越境学習という言葉を聞いたことはありますか?越境学習とは、所属する組織や会社を越境し、異なる場所で新しい学びの機会を得ることを指します。変化への耐性や柔軟な思考を身につけられることから、現在注目されている人材開発の方法です。本記事では、越境学習のメリットや実施方法などについて解説します。
目次
越境学習の定義とは?
越境学習とは、所属する組織や会社を越境し、異なる場所で新しい学びの機会を得ることを指します。英語では、cross-boundary learningと言います。
越境学習の起源は定かではありませんが、日本においてはまだ研究されて日が浅く、2010年代ごろより注目され始めました。
2020年には、経済産業省が全国の学校と共に進めている「未来の教室」事業の一環として、「越境学習によるVUCA時代の企業人材育成プログラム」を立ち上げており、少しずつ越境学習の活用の機運が高まっています。
越境学習が注目される背景
なぜ、これほどまでに越境学習が注目されているのでしょうか。まず1つに、不確実で変化の激しいビジネス環境が挙げられるでしょう。このようなVUCAの時代では、変化への耐性やしなやかさ(レジリエンス)、柔軟でスピーディーなアジャイル思考が求められます。
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しかし、これらのスキルを獲得するためには、社内での人材開発施策では限界があります。環境そのものを変化させ、実践を通して学びや視野を広げる機会を作ることで、各人のマインドセットの変革とスキル向上を促進することができるのです。
もう1つが、イノベーションの創出です。特に、大きな組織では組織構造そのものが成熟化しているために、セクショナリズムが生まれています。専門的な知識を深めることはできますが、俯瞰的に物事をみて、複数の事象を結びつけ、新しい価値を生み出すという機会が生まれにくくなってしまっています。そこで、「レンタル移籍」や「プロボノ」などといった越境学習を行うことで、新しい風を吹き込み、組織を少しずつ変えていくことができます。
越境学習を導入する効果・メリット
越境学習を導入すると、以下のような効果・メリットを得られます。
イノベーションの創出
留学先や留職先など、所属する組織や会社とは異なる環境に身を置くことで、新しい学びや気づきが生まれます。社内にはなかった新しいアプローチや着眼点を取り入れることができ、ひいては社内全体の業務改善や、組織改革につなげることができます。
次世代リーダーの育成
今、どの組織にも求められているのが、会社の一員としての当事者意識を持ち、自発的に動くことができる自律型人材です。明確な答えがなく、それどころか常に答えが変化し続ける環境では、主体的に仮説を立て、模索していける人材の存在が不可欠といえます。
このような次世代リーダーともいうべき自律型人材を育成するには、大きな困難にぶつかる経験が必要です。その1つとして有効なのが越境学習です。
越境学習では、社内とは異なるカルチャーや価値観を持った人々との交流をすることになります。時には自身の力やスキルが通用しないこともあるでしょう。しかし、そのような苦しく辛い経験が、人の責任感や判断力を養わせるのです。
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越境学習の実施方法
越境学習には、様々な方法があります。ここでは、多くの企業で実践されている3つの方法についてそれぞれ解説します。
社内副業
社内副業とは、所属する事業部や部署に籍を置きつつも、異なる事業部や部署で新しい業務を引き受ける働き方です。セクショナリズムが強く作用している大組織では、非常に有効な方法と言えるでしょう。異なるカルチャーや価値観を持つ環境に身を置くことで、新しい着眼点や考えを養うことができます。
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社外留職(レンタル移籍)
社外留職は、会社に籍を置いたまま、他の会社または海外に出向し期間限定で働く制度です。レンタル移籍とも。社外に出るため、自身の本当の力が試されます。越境学習において、注目されている方法の1つで、企業間交流が生まれるだけでなく、協業や連携などの機会も広がります。
プロボノ
プロボノとは、自分の専門知識やスキルを活用して、無償で社会貢献を行う働き方を指します。具体的には、非営利団体(NPO)や中間支援組織での社会貢献活動が主となります。会社の看板ではなく、個人の力が試されます。また、社外留職や社内副業と異なり、幅広く社会との関わりを持つことができます。
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越境学習の導入ポイント
越境学習を導入する際には、下記3つのポイントに留意しましょう。
自発的な越境学習の促進
越境学習は強制的に行うと、期待しているような効果は得られません。むしろ、「義務感」を覚えてしまい、学びに対してのモチベーションが下がってしまいます。効能を得られるどころか、かえって業務効率の低下を招きます。
自発的な越境学習の促進をするには、
- 魅力的な越境学習プログラムを設計する
- 従業員が抱える課題を正確に捉える
ことの重要性を理解し、従業員自ら越境学習を受けたくなるような環境を整備することが重要です。
学びの共有
越境学習に参加しただけで終わらせてしまうと、せっかく得た学びや気づきがその人自身や組織に定着しません。具体的には、発表の場でプレゼンをする、社内向けメディアで体験記を執筆するなど、越境学習に参加した者が振り返り・共有をする機会を設けることで、ナレッジが組織内に蓄積していきます。
成果の可視化
越境学習が、会社の生産性やイノベーション創出にどう結びついたのか、貢献したのか
成果を可視化しましょう。もちろん、定量的な成果は難しいでしょう。なぜならば、越境学習の効果は短期的に現れるものではないからです。
しかしながら、「越境学習をしたことで、会社にこれだけの成果を生み出せた」という成功体験は、今後の越境学習の普及・浸透のカギとなるため、越境学習に参加した従業員の意識変化など、些細なものでも良いので、可視化しておくことが重要です。
終わりに
越境学習は、新たな学びや気づきを得られるだけでなく、自社の課題や強み、また従業員自身のキャリアや仕事観を改めて見つめ直す機会となります。本日紹介した、社内副業や社外留職(レンタル移籍)、プロボノなど、自社にマッチした手段で実践してみてください。
この記事を書いたひと
俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya
1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等