昨今、いろいろな場所で耳にするようになった「パラレルキャリア」。
周りではまだまだ実践している人が少なく、やってみたいけどなかなか一歩を踏み出せない……。今回はそんな方のために、大手IT企業で働きながらコマエカラーで活動しパラレルキャリアを実践されている赤間勝也さんに、パラレルキャリアを始めたきっかけ、本業と両立の秘訣についてお話を伺いました。
社外で新しいスキルを習得できれば、スペシャリストになれなくても自分の市場価値が上がると思うんです
ーまず、学生時代のお話から聞かせてください。どんな学生でしたか?
私の地元は、仙台から車で1時間のところにある加美町という場所で、ほとんど娯楽がなかったんです。当時は引きこもり体質で、ゲームと漫画ざんまいの日々を送っていました。高校は暗黒時代でしたね。大学に入ってからも、あまり社交的になれずに、勉強だけする生活でした。当時は、意識高い系と対極の位置にある意識低い系男子でしたね。
ー今の様子からは想像がつかないですね……。なにか転機があったんですか?
社会人1年目にダイエットに成功して、見た目がガラッと変わって、それで自信を持てたんです。もう一つは、入社当時から部や課の飲み会幹事を任されて、コミュニケーションの場数を積めたことですね。飲み会幹事なんて、大したことないかもしれませんが、引きこもり体質の私からすれば、とてもハードルが高くて。当時は、居酒屋の店員さんも呼べないくらいでしたから(笑)
ー本業ではなにをしていますか?
大手IT企業でセールスエンジニアをしています。企業向けのサーバーやストレージを扱っています。営業さんと一緒に提案したり、営業さんへ細かい技術的な部分をフォローするなど、セールスとエンジニアの橋渡し的な業務を行っています。営業よりは拡販の方がイメージに近いかもしれません。
もともとは、ものづくりがしたくて製品開発の部署に入社したのですが、開発の知識ゼロな上に、最も難しい開発の部署に配属されてしまって、ミスマッチが起こり、カスタマーサポートに異動になりました。そこで5年位働いたのち、今のセールスエンジニアに移りました。
ーパラレルキャリアをするきっかけはあったんですか?
うちの会社には、優秀な人やスペシャリストがたくさんいて、その人たちを追っても勝ち目がないなと途中で気づいたんです。本業のスキルは伸ばしつつ、別の軸でも新しいスキルを身につけられれば、会社の中でスペシャリストになれなくても、市場で見たときに価値が出ると思って、社外でいろいろと動くようになりました。
今振り返ればですが、昔から父親に「サラリーマンになるなら、食いっぱぐれないよう何かスキルを身につけろよ」と事あるごとにいわれていて。父親は小さな設計事務所で働いてて、「技術を身につける大切さ」を身にしみて理解していたのかなと思います。
ーお父さまの教えが今の赤間さんの働き方を作っているのですね。パラレルキャリアでは、どんなことをしていますか(過去も含め)?
社内で幹事をやっていたので、お店の選び方や仕切り方のノウハウをたくさん知れました。なんだかんだ、飲み会幹事って面倒くさいじゃないですか。そこに関しては人より得意だし、皆やらないしじゃあやろうというのがスタートですね。最初はオフ会の開催をしていました。続けていくうちに、自分が主催・集客したイベントで、友だちがたくさんできたり、お客さん同士が盛り上がっているのを見て、人の人生が豊かになるのが見えた瞬間、とても楽しいって思えたんです。そこからイベントの開催にどっぷりハマっていきました。
ーそんな活動をする中で、どのようにしてコマエカラーと出会ったのでしょう?
