するのではなく、全社横断的にデータ活用ができ、かつ全体最適になるよう、柔軟性のあるシステム構築が不可欠です。現在の既存システムのうち、複雑化・ブラックボックス化している部分を明確化し、システムの整理や廃棄といった取捨選択を行います。

まとめ

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、「緊急性は低いが重要な改革」です。今すぐ取り組まなくてもさほど大きな問題にはなりませんが、レガシーシステムのブラックボックス化・複雑化はセキュリティリスク、運用コストの膨大化など、長きに渡ってさまざまな問題を引き起こします。

 

これを機に、自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等