アサーティブネスとは、相手の考えや意見を尊重しつつ、自分の気持ちを伝えるコミュニケーション技法で、多様性の尊重やオンラインコミュニケーションが重要視されるなかで、注目されています。本記事では、このアサーティブネスの概要や得られる効果、使い方などについて解説します。

アサーティブネス(アサーション)の意味や定義とは?

相手の考えや意見を尊重しつつ、自分の気持ちを伝えるコミュニケーション技法です。ありきたりなコミュニケーションスキルに感じますが、アサーティブネスの肝は、相手を手中に収め、自分の意見を押し通すわけでもなく、遠慮して自分の意見を飲み込むわけでもなく、相手と対等な立場で、適切な言葉やタイミングで自分の意見を伝えることです。

アサーティブネスの起源は、1950年代から1960年代にかけて起こった公民権運動にまで遡ります。当時、アメリカで白人が大多数を占めるなかで、アフリカ系アメリカ人が自分たちの主張を伝える手法として浸透。

その後、1980年に入ると、教育や医療、福祉などの分野にまで広がりました。日本には1980年半ばに導入され、現在では教育現場からビジネスシーンまで幅広く利用されています。

コロナ禍でオンラインコミュニケーションが活発化したり、ダイバーシティの重要性が高まったりしたことで、再びアサーティブネスにスポットが集まりはじめています。
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アサーティブネス(アサーション)で分類されるコミュニケーション3タイプ

アサーティブネスでは、コミュニケーションをタイプを大きく3つに分類しています。1つずつ解説します。

アグレッシブタイプ

アグレッシブタイプは、相手の気持ちを考えず、自分の主張を押し通すタイプです。自分の意見が正しいと考えるきらいがあり、相手の言い分や価値観を軽視します。力強いリーダーとして慕われることもありますが、他者への配慮や思いやりに欠けるため、人間関係のトラブルを起こしやすいです。

ノン・アサーティブ

自分の意見を押し殺し、相手の意見を尊重しがちなタイプです。他人に気を遣いすぎて、自分の意見や考えは二の次になりやすく、ストレスを溜めがちです。調和が取れる人と聞こえは良いものの、「都合よく使われてしまう人」と表裏一体でもあります。

アサーティブ

主張を押し通すわけでもなく、かといって自分の意見を押し殺さず、適切に相手に伝えることができるタイプです。主観と客観をバランス良く持ち合わせており、状況に応じた適切なコミュニケーション方法をわきまえています。

アサーティブネス(アサーション)が注目される理由

アサーティブネスが注目される背景には、大きく「多様性の尊重」「テレワークの浸透」といった理由があります。

多様性の尊重

近年は、性別、国籍、価値観、年齢などの属性によって優劣を分けるのではなく、互いの個性を認め合い、活かし合う社会に変わりつつあります。その証拠に、ビジネスマン、看護婦、スチュワーデスなど、性別で区別する用語は積極的に使用されなくなりました。多様性が尊重される状況では、互いの考えや意見を尊重する姿勢が大切になります。

テレワークの浸透

テレワークが浸透すると、テキストコミュニケーションが主体となります。対面コミュニケーションでは感じ取れた表情や雰囲気といった重要な情報が抜け落ちるために、コミュニケーションの齟齬が起きやすくなります。
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アサーティブネス(アサーション)で得られるメリット・効果

アサーティブネスを身につけると、具体的にどのようなメリットや効果を得られるのでしょうか。

ストレスの軽減

気を遣いすぎたり、言いたいことを言えなかったりして、ストレスが溜まっていたものを、アサーティブネスを身につけることで、意見を抱え込まずに伝えることができます。また、意見を聴く側も、「遠回しな表現で何をいっているかわからない」ことが少なくなり、ストレスが低減されます。

円滑な人間関係の構築

他者の価値観や考え方を尊重し合う文化がない組織では、互いを否定・いがみ合う状態が続き、いわゆる部門間や部署間での分断が発生します。組織内にアサーティブネスを習得したメンバーが増えるほど、問題解決に向けて一丸となって取り組む文化が醸成され、コミュニケーションも活性化します。結果、信頼感が高まり、組織力が向上するのです。

業務効率の改善

アサーティブネスが浸透していれば、取引先や上司など立場が上の存在に対しても間違ったことについてはしっかりとNOを伝えられます。その結果、過剰な値引きが実施されたプロジェクトや、不要な会議などが少なくなり、結果、業務効率の改善につながります。

アサーティブネス(アサーション)のデメリット・注意点

アサーティブネスは、コミュニケーションにおいて非常に有用なスキルですが、使い方次第では相手を傷つけたり、怒らせてしまったりすることもあります。

コミュニケーショントラブルの火種になることも

アサーティブネスは、相手の立場や価値観を理解したうえで、自身の意見を伝えるコミュニケーションスキルです。しかし、相手の立場を尊重していたとしても、伝え方を間違えればトラブルに発展することも。伝えることは大切ですが、攻撃的や直接的な伝え方では相手を傷つけることにさえなってしまいます。アサーティブネスの本質は、柔軟な自己表現です。状況次第では、自身の意見を伝えないことが良いこともあるのです。

多様性は”押し付ける”ものではない

アサーティブネスは、自身の意見を相手に認めさせたり、受け入れさせたりすることではありません。あくまで自身の意見を伝える手段です。その意見を、認めるも認めないも相手の自由です。そこを否定しては、アサーティブネスの本質である、相手の立場や価値観の理解には至りません。

アサーティブネス(アサーション)のやり方

最後に、アサーティブネスのやり方について解説します。

相手への敬意や承認の意を示す

アサーティブネスで大切なのは、相手に対する敬意や承認の気持ちです。「自分よりも能力が低い」と蔑んだり、「自分よりもはるか雲の上の存在だ」と卑屈になったりするのはNG。敬意や承認の気持ちがなければ、言葉に心が乗っからず、真の意味でのコミュニケーションは成立しません。

DESC法を駆使する

DESC法は、アサーティブネスをより効率的に実践するためのフレームワークで、アメリカの心理学者であるゴードン・H・バウアー氏によって提唱されました。「描写する(Describe)」「説明する(Express)」「提案する(Suggest)」「選択する(Choose)」の4つのステップで構成されます。

  • 描写する(Describe):客観的に事実や状況を説明する
  • 説明する(Express):自分の考えや感情を伝える
  • 提案する(Suggest):相手の状況や価値観に沿った解決策を提案する
  • 選択する(Choose):選択肢を提示する

コミュニケーションの目的を意識する

感情を伝えたいのか、それとも事実を伝えたいのか、さらには意見を理解してもらい、実行して欲しいのかによって、コミュニケーションの方法は変わります。例えば、傷ついた気持ちを理解して欲しいのに、「相手を論破するコミュニケーション」では目的を果たせず、無気力感だけが残ります。DESC法に当てはめて、自身がどのレイヤーの悩みを抱えているのか、事前に明確にしておくと、齟齬なくコミュニケーションを図ることができるでしょう。

終わりに

うまくアサーティブネスを活用すれば、ビジネスコミュニケーションで多大なる効果を発揮するでしょう。ただし、使い方を間違えれば相手を傷つける可能性もあります。本日紹介したポイントを参考にして実践してみてください。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等