IT化の発展により、社会の情勢は不安定に、流れは急速になっています。また、日本では人口減少という喫緊の課題に直面しており、多くの企業では、社員のスキルや価値の最大化、エンゲージメント向上など、さまざまな施策を行っています。フィードバックも、今では被評価者(部下)との信頼関係構築やチームで目標達成するための手段の一つとして欠かせないものになっています。

この記事では、フィードバックの意味、得られる効果、使い方について、わかりやすく解説いたします。

フィードバックとは

フィードバックとは、もともと工学系の言葉で「結果の情報を送り調整する」という意味を持ちます。「帰還」とも言います。ここから派生して、ビジネスでは「課題や結果を被評価者からヒアリングし、それに対しての改善策を検討しアウトプットすること」を指します。基本的に、部下の目標に対する現状確認、軌道修正のためのアドバイス・指摘の意味で使われることが多いです。「FB」と略されて使われることもあります。

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フィードバックとフィードフォワードの違い

フィードバックは、結果に対するアドバイス・指摘であるのに対し、フィードフォワードは、「これから起こる未来に向けた建設的なアドバイス」という意味です。つまりフィードバックは「過去」をフィードフォワードは「未来」を軸に解決策を提示します。

フィードフォワードという考え方が注目されるようになってきた背景には、グローバル化、IT技術の発展によって、先が見通せない時代「VUCA(ブーカ)」になり、自発的に考え動ける人材を社内で育成することが求められてきているためです。

ただし、フィードバックとフィードフォワード、どちらが良いということではなく、木を見て森を見ずにならないよう、この両方の手法をどちらもバランス良く取り入れることが大切です。

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フィードバックの効果・メリット

正しくフィードバックを実践すれば、会社、チーム、個人に様々な効果が期待できます。

メリット1 生産性が高まる・目標の達成

フィードバックをすることで、被評価者は目標に対してより適切な選択をとることができます。また、課題解決能力や自分で思考する力も身に付き、結果として個々の生産性が向上します。

メリット2 モチベーション向上

フィードバックを重ねていくことで、信頼関係が構築され、より密に連携して目標に向かって進むことができます。

メリット3 人材の成長

フィードバックは、被評価者の動機づけに大いに機会となります。被評価者の行動によって得られた成果を正当に評価することで、被評価者のモチベーションはさらに上がり、成長速度を加速させることができます。

フィードバックの使い方と例

フィードバックは、主に上司と部下間で語られる事が多いですが、これはさまざまな関係性において使えます。以下では、フィードバックの活用事例について、上司ー部下、お客様ー会社の2つの関係性で説明したいと思います。

フィードバックの例

【上司から部下へ】

上司:なぜ今回の展示会は人が集まらなかった?

部下:台風が近づいていて天気が良くなかったのと、また近くの会場でも展示会をやっていて、そちらに人が流れたようです。

上司:なるほど。次回からは、台風が来ない時期、また他の展示会情報も調べて開催時期を検討しよう

【お客様から会社へ】

お客様:買ってからすぐ、コップの取っ手がとれてしまった

コールセンター:申し訳ありません。すぐに返金対応させていただきます。どのような状況でとれてしまったのでしょうか?

お客様:電子レンジに入れてから、取り出そうとしたら取っ手がとれてしまいました。

コールセンター:そうでしたか。耐熱性のコップですが、実は600W以上だと推奨されていないのです。その注意書きの表記はなかったので、こちら改善させていただきます。

結果に対して何らかの課題や改善点を吸い上げ、そこから対策を打ち出すことで、本来の目的や進むべき方向に最短距離で進むことができます。

このように、お客様から適宜フィードバックをもらう手法は、近年注目されている「デザイン思考」などのフレームワークにも活用されています。デザイン思考では、プランニングを立ててから、完全なプロダクトをリリースするのではなく、プロトタイプをまず作り、それを市場に出し、ユーザーからフィードバック(反応)をもらうことで、市場のニーズに合ったプロダクトに改良していきます

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フィードバックの使い方

フィードバックは、ただ指摘して責めるものではなく、結果をインプットし改善策をアウトプットし調整・改善するという本来の目的を達成するための手段です。以下の手順で行うことで、より迅速に軌道修正を行え、かついち早く結果に結びつけることができます。

