「転職してQOLが上がった!」「最近、寝不足でQOLが下がっている……」など日常の場面で使われ始めている言葉ですが、一体QOLとは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか?今回は、健康的な生活には欠かせない考え方「QOL」について解説します。
目次
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の意味・定義とは?
正式名称を「Quality Of Life」と呼び、頭文字をとってQOLと呼ばれています。読み方はそのまま「キューオーエル」、「クオリティ・オブ・ライフ」とも読みます。
QOLの意味は直訳すると「生活の質」です。今でこそ日常的に使用されることが増えた言葉ですが、もともとは医療や介護の現場で使われていました。
入院や治療、介護が始まると、制約の多い生活になって、身体が自由に動かせなくなります。そのなかで不快に感じることを減らしていき、本人が満足して健康的に生活を送れる状態、これこそがQOLです。
ここでいう「健康」とは、病気や怪我の有無ではなく、「精神面・身体面・社会面において内面的に満たされて満足していること」を指しています。
QOLを構成する三つの質
Quality of Lifeの「life」は日本語に訳すと三つの意味があります。
- 生命(life)の質
- 生活(life)の質
- 人生(life)の質
生命の質とは、心身の健康を保つことです。生活の質とはこれまでの暮らしを続けて、暮らしづらさを減らすこと、そして人生の質とは、自分らしい生きがいを見つけることです。これら三つの「life」の質を維持・向上して初めて、QOLの向上につながります。
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)とSOLの違い
QOLに似た言葉に「SOL」があります。SOLとは「Sancity Of Life」の略で、「生命の尊厳」という意味です。命は尊く侵略してはいけない領域であり、医療行為で命を奪ってはいけない、すべての命は守られるべきであるという考え方です。
- SOL:医療が何より優先すべきは、生命の維持である
- QOL:医療は、人間がより良い状態で生きられるようサポートすべきである
QOLの具体例
QOLが高い状態とは、「精神面・身体面・社会面において内面的に満たされて満足していること」を指します。
一例としては、
- 職場の人間関係は良好か?
- 経済的に安定しているか?(お金の不安はないか?)
- 精神的な安らぎを感じられているか?
- 他者のために何か貢献できているか?
- 身体的に満足な活動ができているか?
などがあります。
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)がなぜ必要?背景について
QOLがここまで重要視されているのはなぜなのでしょうか?前述のとおり、もともとQOLは医療・介護現場で使われていました。
WHOは、1946年に「健康とは、身体面・精神面・社会面にとって良い状態であること」という健康の定義を提唱しました。ここから、医療・介護現場だけではなく、どのような職業や生活でもQOLを重要視すべきという考え方が広まりました。こうして今や職種に限らずQOLが意識されるようになったのです。
特に、近年重要視されているのが職場でのQOLです。仕事をしている時間の充実度や仕事のやりがい、会社の待遇、職場の人間関係、仕事とプライベートの両立などによって、個人のQOLは大きく変わります。
関連記事:マインドフルネスで働き方改革|従業員のストレスを軽減し創造力を高めるプロセス
関連記事:ウェルビーイング(Well-being)の定義とは?|持続可能な幸せを目指す働き方
従業員のQOLが向上すれば、意欲的に仕事に取り組める人が増えて、組織の生産性向上や業績アップ、ひいては離職率の改善にもつながります。
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の測定・評価方法
QOLは、定性的な指標であるため、測定や評価が難しいとされてきました。しかし、QOL尺度と測定方法が確立したことで、QOLの状態を可視化できるようになっています。
QOLの評価尺度について
QOLの評価尺度には下記の2種類あります。
- プロファイル型尺度
- 価値付け型尺度
プロファイル型尺度とは、健康状態を詳しく調べることが目的の尺度です。健康やQOLに関する質問で構成されており、結果のデータは医薬品・医療機器の開発から臨床現場まで、医療界で幅広く応用されます。
一方価値付け型尺度は、医療界の費用対効用の評価に用いられます。「効用」とは消費者がサービスを利用して得る主観的な満足度です。医療経済学に由来する健康効用値を測定し、結果は医療資源配分の指標になります。
測定法「SF-36」と「WHO QOL-26」について
QOLの測定・評価方法として代表的なものに、
- SF-36
- WHO QOL-26
の2つがあります。それぞれ具体的に解説します。
SF-36
「SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)」はアメリカで作成され、世界中に広まっているQOL測定の尺度です。SF-36では下記8つの尺度を測定するために、全36問の設問があります。
- 身体機能
- 日常役割機能(身体)
- 体の痛み
- 全体的健康感
- 活力
- 社会生活機能
- 日常役割機能(精神)
- 心の健康
SF-36の特徴は包括的尺度であることです。「包括的(ほうかつてき)」とはすべての要素を広く網羅しているという意味です。その意味のとおり、測定対象を特定の病気だけに絞らずに、さまざまな疾患の患者のQOL比較が可能です。さらに、特に持病のない一般の人と比べることもできます。
WHO QOL-26
もう1つが「WHO QOL-26(WHO Quality of Life 26)」です。質問項目は計26問あります。「過去2週間にどのように感じたか」「過去2週間にどのくらい満足したか」などの質問に5段階で回答して、QOLを測定します。26問の質問は、
- 身体的領域(日常生活動作など)
- 心理的領域(自己評価や集中力など)
- 社会的関係(人間関係など)
- 環境関係(金銭関係や生活環境など)
参考:WHO QOL26|心理検査専門所|千葉テストセンター
の4領域に関する質問24問と、QOL全体に関する質問2問から構成されます。
QOLが下がる・低下する原因とは?
