「T型人材」という言葉をご存知でしょうか?ジェネラリスト(一型人材)とスペシャリスト(I型人材)の2つの特徴を併せ持った新時代の人材タイプです。Π型人材やH型人材とともに注目されて始めています。本日は、このT型人材について、またT型人材とともに価値が高まっているΠ型人材やH型人材など新しい人材タイプの種類などについて解説します。

ゼネラリスト(ジェネラリスト)からスペシャリスト。そしてT型人材の時代へ

T型人材という人材タイプを解説する前に、まず日本で求められてきた人材タイプの変遷について、時代の流れとともにおさらいしたいと思います。

ゼネラリスト(ジェネラリスト)からスペシャリストの時代へ

日本には、もともと従来型人材、いわゆるゼネラリスト(一型人材)とスペシャリスト(I型人材)と呼ばれる2つのタイプがありました。ゼネラリストとは、いわゆる日本における総合職にあたる人材タイプのことです。

総合職は、企業において総合的な能力が必要とされる企業の主幹業務に携わる社員のことです。一般職とともに雇用機会均等法によって制定され、女性の就職の選択肢が増えました。 当時は、終身雇用制度が機能しており、転職を前提とせずに1社で総合職でスキルアップし、管理職を目指すコースとして、憧れの職業とされてきました。

 

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しかし、インターネットの台頭によって技術革新スピードが上がり、あらゆる業界の構造が変容しました。専門知識やスキルを持ったスペシャリストの必要性が高まり、システムエンジニア(SE)、Webディレクター、動画クリエイターなど、より専門的な知識を持った人材ほど年収が高く設定され、優遇されるようになります。

 

労働者側の観点からは、バブル崩壊による終身雇用の終焉という背景が影響しています。転職を選択肢の一つとして視野に入れる状況では、ゼネラリスト的なキャリアパスよりも、他社でも活かせるスキルを習得する傾向が強くなるからです。こうして、あらゆる業界において、ゼネラリストよりもスペシャリストのニーズが労働者、雇用者の双方から高まっていきました。

スペシャリストから、T型人材へ

グローバル化、ビジネス環境の変化など、さまざまな要因によって予測不能でかつ不確実性に富んだ時代になりました。今やどのビジネス市場も、いつAIやITに置き換わり、衰退や縮小の道を辿るかは全く予測できません。そのような環境の中では、専門性を持つだけにとどまらず、幅広い知見を併せ持った「T型人材」のようなフレキシブルにアクションを起こせる人材が求められつつあります。

 

2017年に、日経BP総研がオープンイノベーションをテーマに行った調査では、「オープンイノベーションが必要」という回答が91.8%、またオープンイノベーションが必要な理由としては、「1社ではもはやビジネスが作れず、異業種連携が必要」という回答が46%で、半数程度が異業種との連携や越境が必要と考えていることが分かります。

参照:オープンイノベーションに関するアンケート|日経BP総研調べ

T型人材とは?

T型人材とは、ジェネラリスト(一型人材)とスペシャリスト(I型人材)のメリットを兼ね備えた人材タイプを指します。横棒が「知識の広さ」、縦棒が「専門性の深さ」を示しています。 英語では「シングルメジャー」とも呼ばれます。特定の領域で専門性を持ちつつも、専門領域に囚われない幅広い知見があるため、視野が広く客観的かつ業界の慣習や常識にとらわれないアイデアを発想ができます。

他にも色々ある!人材タイプを分類【Π型人材・H型人材・△型人材】

多様性が求められる時代では、T型人材にとどまらず、さまざまな人材タイプが存在します。

Π型(パイ型)人材

Π型(パイ型)人材とは、2つの専門分野を持ちつつも、幅広い知見を持った人材タイプのことで、「ダブルメジャー」とも呼ばれます。T型人材よりも、さらにもう一つ専門領域が加わるため、より希少性の高い人材とされています。

△型(トライアングル型)人材

△型(トライアングル型)人材は、3つの専門分野を持った人材のことで、「トリプルメジャー」とも呼ばれます。T型人材やΠ型(パイ型)人材とは違い、幅広い知識の有無は問われません。

H型(イノベーション型)人材

2つの専門領域を持つ部分に関しては、Π型(パイ型)人材と変わりませんが、H型(イノベーション型)人材は、別領域の専門分野の橋渡し役となります。自分自身がハブ(媒介)となり、イノベーションを起こす人材として注目されているタイプです。

W型人材

W型人材とは、さまざまな知識やスキルを持ちつつも、スペシャリストほど深い見識は持たないが、複数のスキルの掛け合わせの力を発揮できる人材のことです。T型人材の次に位置する人材タイプです。

韮型(にらがた)人材

メルカリグループ全体のコーポレート部門責任者「VP of Corporate」の横田淳氏が考案した人材タイプです。韮という文字のように、横棒と縦棒が無数に増えていくさまを表しています。Π型(パイ型)、△型(トライアングル型)、H型(イノベーション型)に次ぎ、専門領域を3つ以上保有し、かつ別業種の知見を広く持った上で連携していける人材を指します。

 

T型人材がなぜ必要とされている?

ここまで、従来型人材であるI型、一型、そして新型であるΠ型、△型、H型などさまざまな人材タイプについて解説しました。では、なぜT型人材が企業で必要とされているのでしょうか?それには、以下の3つの背景があると考えられます。

技術革新の高速化

インターネットの普及により、年々、技術革新のスピードは上がっています。AI,IoT、VRなど、数十年前では考えられなかった技術・サービスが登場しています。専門性だけでなく、最新の情報や知見をキャッチアップできる「深く専門性を知り、広く知見を得る」T型人材が求められています。

 

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イノベーションの必要性

技術革新のスピードが早まったことで、競争はより激化し、事業開発では柔軟性やイノベーションの必要性が増しています。自分の専門性と視野の広さを兼ね備えたT型人材が、他業種へ越境し、コラボレーションや提携を可能にし、より広がりを持ったビジネスを構築できます。

T型人材に求められる能力・スキル

では、T型人材になるためにはどのような能力・スキルが必要なのでしょうか?

意図的に成長できる力

従来型人材のゼネラリスト(一型人材)とスペシャリスト(I型人材)の両面を兼ね備えるには、現状にとどまることなく、常に新しいことにチャレンジし意図的に成長できる力が必要不可欠です。成長意欲だけでなく、学習意欲や知的好奇心も重要な要素の1つとなります。

正解がない中で答えを掴み取る力

今は、複雑性、曖昧性の高い、いわゆるVUCAと呼ばれる時代です。T型人材は、明確な答えが提示されない環境でも、自分なりの答えを提案できます。ルールを守る側ではなく、ルールを作り出す側として、より主体的に社会と関わりながら仕事ができるのが特徴です。

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アナロジー思考で行動できる力

アナロジー思考とは、全く異なる業種の類似点を発見し、それを組み合わせることで新しい価値を出す考え方で、T型人材が得意とするところです。保有するコアスキルと、幅広い知見を組み合わせることで、シナジーを生み、イノベーションを起こすことができます。

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まとめ

多くの企業では、既存の事業をさらに飛躍的に成長させるためにイノベーションを起こせる人材を求めています。ゼネラリスト(一型人材)とスペシャリスト(I型人材)のハイブリット人材でもある「T型人材」になることで、より自分の市場価値を高めることができるでしょう。とはいえ、T型人材は「一つの専門分野」があってこそです。専門領域における自己研鑽を忘れては本末転倒です。しっかりと、知識を深め、そして広く知見を広げていきましょう。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等