シェアオフィス、ゲストハウス、ホステルなど、人と人が交流できる多様な場所が増えてきたことで、その場を運営するコミュニティマネージャーという仕事に注目が集まっています。しかし、コミュニティマネージャーがどのような役割や仕事を持つのかあまり知られていません。今回は、シェアオフィス「LIT(リット)」でコミュニティマネージャーをされている山脇美穂さんに、コミュニティマネージャーの仕事内容、やりがいなどについて話を聞きました。
ブダペストに留学したのち、シェアオフィス「LIT」のCMへ。
ーー学生時代はどのように過ごしていましたか。
大学時代は、英語に興味があって国際交流サークルに所属していました。その後、1年間休学してハンガリーのブダペストに語学留学へ。平日は大学で授業を受けて、週末は東欧を中心にバックパックをする生活をしていましたね。帰国後、今の会社が運営しているゲストハウスでアルバイトを始めました。
ーーゲストハウスでは、どのようなお仕事をされていたのでしょう?
1人で、簡易的な清掃や受付対応、予約管理などをしていました。また宿泊者の8割が外国人だったため、宿がある下北沢エリアの観光案内もしていましたよ。
しかし、新型コロナウイルスが感染拡大してしまって。そんな時に「本社事務所で有給のインターンをしてみない?」と機会をいただきました。他の会社を見る選択肢もありましたが、今の会社の人や雰囲気がすごく好きだったのもあり、LITへ入社を決めました。
ーー次に、シェアオフィス「LIT(リット)」について教えてください。
LIT(リット)は、オフィス、カフェ、レンタルスペースなどが併設されている複合型オフィスです。オフィスの名前である「LIT」は、英語で「火をつける」「ライト」の意味を持ちます。タバコのコミュニケーションや給湯室の会話のように、自然と集まることで生まれるコミュニケーションを促進したいという想いから名付けました。
コミュニティマネージャーってどんな仕事?
ーー続いて、現在されている仕事内容について教えてください。
LIT(リット)の運営・管理にまつわる業務全般を1人で行っています。
オフィス運営・サポート、テナント様向けのイベント運営・企画、オフィス内の清掃、LIT公式SNSの更新・運用など幅広い業務を担当します。この中で大きな割合を占めるのが、オフィス運営業務です。具体的には、複合機の使い方の説明やWi-Fiの接続設定の確認といったテクニカルサポートから、レンタルスペースの予約方法の案内や予定調整、また10階のレンタルスペースの見学対応なども行います。
10階のレンタルスペースについては、専門の清掃スタッフを雇用しているので、シフト管理やアルバイト採用などにも携わっています。その他のオフィスフロアとコミュニティラウンジについては、私が清掃を実施します。
ーー確か、バリスタもされているんですよね。
そうです。LITではコミュニティマネージャーがバリスタも行います。10時と15時にコーヒーを提供する時間があるので、そこで皆さんにコーヒーを提供しています。
ーーとても幅広いですね……。イベントの企画・運営とは、具体的にどのようなことをされるのでしょうか?
イベントは、テナント様同士の交流と、外部へのLITの認知拡大を目的としています。具体的には、イベント内容の企画立案から、ケータリングの手配、当日のイベント運営、片付けまで、全て担当します。過去には、シーシャを吸うイベントや、スパイスをテーマにしたイベントなどを開催しました。
ーー1日のスケジュールについて教えてください。
出勤したら、まずオープン作業を行います。10階に予約が入っていないときは、テナントさんが自由に使えるように、簡易的な清掃を行います。
また、朝10時からコーヒー提供の時間があるため、バリスタの業務として朝のテイスティングショットを2〜3杯出します。テナントの皆さんとコミュニケーションをとりながら、コーヒー提供を行います。
その後、コーヒーマシンの片付けをして、メール返信やレンタルスペースの予約確認といったデスクワークを行います。
お昼ぐらいからオフィスの清掃を行います。日によっては、お昼から15時ごろの間にミーティングが入ることもあります。夕方の15時に2回目のコーヒー提供を行います。
コーヒー提供終了後、コーヒーマシンのメンテナンスと清掃に着手します。残りのオフィスの清掃とデスクワークを片付けて、19時に10階のクローズ、1階の消灯などを行って、1日を終えます。
業務の幅が広いからこそ、自分のやりたいことを実現できる
ーーコミュニティマネージャーにおいて、特に重要だと感じるスキルは?