QOLは、どんな時に低下するのでしょうか。よくある低下の原因をいくつかご紹介します。
仕事にやりがいを感じない
仕事にやりがいを感じられなかったり、楽しさを見いだせなかったりすると、QOLは大きく下がります。毎日ただ仕事をこなすだけ、帰宅時間を待つだけの繰り返しでは、精神的に満たされません。仕事は人生の2/3の時間を占めます。仕事に満足できていないということは、人生自体のQOLを下げることに等しいといっても過言ではありません。
人間関係の悪化
我々は、日々誰かと接しています。職場では、上司、部下、同僚、取引先など、立場が上になるにつれて、ステークホルダーは増えていきます。自分の本来の力が発揮できない環境や人間関係でとどまっていると、知らぬ間にストレスを蓄積し、日々のQOLを低下させてしまいます。
生活習慣の乱れ
「部屋の乱れは心の乱れ」と言うように、生活習慣とQOLは密接に関係しています。つい日々の仕事に追われて、栄養の偏った食事で済ませたり、睡眠時間を削ったり、部屋を散らかしたままにしたりすると、次第に自己肯定感が下がり、仕事だけでなくプライベートにも悪影響をもたらします。
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の上げ方・向上のコツ
では、どのようなことを意識すれば、QOLを向上させることができるのでしょうか。ポイントを3つご紹介します。
良質な睡眠をとる
適正な睡眠時間は人によって異なりますが、2003年に米ペンシルバニア大学で行われた実験によれば、睡眠時間が6時間の人は、徹夜の人と同等のパフォーマンスしか発揮できないことが明らかになっています。
参照:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12683469/
このように、睡眠不足は脳に大きな影響をもたらすだけでなく、病気のリスクも向上させます。自分にとって必要な睡眠時間を把握し、睡眠の質を高められるよう、寝室は適切な環境を保つようにしましょう。
自身と向き合う時間を増やす
他人に流されず、また比較して迷わないようにするには、自分自身の核を持つことが大切です。日々の仕事やプライベートに追われていると、つい自分の内なる声を疎かにしがちです。「どんな瞬間に快/不快を感じるのか」「何をしている時に没頭ができるのか」「何に恐れているのか」など、自分の心で感じていることを、定期的に書き出す習慣をつけましょう。仕事のモチベーションの源泉ややりがいのヒントを得られるかもしれません。
ストレスを発散する手段を持っておく
例えば、転勤や異動などによって変化した人間関係、炎上プロジェクトの火消しなど、自分ではどうしようもできないトラブルに見舞われることがあります。そういった時に、ただストレスに耐え抜いているだけでは、メンタルに支障をきたします。こうならないためにも、ジョギングやロードバイクなどの運動習慣や、自分の世界に没頭できる絵画や楽器演奏といった趣味など、ストレスを発散できる方法を持っておきましょう。
終わりに
長い人生を生きる上で、QOLが高く保てていると幸福感や満足感につながります。SNSやメディアによって情報が溢れ続ける社会において、他人と比較せずに「自分ならではの幸せの基準」を意識することが、QOL向上の大切なポイントです。心身ともに健康であり続けるためにも、自分にとってのQOLを理解し、維持していくにはどうしたら良いかを考えていきましょう。
この記事を書いたひと
俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya
1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等