デジタルノマドという言葉をご存知ですか?ITを活用し国内外を旅しながら働く人のことです。タイやベトナムなど物価の安い東南アジアに滞在して生活コストを抑えつつ、仕事ができるワークスタイルともあって、一部の若者の間で注目されています。本記事ではデジタルノマドの概要や魅力について解説いたします。

デジタルノマドとは?

デジタルノマドとは、ITを活用し国内外を旅しながら働く人のことを指します。日本国内だけでなく、世界中を飛び回り自由に働く点で、ノマドワーカーとは一線を画しています。ノマドはもともと定住せずに住む場所を転々と変えていく「遊牧民」を指す言葉で、デジタルノマドはまさに現代版遊牧民ともいえるライフスタイルかもしれません。

デジタルノマドとリモートワーカーの違い

リモートワーカーは「オフィス以外の自宅やコワーキングスペースで働く人」を指し、デジタルノマドのように旅をする文脈は含まれません。それに対し、デジタルノマドは自由に国内、海外を行き来し旅しながら働くという意味合いが加わります。

 

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アドレスホッパーとは何が違う?

アドレスホッパーとデジタルノマドは、さまざまな場所に転々と滞在する点で共通点があり、かなり近しい言葉です。明確な違いが定義されているわけではありませんが、アドレスホッパーはあくまでリビングスタイルを指すのに対し、デジタルノマドはワークスタイルを意味します。

 

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デジタルノマドの種類

デジタルノマドには、大きく2つの種類があります。1つがさまざまな国を転々としながら仕事をする「点在型デジタルノマド」です。このタイプは、先述したアドレスホッパーのように住居を持たず民泊やホテルを転々としながら、好きな国に行くスタイルで日々生活しています。

もう1つが「滞在型デジタルノマド」です。こちらは自分の拠点は海外に置きつつも、他の国へ長期滞在して過ごすなど、リビングスタイルはデュアラーに近いです。

多くのデジタルノマドは、生活コストやビザの取得しやすさなどを考慮し、東南アジアや東欧など物価の安い国に滞在することが多いです。特に、タイ(バンコク)、マレーシア、ジョージアなどはデジタルノマドの間でホットスポットとなっています。

デジタルノマドのメリットや魅力

デジタルノマドは、国内外問わずさまざまな場所に足を運べること、また基本はリモートで仕事を進めるため、人間関係のトラブルに悩まされる心配がありません。

旅をしながら仕事ができる

ワーケーションのように一定期間旅をしながら働くのではなく、日常が旅となるため旅が好きな方にとってはまさにうってつけのワークスタイルです。気分に合わせて行きたい国に行けるため、刺激にあふれた毎日が送れます。

人間関係のストレスに悩まされなくなる

オフィスに出勤する必要がないため、職場内の人間関係に悩まされません。もちろん仕事である以上は苦手な人とも付き合っていかなければいけませんが、遠隔でのコミュニケーションのため、さほどストレスを感じることなく仕事ができます。

生活コストが抑えられる

物価の安い国に滞在していれば、場合によっては日本の1/10、1/5程度で済ますことができます。例えば、デジタルノマドに人気のバンコクでは一人暮らしでかかる生活費は月5〜10万円で日本の1/3程度です。

デジタルノマドの問題点

きらびやかなイメージのあるデジタルノマドですが、一方で問題点も存在します。

厳格な予定調整スキルが要求される

海外で働くともなれば、まず問題となるのが時差です。時差を考慮しつつ、仕事をする必要があるため、厳格な予定調整スキルが問われます。

持ち物を減らす必要も。それに加えて故障や盗難のリスクも

基本的には、国を旅しながら働くことになるため、必需品以外は、極力断捨離をする必要があります。さらに、海外では盗難のリスクも。日本では、置き忘れたり、トイレに行くために離席をしたりしても、パソコンやスマートフォンなどが盗難されるリスクは低いですが、海外では何が起こるかわかりません。

また、滞在している国によっては、パソコンやスマートフォンなどが故障したときに修理できる場所がないこともあり、仕事に支障が出ることもあります。

孤独になる

一人でいることに苦痛を感じない人にとっては問題ないかもしれませんが、海外で旅をしながら生活をすることは心細いものです。旅をしながら働くと聞くと華やかですが、その実情は想定外のトラブルに日々対処する力が必要となります。助けてくれる人はいません。

デジタルノマドはどんな仕事や職種の人が多い?

