セルフエフィカシー(自己効力感)は、アルバート・バンデューラ氏が提唱した理論です。 目的に向けて遂行できると自分自身の可能性を認知している状態のことで、従業員のモチベーションの変化や業務効率の改善などとも深く関係しています。 本記事では、まず簡単にセルフエフィカシー(自己効力感)とはそもそもどういう概念か、その後セルフエフィカシー(自己効力感)を高めるための方法について解説いたします。

セルフエフィカシー(自己効力感)とは?

セルフエフィカシー(自己効力感)は、カナダの心理学者、アルバート・バンデューラ氏の「社会的学習理論」で登場した言葉で、ある目的に向けて遂行できると自分自身の可能性を認知している状態を指します。バンデューラ氏自身は、「ある特定の成果を生み出すために必要な一連の行動を体系化し、それを遂行する能力についての信念」と定義しています。

<参考:自己効力感の向上プロセスに関する研究ー人事社員を対象にしてー>

https://www.b.kobe-u.ac.jp/stuwp_files/2013/201309a.pdf

バンデューラ氏自身は、「perceived self」または「efficacy belief」などと訳していますが、現在はセルフエフィカシーという言葉が定着しています。 例えば、人気が高く倍率の高い会社への転職をチャレンジするときに、「自分なら受かる」と思うことができていれば、その人は自己効力感が高い状態、「自分には無理だ」と思っていれば自己効力感が低い状態と言えます。

セルフエフィカシー(自己効力感)と社会的学習理論

「社会的学習理論」は、1961〜1963年にかけてバンデューラ氏が行った「ボボ人形実験」によって得た仮説であり、「他社の影響を受け、慣習や行動、価値観をインプットする理論」です。

理論の下敷きとなった「ボボ人形実験」では、大人がボボ人形に対し特定の行動を行い、その様子を子供に観察させます。その後、子供がとる行動がどう変容するかを分析する実験ですが、ボボ人形に対し、殴るなどの乱暴な行動を働いた親の様子を見た子供は、少なからず影響を受けると、親の行動が子供の行動選択に影響を与えることが明らかになりました。

社会的学習理論では、「結果要因」「先行要因」「認知的要因」の3つが人間の行動を決定する要因としています。そして、このうち先行要因のうちの「予期機能」には、「効力予期」と「結果予期」の2つがあるとされています。

効力予期

望む結果のために必要なアクションを自分自身が遂行できるという予期機能。

結果予期

過去の経験や知識に基づき、行動を起こした先の結果を推測する予期機能。

セルフエフィカシー(自己効力感)とセルフエスティーム(自己肯定感)の違い

最も混同しがちなのが、セルフエフィカシー(自己効力感)とセルフエスティーム(自己肯定感)の違いです。

セルフエスティーム(自己肯定感)は、日本語で自尊心、自尊感情、自己肯定感などと訳されます。自分自身を尊重し大切にする気持ち・態度のことを指します。

それに対し、セルフエフィカシー(自己効力感)は未来の目的に対し、自分なら遂行できるという自信のことです。

似ているようですが、2つは性質は大きく異なります。 セルフエスティーム(自己肯定感)は、うまくいくいかないに関わらず、ありのままの自分を受け入れる姿勢であるのに対し、セルフエフィカシー(自己効力感)は、自分の目的遂行力に対する自信になります。なので、自己肯定感と自己効力感はそれぞれ別の感情であり、関連性はありません。

セルフエフィカシー(自己効力感)の3つのタイプ

セルフエフィカシー(自己効力感)は、効力を発揮する対象や状況によって3つに分類することができます。

自己統制的自己効力感

一般的に言われる自己効力感のことで、自身の行動をコントロールすることを目的とした自己効力感を指します。失敗の挫折から立ち直って再び挑戦したり、失敗のプレッシャーに負けることなく、集中を研ぎ澄ますことができます。

社会的自己効力感

対人関係に関する自己効力感のこと。親戚や友人、知人、会社の同僚や上司と良好な人間関係を築けることを心から信じており、最もビジネスにおいて重要な自己効力感です。

学業的自己効力感

学校など学業に関する自己効力感のこと。目標のために必要な資格取得の勉強を粘り強くこなせる、学術書や専門書など、難しい言葉や表現も理解することができるなど、学習に前向きな姿勢をとることができます。

セルフエフィカシー(自己効力感)の尺度はどのように決定される?