当時は池袋に住んでいたのですが、田舎で生まれ育ったこともあり、自然が恋しくなって。知り合いに小田急線沿線をすすめられて、狛江という駅を見つけました。狛江の多摩川の景色がきれいで、すぐに心打たれました。まあこれは打算的なんですが、狛江は日本で2番目に小さい市で、だから市民同士の距離感を近く、もっと企画から入り込んでイベントをさせてもらえる団体があるんじゃないかなと思ったんですね。それで引っ越しを決めました。
狛江に引っ越しからしばらく経ったころからかな?自分がやりたいことを調べていたら、たまたまタマリバがヒットしたんです。サイトを見たら、まさに「私のやりたいことと一緒だ」と思って、すぐに参加しました。
ー狛江に住んでから、コマエカラーを知ったんですね。
そうですね。しかも驚いたのが企業ではなく、市民団体がやっているってことです。そこでさらに興味が湧いて、早速ボランティアスタッフとして参加し、もっと深く関わりたいと思い、本メンバーに応募しました。
ーコマエカラーの活動頻度はどのくらいですか?
イベントが近い時期は、毎週ミーティングがあります。それ以外の時期は、隔週でミーティングをしています。ミーティングでは、各々の活動の情報共有を行います。ちょうど1月の時期は、来年の5月に開催する「珈琲参道」の準備が始まっています。
「会社ではできないこと」に、思いっきりチャレンジできる
ーパラレルキャリアをする前とした後でなにか変化はありましたか?
コマエカラーには各業界のプロフェッショナルが集まっています。代表は共同代表で3人いるのですが、それぞれまちづくり、音楽、飲食業と各業界のプロフェッショナルです。他にも、デザイナー、出版の方など……。本業だけの時は会社の世界しか見えてませんでしたが、ぐっと視野が広がりましたね。
「視点」というところで一つ話があって、私の勤める会社はIT企業で、デザインっていう観点に触れることがなかったんですね。イベントはまずお客さんに来てもらうことが大切ですよね。そして来てもらうためには、ビジュアルが大事です。イベントの宣伝ページって見た目がよくないと来たいって思われないことが多くて。私は品質が一番、デザインは二の次と思っていたので、カルチャーショックでした。
ーなるほど。確かに、会社で働いていると自分の業務には詳しいけど、隣の島にいる人の仕事が全く分からないことってよくありますよね。
そうですね。そういう世界にいると、ITよりもさらに具体化された自分が担当している仕事や領域しか見えなくなります。だけど、パラレルワークを通して、自分と全く違う畑の人と接することで、新しい考え方を知れるのは本当に良いですよね。
ーパラレルキャリアで得られるメリット、また反対にデメリットと感じることはありますか?
会社ではできない経験を自分にできるギリギリのラインでチャレンジできることが一番のメリットですね。あとは、さまざまな人と繋がれて人生が豊かになれることかな。
それなりの成果を出そうと思うと、プライベートの時間をそれなりに使わないといけないのがデメリットかもしれませんね。メンバーの中にはお子さんがいる方もいて、本業と家庭、そこに複業が入るわけだから、上手く折り合いをつける必要がありますね。
昔からゲーム好きでしたが、今は一切していません。無理して封印しているわけではなく、ゲームよりもコマエカラーの活動が楽しくなってしまったんです。
ーパラレルキャリアで得た知見は本業に活かされていたりしますか?
以前よりも実現が難しそうなことも、とりあえず提案するようになりましたね。「枠にとらわれずに考えられる」ようになったのは大きいかなと思います。
あと、会社の人に「人たらしになったね」といわれることが増えました。空気を読むというか、人との距離のとり方が上手になった気がします。それはたぶん、飲み会の主催からはじまり、コマエカラーの活動を通して色々な人の考え方を知れたのが大きいです。実際、コマエカラーでは偉い人や年齢が一回り離れている人とフラットな関係で接することも多いんです。だから、会社でもビジネスライクではなく、1人の人として素のままで接せられて、懐に入り込むのが上手になったのかもしれませんね。
ー反対に、本業が複業に活きている場面ってありますか?