トラブル解決能力ですね。コミュニケーション能力は、業務の中で自然と身につくので、最初から持っている必要はありません。結局、LITはシェアオフィスで、快適に仕事ができる環境を作ることがコミュニティマネージャーの役割なので。困っていることがあれば、すぐに行動できて解決できるタイプの人が向いていると思います。
ーー全て1人でされているのなら、なおさら解決する力は求められますよね。
その通りです。現場に上司がいないため、何かトラブルがあっても全て自分で考えて動かないといけません。ですので、それが不安な人にはもしかしたら向かない仕事かも(笑)。
ーー元々、バリスタの経験はあったのでしょうか?
未経験ですね。ただ、バリスタに興味がありました。弊社の代表は過去にオーストラリアでコーヒーの修業をしていたことがあって、私もLITに入社する前は、大学卒業したらオーストラリアに修業に行こうと考えていたんです。それで代表と話が盛り上がって、私がここにコミュニティマネージャーとして就任した前後に、1Fにカフェを作ることが決まりました。
ーーコミュニティマネージャーは、業務の幅が広いからこそ、自分のやりたいことを実現できる可能性もあるということですね。
そうですね。特にイベント企画では自分がやりたいことを大概叶えられてしまうと思います。
ーー将来独立を考えている人にも向いている仕事かもしれませんね。
向いていると思います。事実、私もテナントさんにフリーランスと間違えられることがあるくらいなので(笑)確かに、そういう意味ではフリーランスマインドのある人が良いかもしれないですね。
コミュニティマネージャーは、リーダーではなく”縁の下の力持ち”
ーーコミュニティマネージャーの仕事で、やりがいを感じる瞬間について教えてください。
企画したイベントにテナントさんが来てくれたり、楽しんでもらっていたりすると、普段の業務を通して信頼や関係性を築けているとやりがいを感じますね。
最近は、テナントさん同士の交流が増えてきて、今までやってきたことは無駄ではなかったと思えてうれしいです。
ーーコミュニティ運営では、どのようなことを大切にしていますか。
コミュニティマネージャーの役割は、長く居たいと思ってもらえる空間を作ることです。フロアの清掃や備品の補充、細やかなコミュニケーションなど、目に見えない小さな行動を怠らないように気をつけています。
ーー反対にどんなことが大変ですか。
フロアの清掃や備品の補充などの業務は売上や成果に直結しにくいので、評価につながりにくい側面があります。なので、モチベーションの維持に少々苦労するかもしれません。
ーー定量的な評価はありますか。
LITのコミュニティマネージャーで、最もわかりやすい評価は、イベントの来場者数や、イベントに対するテナントさんからのフィードバックや声ですね。
ーーコミュニティマネージャーはまだ新しい仕事で、キャリアパスを描くのが難しいと感じるのですが、その辺りで苦労されることはありますか。
その点はあまり不安を感じることはないですね。確かに、日本ではコミュニティマネージャーの定義が会社によって異なるため、キャリアパスを描くイメージが湧かないかもしれません。しかし、コミュニティマネージャーの仕事では多様なスキルを獲得できるので、アピール次第では他の仕事へキャリアチェンジも可能であると考えています。
ーー今後の展望について教えてください。
実は、6月にLITのコミュニティマネージャーを卒業します。と言うのも、兼ねてから目標としていたオーストラリアのメルボルンでバリスタの修業へ行くからです。元々、バリスタに興味はありましたが、今の仕事をきっかけに、もっとコーヒーを学びたい気持ちが強くなりました。
まずは、メルボルンのカフェに履歴書を送って、雇ってもらえるお店を探そうと思っています。そして、最終的には森の中にコーヒー店を出そうと思っています。
ーーとても素敵な夢ですね。なぜ森の中なのでしょう?
去年の夏に、友人がラオスの「Utopia(ユートピア)」というカフェを訪れました。そこは、川の真横にあって、ベッドマットレスの上でコーヒーを飲めるんです。その話を聞いて、「こんな大自然のなかにあるカフェを日本でも作れたら良いな」と思いました。
日本にはおしゃれなカフェがたくさんありますが、そういう場所よりも奥多摩で1人ひっそりと営んでいる喫茶店や、海外のマーケットの端っこにあるコーヒースタンドに魅力を感じるんです。
ーーLITのコミュニティマネージャーとしての展望はありますか。
コミュニティの醸成と発信を通して、入居者を増やすことがLITにおけるコミュニティマネージャーの最終的なゴールだと思っています。私がコミュニティマネージャーとして在籍する間に、LITが満室になり、さらに活気のあるオフィスにできたら良いですね。
また、コミュニティマネージャーは人が主体の仕事です。なので、LITの核のコンセプトは継承しつつ、私の次に入る方の色や文化が合わさり、また新しい形が生まれるのではないかと思います。そうやって、様々な人がこのLITを面白い形に展開していくことができたら楽しみです。
この記事を書いたひと
俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya
1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等