従来から日本で採用されてきた「メンバーシップ型雇用」に加え、「ジョブ型雇用」という雇用形態が注目を集めています。さらに、近年は「タスク型雇用」という新たな雇用形態も登場しています。本記事では、タスク型雇用の概要やメリット・デメリットについて解説します。
目次
タスク型雇用とは?
タスク型雇用とは、会社や職務ではなく、タスクやプロジェクトベースで限定的に人材を雇用する手法を指します。メンバーシップ型雇用やジョブ型雇用は、会社に継続的に関わる人材を雇する手法ですが、タスク型雇用はタスクやプロジェクトごとの契約になっており、フリーランスや複業人材などの非正規雇用がアサインされるケースが多いです。代表的なところでは、オンラインフード注文・配達プラットフォーム「Uber Eats」の配達員などが挙げられます。
タスク型雇用とジョブ型雇用の違い
タスク型雇用が、タスクやプロジェクトごとに雇用される手法であるのに対し、ジョブ型雇用は、職務を中心に採用する雇用手法のことをいいます。職務記述書(ジョブディスクリプション)に記載している業務に従事するため、従来の日本企業のように総合職という考え方はなく、専門的な領域に特化します。
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タスク型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
メンバーシップ型雇用は、従来から日本で採用されてきた方法で、ジョブローテーションを前提に、主に総合職として採用する手法をいいます。特に役割を決めずに、配置転換しながら従業員を育成します。終身雇用や年功序列などを原則としており、入社時には、専門的なスキルや経験は特に求めず、情熱やビジョンなどを重視します。近年は、終身雇用や新卒一括採用などが変容していることから、少しずつ先述のジョブ型雇用やタスク型雇用を採用する会社も増えてきつつあります。
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タスク型雇用のメリット
タスク型雇用のメリットとしては、大きく以下の3つが挙げられます。
比較的コストを安く抑えられる
通常、専門的な人材を1人雇用しようとすると、採用費に加え、毎月支払う給与も一般の従業員に比べると高くなる傾向にあります。例えば、データサイエンティストやAIエンジニアなど、近年需要の高い職種となれば、理論年収が600万円以上、より専門的なスキルを持っている人材なら理論年収が1000万円近くになることもあります。しかし、タスク型雇用では、タスクやプロジェクトの期間における給与または報酬になるため、専門人材を比較的安く採用することができます。多くの場合、フリーランスなどすでに専門的なスキルを保有している即戦力人材であるため、教育コストもかかりません。
柔軟にプロジェクト体制を構築できる
通常は、定常的に業務のボリュームが発生しなければ、採算を取れる状態にならないため、専門人材の採用に至りませんが、タスク型雇用は、期間がタスクやプロジェクトと限定的であるため、そのタスクやプロジェクトに最適な人材を、都度集めることができます。
新しい視点を取り入れることができる
メンバーシップ型雇用やジョブ型雇用は、会社のメンバーの一員として長期的に雇用する方法ですが、タスク型雇用は、あくまで外部の専門人材として短期的に雇用します。そのため、組織のしがらみや忖度のないフラットな意見を聞けて、ひいてはイノベーションの推進や、組織のカルチャー改善などに役立てることができます。
タスク型雇用のデメリット
一方で、採用要件を明確にしなければいけなかったり、都度探す手間がかかったり、一体感の醸成が難しかったりするデメリットもあります。
採用要件の明確化が求められる
タスクやプロジェクトにフィットする人材を探すには、採用要件の明確化がマストです。ジョブ型雇用でも、職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成が不可欠ですが、タスク型雇用は、それよりもさらに詳細な要件が必要となります。オウンドメディアのコンテンツ制作プロジェクトにアサインするライターを採用するケースを例に挙げるならば、下記のようになります。
- Googleキーワードプランナーを使ったキーワード選定ができること
- 依頼するメディアと同ジャンルの執筆経験が2年以上あること
- キーワードに基づき、SEOにおいて最適な骨子が作成できること
- 骨子に沿って、論理的に正しく、かつ正確な情報を盛り込んで記事を制作できること
- 各メディアのトンマナに沿った記事執筆ができること
タスクやプロジェクトごとに人材を探す必要がある
タスクやプロジェクトの期間だけ雇用するため、都度人材を探す必要があります。タスク型雇用の過程で出会った有能な人材に違うタスクやプロジェクトを依頼することもできますが、フリーランスでは同時に複数のプロジェクトにアサインされているケースが多く、タイミングによっては依頼できないこともあります。
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一体感の醸成が難しい
タスク型雇用は、あくまでタスクやプロジェクト期間中における雇用であるため、メンバーシップ型雇用やジョブ型雇用と比べると、チームワークを醸成するのは難しいでしょう。もし、チームワークが求められるプロジェクトにアサインしたい場合は、雇用期間を長くする、またはジョブ型雇用などに切り替えるなど、何かしらの工夫が必要となります。
今後も増えるタスク型雇用の需要
今後も、タスク型雇用は増え続けるのかどうか。この問いについては、厚生労働省が発表している「働き方の未来2035 報告書」が参考になります。この報告書によれば、『企業組織が人を抱え込む「正社員」のようなスタイルは変化を迫られ、人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になる』とあります。
つまり、今後、会社は1つの大きな組織ではなく、複数のプロジェクトの集合体になっていき、そこで働く従業員はプロジェクトベースで雇用される未来を予見しています。これは、まさにタスク型雇用を指しているのではないでしょうか。
働き手においても、働き方改革によるワークスタイルの多様化、クラウドソーシングサービスやマッチングサービスなどの台頭によって、社外プロジェクトにも容易に関われる環境が整いつつあります。
UberEatsの労災問題や事故の賠償責任などが社会問題として取り上げられていますが、2021年9月1日からの法改正で、「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」や、「ITフリーランス」が、労災保険の特別加入の対象となったように、今後、タスク型雇用を行う者への社会保障も整備されるものと予想されます。
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終わりに
タスク型雇用は、メンバーシップ型雇用やジョブ型雇用と異なり、タスクやプロジェクトベースで限定的に人材を雇用する方法です。必要なときだけ専門人材を雇用できるため、場合によっては非常に有効な雇用方法となりうるでしょう。本日の内容を参考にしてみてください。
この記事を書いたひと
俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya
1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等