デジタルノマドとして生活している人は、海外でリモートワークをしていても仕事が成立する以下のような職種の方々になります。

 

・ライター
・システムエンジニア
・カスタマーサクセス
・インサイドセールス
・Webデザイナー
・Webディレクター
・翻訳家
・コンサルタント

 

現在はデジタルノマドに向いている仕事は限定されますが、今後は、インターネット技術の発展により、さらに多くの職業がオンラインで実現できるようになるでしょう。

デジタルノマドに向いている人・向いていない人

では、どのような人がデジタルノマドに向いているのでしょうか。

デジタルノマドに向いている人

ワークライフインテグレーションを好む人

旅をしながら働くのであれば、むしろ仕事とプライベートを分けないほうがうまくいくことが多いです。旅先の偶然の出会いが仕事に結びついたり、仕事で学んだことが旅先のアクティビティに活きたりと、統合して相乗効果を出していきたいと考えている人にはピッタリのワークスタイルです。

 

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変化をストレスととらえずに学びに変えられる人

旅をしながら働くことは常にめまぐるしい変化にさらされていることと同義です。変化をストレスと感じずに楽しむことができると、充実したデジタルノマド生活を送れます。

自己管理ができる人

自己管理がマストです。旅の計画はもちろん仕事のスケジュール設計も必要です。常に自制し、遊びと仕事のメリハリをつけられる人であればデジタルノマドに適しているといえます。

デジタルノマドに不向きな人

体力がない人

旅はエネルギーを使います。デジタルノマドともなれば頻繁に移動をするため、移動や変化に伴うストレスに耐えうる精神的、肉体的エネルギーが欠かせません。移動だけで疲労してしまうようなら、仕事もおろそかになってしまい、せっかくの旅生活が本末転倒になってしまいます。

変化を好まない人

点在型デジタルノマドでも滞在型デジタルノマドであっても、両者に共通しているのは常に新しい場所へ行く刺激を求めている点です。Wi-Fi環境が約束された場所でじっくりと仕事をしたい、顔なじみの知人、友達がいる土地で過ごしたい方にはあまり向いていないでしょう。

観光が好きな人

これは意外かもしれません。観光が好きすぎると仕事がおろそかになって、ただ長期で観光をしている人になってしまうからです。

デジタルノマドをしている人は、観光に興味はなく「現地で滞在すること」が好きな割合が高いです。滞在とは、観光地に行きリフレッシュをするのではなく旅先で日常を送るということです。旅しながら働くことがキラキラして見えるのは、常に旅行気分を味わえるという誤解から来ているように思いますが、実のところ滞在先で日常生活を送るに過ぎず、地味なことが多いです。そこをギャップなく受け止められるかが重要です。

デジタルノマドを実現するポイント

最後にデジタルノマドを実現するためのポイントについて解説いたします。

収入源の分散化

フルリモートで会社に勤めている方でも、フリーランスの方でも、万が一今担当している仕事がなくなったら、滞在先で新しい仕事を探さないといけなくなります。今では面談から採用まで、すべてリモートで行われるケースも増えてきていますが、最初の顔合わせは対面のケースも多いのが現状です。

海外に滞在していると、物理的に日本に戻ることもできず、職を失ったときに収入を挽回するまでが大変になります。いくつも収入源をもっておくと、万が一仕事がなくなっても、金銭面の心配が多少減ります。

持ち物を減らす

荷物が多いと、滞在する部屋は限られて滞在費も高くなります。スーツケースに収まるくらいまで荷物を減らしましょう。

ITリテラシーを高める

デジタルノマドにとって、パソコンとスマートフォンはいわば命綱です。回線の不具合や端末の故障に見舞われると、仕事はおろか連絡もとれなくなります。滞在している国に修理センターが必ずあるとも限りません。自力で解決できるITリテラシーを持っておくことが重要です。

まとめ

「旅しながら働く」という言葉だけ聞くと、とても華やかなイメージがありますが、自己管理が求められるうえに、仕事とプライベートの境界線もあいまいになるため、場合によっては「イメージと違った」と挫折してしまう人も。そうならないためにも、まずは多拠点生活やワーケーションといった小さい挑戦から始めてみて、自分に適したワークスタイルか模索してみてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等