渡辺三枝子著の「新版 キャリアの心理学 キャリア支援への発達的アプローチ」によれば、セルフエフィカシー(自己効力感)の尺度は、「大きさ」「一般性」「強さ」の3つの要素で決定されるとしています。

大きさ

大きさは、課題を難度順に配置した際に、どこまで実行可能かというボーダーラインを指します。

強さ

強さとは、各課題がどれほど実行可能かという確信度を指しています。

一般性

特定の課題に対し発揮された自己効力感がどこまで汎用性を保てるかを示した程度を指します。 この尺度をより正確にシステマティックに測れるのが、坂野雄二氏と東條光彦氏が1986年に開発した一般性セルフエフィカシー尺度(GSES= General Self-Efficacy Scale)です。

「失敗に対する不安」「行動の積極性」「能力の社会的位置づけ」の3カテゴリ、合計16の質問によって、自身のセルフエフィカシー(自己効力感)認知を顕在化できます。

このような図を入れると、よりわかりやすくなるかと思います

引用元:https://achievement-hrs.co.jp/ritori/?p=2307#outline__5

セルフエフィカシー(自己効力感)が高いと何が変わる?

では、セルフエフィカシー(自己効力感)が高まると、働き方や価値観、考えにどのような影響を与えるのでしょうか?

まず、自分なら達成できるという感覚を持っているため、困難な問題やトラブルが起きても、すぐ立ち直り、再び立ち向かうことができます。ポジティブに捉えることができるため、やってみた結果が失敗だったとしても、その失敗から学習し、次のアクションに活かします。

アクションによって得られた知見によって、次の行動の精度は上がるため、成功体験が増え、自信がつく…というように、好循環のプロセスに入りやすくなります。 自己効力感と主体性は強く関連しています。主体性とは「自分の意見を表明する」ことであり、自信、ポジティブさが強く作用します。 働き方改革によって残業が減少し、フレックスやリモートワークなど、多様な働き方が実現しています。しかし、本質的な改革は「個の意識」です。

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従業員自身が、会社に忖度せず、主体的に自分が実現させたい働き方を提案し、実現させていくことが重要です。 セルフエフィカシー(自己効力感)が高い社員が増えれば、働き方改革も、もっと本質的な意味で良い方向に進むでしょう。

セルフエフィカシー(自己効力感)を高める5つのポイント

セルフエフィカシー(自己効力感)を高めるには、どのような方法が有効なのでしょうか?それは以下の5つに集約されます。

成功体験

最もセルフエフィカシー(自己効力感)が高まる方法が「成功体験」です。自分が設定した目標を遂行した時、その事実に対して自己評価が高まります。次は、より大きな成功体験を目指すことができます。成功体験の積み重ねが増えるほど、困難な問題が訪れたとしても、「今までの経験があるから大丈夫」と自分を奮起させることができ、心折れることなく、突き進むことができます。

代理経験(モデリング)

自分と似たような境遇の人が、上手くいった事実を自分に置き換える方法です。「あの人もできたのだから、自分でもきっとできる」がまさにこの代理経験(モデリング)です。 ただし、実体験は含まれていないため、成功体験に比べると影響力は弱まります。

言語的説得

第三者から、「あなたならできる」という言葉をもらうのが言語的説得です。自己効力感を高めるには、自分の弱みではなく強みを見つけ、伸ばしてくれる、肯定してくれる環境が大切です。

生理的情緒的高揚

生理的情緒的高揚とは、ワクワクやドキドキといった気分の高まりのこと。ただし、気分の高揚感は持続性に乏しく、成功体験、代理体験と比べると効力の範囲が限定的です。

想像的体験

自身あるいは他者の成功をイメージすること。想像的体験をポジティブな方向に上手く作用させることで、代理経験や生理的情緒的高揚の効果を最大限に発揮させることができます。

まとめ

セルフエフィカシー(自己効力感)を高くすれば、「自分が設定した目標を達成する」「困難な課題を乗り越える」ことができるようになります。 まずは、成功体験を着実に積むことを意識しましょう。