「スーパーフレックス」という働き方を知っていますか?ワークライフバランスがより重要視される今、あらためて注目したい先鋭的な働き方です。今回はスーパーフレックスをご紹介します。

 

スーパーフレックスの定義とは?

スーパーフレックスとは、コアタイムのないフレックスタイム制のことをいいます。語源である「flexible」は「柔軟な、融通が利く」を意味します。通常のフレックスタイム制では、コアタイムを守れば従業員が勤務時間を自由に決定できます。スーパーフレックスは、そのコアタイムすらもなくして勤務時間を組める、自由度の高い働き方です。

スーパーフレックスと裁量労働制の違い

スーパーフレックスと混同されがちなのが裁量労働制です。スーパーフレックスが、実際に働いた時間を勤務時間とカウントするのに対し、裁量労働制は働いた時間に関わらず、あらかじめ決めた労働時間を働いたとみなす制度です。例えば、契約で1日の労働時間を7時間と決めておけば、実働時間が3時間でも9時間でも、7時間の労働分が給与に反映されます。

スーパーフレックスとフルフレックスの違い

似たような言葉にフルフレックスがありますが、意味合いとしては同じになります。どちらもコアタイムがないフレックスタイム制を意味します。

関連記事:フルフレックス(フルフレックスタイム制)とは|メリットとデメリットについて

スーパーフレックスのメリット

スーパーフレックスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。3つご紹介します。

離職率の低下

大きなメリットは、人材の流出を抑制できることです。なかには、介護や育児など家庭の事情でフルタイム出勤が難しくなる社員もいます。勤務形態に柔軟性がないと、プライベートとの両立が困難になり、組織に欠かせない優秀な人材が退職してしまうこともあります。

 

しかしスーパーフレックスで勤務時間の縛りをなくすことで、こういった人材が離職することを防止できます。

生産性の向上

スーパーフレックスにすると、満員電車に乗らずに済んだり、朝に弱い人は夕方から集中して仕事ができたりと、自分のペースで働けます。極力、ストレス要因を避けてパフォーマンスを発揮できるため、生産性が向上します。

 

優秀な人材の確保

スーパーフレックスを採用することで、業務内容や給与面だけでなく、柔軟な働き方という面でも魅力をアピールできます。育児や介護などを理由に転職をあきらめていた優秀な人材を取り込むことができます。

 

スーパーフレックスのデメリット・問題点

一方で、スーパーフレックスを導入すると、勤怠管理やコミュニケーションなどのデメリットも懸念されます。

 

勤怠管理が煩雑(はんざつ)になる

スーパーフレックスにすると、従業員の勤務時間が一律でなくなるため、既定の労働時間を満たしているか、超過しすぎていないか、各従業員ごとに細かく管理する必要があります。

組織への帰属意識が希薄になる

オフィスで一緒に仕事をする機会が減り、経営層や現場、部門間でのコミュニケーションが少なくなるため、帰属意識が希薄になる恐れがあります。チャットツールやオンライン会議ツールなどの利用促進、定期的なミーティングの実施、ビジョンや事業計画の浸透・共有などで、連帯感を作り出す必要があります。

コミュニケーション不足に陥る可能性がある

スーパーフレックス下では、従業員が自主的に出退勤の時間を決めることができます。柔軟な働き方を実現できる一方で、対面でのコミュニケーションの機会が減少するため、認識のずれや連携の遅延などが起こりやすくなります。最悪の場合は、トラブルやクレームなどの事態に発展することも考えられます。そうならないためには、情報共有や連携方法の見直しや業務プロセスの簡略化などの工夫が欠かせません。

スーパーフレックスを導入するには?

スーパーフレックスの導入では、就業規則での規定、労使協定の締結、勤怠管理の見直しの3つの手続きが必要になります。1つずつ具体的に解説します。

就業規則で規定する

まず、スーパーフレックスであることを就業規則で定めます。労使協定(使用者と労働者間で締結される書面の協定)を規則の一部として記載します。書き方は複数パターンありますが、一例は下記のとおりです。

第〇条
労使協定の締結により、フレックスタイム制を適用する従業員は、第〇条の規定にかかわらず、始業・就業の時刻を労使協定第〇条で定める範囲において、自由に決定できるものとする。

