変化の激しい時代、労働人口の減少から、自社の従業員の能力やマインドの底上げをはかるべく、ライフワークバランスだったり、業務時間以外での学習の時間をセットする企業も増えてきています。そんな中で今注目が集まっているのがサバティカル休暇。サバティカル休暇とは、長く在籍している社員に理由関係なく、一律で長期休暇を付与する制度のことを指します。本記事では、サバティカル休暇の概要とメリット、導入企業の事例について解説いたします。

人生100年時代に適合したキャリア形成とは?

医療技術の発展、IT技術の進展により、日本は非常に恵まれた住環境が整っています。実際に、厚生労働省が2018年に行った調査でも、日本の平均寿命は過去最高に到達し、女性が87歳、男性が81歳となりました。世界各国と比較してみても第一位で、先進国のアメリカで女性が81歳、男性が76歳、女性が82歳、男性が79歳と、日本が大きくリードしていることが分かります。

<参照:平成 30 年簡易生命表の概況

同年に別の内閣府が行った調査によれば、2018年時点の日本の人口が1億2,644万に対し、 65歳以上人口は3,558万人と、全人口の28.1%の割合になっています。

<参照:令和元年版高齢社会白書(概要版)

ちなみに、高齢化率が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会といいますが、日本はそれを更に上回る「超高齢社会」に突入しています。先進国で長寿国であるとともに、超高齢社会国でもあり、社会保障における課題はもちろん、一人ひとりが100年時代を見据えて、ライフプランを立てていく必要があります。

それはつまり、今までのように一社に終身雇用をするだけでなく、転職やパラレルキャリア、海外移住などを視野に入れた多様なプラン、さらにセカンドキャリアまで見据えた長期的視点を持つことが重要ということになります。

サバティカル休暇とは?

サバティカル休暇とは、長く在籍している社員に理由関係なく、一律で長期休暇を付与する制度のことを指します。もともと、サバティカルは英語で「研究休暇」を指し、サバティカルリーブとも呼ばれていました。サバティカル休暇では、目的は研究や学習のために限らず、休暇の過ごし方は、従業員自身が決めることができます。

サバティカル休暇は、もともと1990年頃から海外で採用され始めた制度で、フランス、スウェーデンなどでいち早く導入されていました。日本国内では、2018年の経済産業省が主催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、リカレント教育とともにサバティカル休暇について言及しており、このことから、サバティカル休暇に対する関心が徐々に高まっています。

リカレント教育とサバティカル休暇

リカレント教育とは、義務教育が終わって就労してからも、一生涯にわたって学習をし続ける教育システムのこと。リカレントは、直訳すると「繰り返し」「循環」となり、回帰教育や循環教育と呼ばれることもあります。

リカレント教育の発祥であるスウェーデンを筆頭とした欧米では、フルタイムの就学と就労を繰り返すことを前提にしていますが、日本国内では就労を中断し学習するという文化が根付いていないため、夜間学校や短期留学、通信教育など、より広義的な学びの機会まで含みます。しかし、このサバティカル休暇の制度が浸透すれば、本来のリカレント教育を広めることができ、自社の従業員の対応力や知識・スキルの底上げが期待できます。

サバティカル休暇が今日本に必要なワケ

では、なぜ今日本においてサバティカル休暇が求められるようになったのでしょうか? それは、日本の企業のグローバル競争力の維持・強化が一つ大きな目的として挙げられます。

グローバル化社会においては、より変化が激しく予測不能なビジネス環境において、プロダクト開発や事業戦略をたてていく必要があります。企業だけでなく、そこで働く従業員の意識改革、スキルアップなどの必要性も出てきます。より変化に強く、大きな困難にもめげず、目標を達成仕切る人材が今後はより求められるようになるでしょう。

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また、働き方を取り巻く環境も変化しつつあります。ITの発展により、オフィスに出勤する必要もなくなり、場所や時間に囚われず働けるようになりました。その反面、今まで以上に優秀層の人材流出が加速する恐れもあります。サバティカル休暇などを通して、ワークライフバランスを整え、休暇中に家族との時間や自己学習の時間、社外の人との交流の機会を設けることで、従業員のエンゲージメントの向上なども狙えます。