【フィードバックの手順】

・現状把握

・良かった点・課題の洗い出し

・課題を解決するための手段を見つける

・新たな目標設定

フィードバックでありがちなのが、「課題点の洗い出しで終始し、ダメ出しになること」です。次にどうすればその課題を解消できるかが重要であって、課題の洗い出しだけでは、次につながりません。良かった点や次のアクション・目標を決めるところまで含め、はじめてフィードバックの意味をなします。

フィードバックの種類

フィードバックには大きく分けて「ポジティブフィードバック」「ネガティブフィードバック」の2種類あります。

ポジティブフィードバック

ポジティブな言葉で、部下の良かった点を中心にフィードバックします。ポジティブフィードバックの目的は、あくまで評者対象者のモチベーションアップや成長意欲を高めることです。

また、ポジティブフィードバックには、意欲や能力を増幅するフィードバックと、批評者にとって望ましい内容のフィードバックの2種類あります。

改善点はあくまで前向きに解釈し、プラスの言葉で被評価者に伝えていきます。

ネガティブフィードバック

ポジティブフィードバックとは逆に、聞きたくない、言いにくい改善点、課題をダイレクトに指摘するフィードバックのこと。課題解決能力や自走力などのスキルを上げるのが狙いです。

ポジティブフィードバックに比べると、コントロールが難しく、実践者のスキルが問われます。言い回し次第では、被評価者のモチベーションを下げたり、信頼関係を損ねかねないので、ネガティブフィードバックの目的の説明、言葉の使い方には十分な配慮が必要です。

フィードバックの注意点

フィードバックを行う際は、いくつか注意点があります。

客観性・公平性を保つ

フィードバックをする際は、個人の感情、つまり主観的な評価が入らないように十分注意しましょう。主観でフィードバックを行うと、関係性のある被評価者だけが必然的に良い評価になるからです。こうなると不公平感が生じ、会社・チーム全体の士気に影響を及ぼします。

”指導”は禁止

フィードバックの目的は、あくまで現状を把握し、今ある課題を改善してよりよいサービス・会社にすることです。力んでつい被評価者の気になる点を指摘したくなりますが、これはご法度。ただ、当たり散らされる場と被評価者が感じ取れば、信頼関係も崩れ、効果的なフィードバックができなくなります。

具体的にアドバイスする

ポジティブフィードバックでもネガティブフィードバックでも、あいまいな称賛や評価はあまり効果がありません。いつどんな行動がどう良い結果を生み出したのか、具体的にアドバイスすることが大切です。「5W1H」など具体的に伝えましょう。

フィードバックに欠かせないポイント

具体的に伝える

前述したように、フィードバックは「具体的に」が原則です。あいまいなアドバイスは被評価者を当惑させてしまい、むしろ目標から遠ざける逆効果の結果を生む恐れもあります。

行動そのものを評価する

フィードバックの時は、行動自体にフォーカスしましょう。例えば、被評価者の性格や人格を指摘すると、パワハラ、セクハラと思われてしまうこともあるので、冷静に問題を切り分けて発言しましょう。

実行可能な内容である

基本的に、実現可能なものにしましょう。自分ができることでも相手にはできないこともあります。無理難題を要求すれば反感を買い、信頼は損なわれます。被評価者のスキルを把握し、どの程度であれば問題ないか、相手に合わせてフィードバックしましょう。

すぐ(タイムリー)に評価する

ポジティブフィードバックもネガティブフィードバックであっても、”すぐに”が原則です。時間が経ってからだと、被評価者も忘れていたり、またなぜその場でいってくれなかったのかという不信感にもつながってしまいます。

サンドイッチ話法を使う

フィードバックに慣れず、相手を傷つけてしまうかもと不安な方は、冒頭と最後に良かった点を伝えるサンドイッチ話法を使いましょう。

例えば、「今月は目標達成できましたね(肯定)→しかし、最近遅刻と欠勤が多いね(否定)→最近忙しくて体調を崩していることは知っている。皆期待してるから、これからも頑張ってください(肯定)」、というように、伝えにくいこと、指摘は肯定の事柄の間に挟むことで、相手に伝わりやすくなります。

終わりに

フィードバックは、「部下を指摘して問い詰める場」ではなく、お互い一緒に目標を達成するための手段の一つです。正しい方法でフィードバックを使えば、日々の部下とのコミュニケーションや目標達成においてより大きな効果を発揮できると思います。ぜひ活用してみてください。

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