イベント開催時における問い合わせやクレーム対応も担当していますが、そこはカスタマーサポートの頃に培った「角を立てずにいい感じに終わらせるスキル」を上手く使っています。
また、コマエカラーには10人ほどメンバーがいて、どうしても共有ファイルの管理が煩雑になってしまって。私の会社ではファイルの管理を徹底化しているので、私が主導になり管理方法をルール化し、きれいに整頓しました。
ー「コマエカラー」ではどのような役割を担っていますか?
ITの専門家としてジョインしているので、主にWebサイトやイベントフォームなどWebに関することを担当しています。といっても、それまでWebサイトを制作したことはなくて……。中学校の授業で学んだプログラミングの知識を頼りに、なんとか制作しました。他にも、協賛金のお願いもしています。
ー営業もされているんですね。営業の経験はありましたか?
未経験でした(笑)だから、最初はいやでしたね……。紙一枚だけでマニュアルもなくて、本業で出版社の営業をしている方に同行して、やり方を学びました。
「タマリバ」のイベントの時は、ボランティアのとりまとめも担当しました。当日のトラブル対応から、60〜70名のボランティアのシフト作成、当日までの連絡を全て1人で行いました。
ー営業に、60〜70人のボランティアの管理に……。本当にさまざまな業務をされているんですね。本業もある中で、ここまで多岐にわたる仕事をこなして、どのように時間管理やタスク管理をしているのですか?
時間管理に関しては、本業のスキルが活きています。IT業界では納期管理のためにWBSをよく使います。なので、それにならって自作のWBS(Work Breakdown Structureの略でプロジェクトのスケジュール管理方法の1つ)で工程管理をしています。
ただ、日中は本業があるので、時間管理だけではどうしようもできないこともあります。その場合は、フリーランスの人に日中出来ない、例えば、お客さんの対応や協賛金の営業訪問などをお願いするなどして、分担しています。
ー1日の時間の使い方について教えて下さい。
平日は19時まで本業の仕事、家に帰ったら12時過ぎまでコマエカラーの業務をしていることが多いですね。イベント直前は深夜まで作業することもありますね。土曜日が毎週ミーティングで、10時から長いと15時まで、計5時間ミーティングすることもあります。
「経験が報酬」。まず興味のあることに飛び込もう
ーパラレルキャリアのイメージできず、最初の一歩が踏み出せない人も多いかと思います。最初はどのようなスタンスで望めばいいと思いますか?
本業で疲れていても、やり続けられる「好きで楽しいこと」を見つけることが大切ですね。実際、コマエカラーの活動で報酬は発生していません。「何を糧(かて)に頑張っているんですか?」ってよく聞かれるんですよ。それはなにかっていうと、イベントをやり遂げた後の達成感なんですよね。それに、努力している感覚はなくて、あくまで好きだからやっているという感じなんですよね。
あと、私のように平日の夜と土日をフルで活動にあてる人もいれば、そうでない人もいて、人によって複業のウェイトは違います。まず、自分がやれる範囲からスタートすることが大切です。気負いすぎると続かないですから。
ーパラレルキャリアをしていると、フリーランスや起業に憧れを持つと思いますが、そのあたりはいかがですか?
フリーランスだと、自分の生活費を稼ぐので精一杯になってしまい、やりたいことを楽しめないと私は思っているので、このパラレルキャリアのスタイルがベストですね。本業という生活の基盤があるからこそ、お金を気にせずに思いっきりできると思うので。
ー最後に、これからパラレルキャリアをしたいと思っている方へ、メッセージをお願いします!
お金を第一に複業を始めないこと。「経験が報酬」だと思っています。最初は無償でもいいから、興味があることに飛び込んでいきましょう!
今回お話を伺った赤間さんのブログはこちら→あかまんやってみる
〈取材・文=俵谷龍佑(@tawarayaryusuke)/編集・撮影=川畑夕子(@yuko_kawabata_)〉
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