「始業時間と就業時間は各自が自由に設定できる」旨を記載するのがポイントです。

労使協定の締結

労使協定の締結も行います。一般的には、労働基準法にある下記の一文が労使協定にあたります。

「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定(労働基準法第36条より引用)」

労使協定は、従業員の代表と締結します。従業員の代表は、労働組合(労働者の過半数で組織している)があれば労働組合と、なければ労働者の過半数を代表する者となります。

労使協定で定める内容は、下記の項目となります。

対象となる労働者の範囲
清算期間
清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
標準となる1⽇の労働時間

(※コアタイムとフレキシブルタイムは任意)

 

「清算期間」とは、フレックスタイム制において、規定した総所定労働時間と、実際の労働時間を清算するための期間です。

勤怠管理の見直し

スーパーフレックスでは、勤務時間が変動制になるため、それに合わせた勤怠管理体制を構築する必要があります。勤怠管理システムや出勤・退勤の打刻方法など、従業員と管理者が混乱しないルールを定めて周知しましょう。

スーパーフレックスの企業事例

近年では、有名な企業もスーパーフレックスを導入するケースが増えてきています。企業事例を一部ご紹介します。

ソフトバンク株式会社

いち早くスーパーフレックスを導入したことで有名なのがソフトバンク株式会社です。2017年4月から導入を開始し、コアタイムを撤廃して各自が状況に応じて出社・退社時間を変更できるようにしました。その結果、オフピーク通勤ができたり、子どもとの時間が増えたりと、肯定的な意見も多く、従業員満足度(ES)の向上につながっています。

花王株式会社

花王株式会社では、もともと10時〜15時をコアタイムにしたフレックスタイム制を導入していました。しかし、海外とのやりとりも多いことから、時差の関係で夕方以降に業務が集中することが課題でした。そこでコアタイムを撤廃し、スーパーフレックスに移行した結果、仕事と休息の時間のメリハリがつき、働きやすさが向上しました。

株式会社マツリカ

株式会社マツリカでも、スーパーフレックスを導入しています。社員一人ひとりがモチベーションを高く保ち、生産的に働ける状況を構築することを目的にしています。スーパーフレックスで、さらにフルリモート勤務もOKな自由度の高さがマツリカの特徴です。

なかには海外に移住しながら働いているメンバーもいます。このように柔軟な働き方ができるのも、スーパーフレックスで時間の縛りがないからこそです。

 

参考記事:会社員をしながら「海外リモートワーク」で生活が豊かに。マツリカの竹下さんがオランダへ移住した理由とは? ー前編ー

スーパーフレックスでよくある疑問

最後に、スーパーフレックスに関してよくある疑問を4つ紹介します。スーパーフレックスを導入する際の参考にしてください。

休憩時間の決まりは?

労働基準法の第34条によれば、1日の労働時間が6時間以上8時間以下の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を取ることが義務付けられています。スーパーフレックスにおいても例外ではありません。

 

従業員が一斉に休憩時間が取れなければ、休憩時間取得の原則を定めておきます。さらに就業規則にも「いつ休憩時間を取得するかは社員に任せる」旨を記載しておきましょう。

スーパーフレックスは管理職にも適用できる?

管理職は時間管理の対象外となり、労働時間の制約はありません。そのため、スーパーフレックスもフレックスタイム制も適用されません。

スーパーフレックスでどう残業代を計算する?

スーパーフレックスでは、法定労働時間を超える=時間外労働になるとは限りません。時間外労働になるのは、実労働時間が清算期間の法定労働時間を超えたときです。その場合は超えた分の残業代を支払います。

どのように欠勤を判断する?

コアタイムが決められていないスーパーフレックスでは、欠勤の判断も難しくなります。開始時間が決められていないため遅刻の概念もありません。コアタイムではなくても、「1日あたりの最低就業時間は〇時間」と就業規則で定めておけば、不足したら欠勤と判断しやすくなります。就業規則がなければ、不就労日の扱いになります。

しかしある1日の就業時間が短くても、他の日でその差分働いてトータルの就業時間をクリアすることもできます。1日、2日だけ就業時間が少ないからと欠勤と判断するのは早計です。

終わりに

勤務時間が自由なスーパーフレックスは、多様な働き方を実現する魅力的な制度です。しかし、所属意識が希薄になる、勤怠管理が煩雑になる、コミュニケーションが少なくなるなどのデメリットも存在し、会社によっては生産性を下げる原因になることもあります。必ずしも、全ての会社に適した制度ではありません。スーパーフレックスを導入する際には、どのような恩恵を受けられて、それと同時にどのような副作用があるのか、自社の状況に合わせて冷静に判断しましょう。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等