企業側とすれば、サバティカル休暇を導入する際に体制の整備やリソースの補填という課題を解消する必要はありますが、学び続ける人材、意欲の高い人材へと育成することができます。

サバティカル休暇を導入するメリット

サバティカル休暇を導入するメリットは大きく以下の4つがあります。

長時間労働の解消

年次が高い従業員ほど、多くの案件や従業員を抱えており、現実的に休暇をとれない現状があります。休職理由問わず付与することで、有給休暇取得率の改善や、長時間労働の解消が実現できます。

離職率の低下

サバティカル休暇によって、半ば強制的にリソースが不足するため、属人化していた業務の見直しや体制や業務の進め方を再検討する機会となり、抜本的な改善が期待できます。その結果、従業員の疲労やストレスを軽減でき、離職率の低下も実現されます。

新しい知見・スキルを得られる

基本的に、サバティカル休暇は最低でも1ヶ月以上取得できることが一般的で、その期間を活用して、業務とは全く異なる経験をしたり、海外留学をしたりプロボノ社員として別業種の会社で就業したりと、従業員の学習意欲を高めることができます。

企業のブランディング向上

サバティカル休暇を導入することで、福利厚生面で従業員を大切にしている企業として認知され、求職者や世間からの印象を高めることができるだけでなく、優秀な人材の獲得にもつながります。

サバティカル休暇を導入する際の注意点

サバティカル休暇を導入することで、さまざまなメリットが享受できますが、導入にあたってはいくつか注意点があります。

属人化されている業務の見直し

サバティカル休暇は最低でも1ヶ月、長いと1年間の長期休暇となります。その間、どのように体制を整えるのか、どうリソースを補填するか、入念な検討が必要です。業務が属人化していると、現場の従業員で捌ききれず、現場にはストレスと不和が生まれ、業務効率などの面でむしろ逆効果になることも。もし、属人化している業務があれば、この機会に全て棚卸しし、マニュアル化など対策を講じましょう。

休暇取得が取りやすい環境の構築

たとえ、サバティカル休暇を導入しても、現実的に業務が多忙で休暇をとれる状況にないということであれば、やがて制度は形骸化します。ドイツが導入している残業時間などを貯蓄し、その積立分を有給休暇として利用できる「労働時間貯蓄制度」のように、休暇を申請しやすい制度設計が重要かもしれません。

復職後の体制の整備

1ヶ月以上の長期休暇をする場合、問題となるのが復職後のフォローアップです。復職後数ヶ月は、復職後研修を実施したり、また週半分をリモートワークにしたりなど、いきなり復職させるのではなく、徐々に通常の業務に戻ってもらうような体制作りが大切になります。

サバティカル休暇の導入企業事例

最後に、サバティカル休暇を導入している企業事例をご紹介します。

リクルート

リクルートでは、サバティカル休暇という名称は使わず、「STEP休暇」という独自の名称を使っています。勤続3年以上の社員を対象に、最大で28日、長期休暇を取得できる制度です。また、サバティカル休暇を取得する従業員には、応援の意味を込めて一律30万円が支給されます。

富士ゼロックス株式会社

富士ゼロックスには、「失効年次有給休暇積立制度」と呼ばれる制度があります。失効した有給休暇を最大60日まで積み立てられる制度で、特に年次や性別の制限は設けられていません。

株式会社ぐるなび

株式会社ぐるなびでは、勤続5年以上を対象に、3日間の連続休暇を取得できる「プチ・サバティカル休暇」を導入しています。あくまで、新しい学びやキャリアの振り返りに使うという目的が定められており、活動金として2万円が支給されます。

まとめ

サバティカル休暇は、社内体制の整備や復職後の従業員のフォローアップなど、導入する上でハードルが高いのは事実です。3日間という短期間の「プチ・サバティカル休暇」のように、まずは試験導入してみて、自社にマッチした制度かどうか検討してみましょう。