平成26年、内閣府によって制定された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」「まち・ひと・しごと創生総合戦略」。これに端を発し、地方創生に関連する事業を行う地方自治体や民間企業が増えてきています。

今後普及が始まる5Gにより、さらに首都圏から地方へ移動するハードルは下がり、より一層、二拠点居住やUターン、Iターン、Jターンといったライフスタイルが普及すると見込まれます。本記事では、あまりスポットの当たらないJターンとライフスタイルについて取り上げ、概要やメリット・デメリットについて解説します。

Jターンとは?

Jターンとは、大学進学や就職といったイベントを機に、生まれ育った故郷から東京や大阪といった都心部に移住したのち、転職、育児、介護などを機に、地元に近い地方都市部へ引っ越す人工還流現象の一つです。ちなみに、Jターンの”J”は「故郷のそばまで帰る」を表しており、何かの言葉の略ではありません。

色々あるターン

Jターンの他にも、Uターン、Oターンなど、似たような言葉がたくさんあります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

Uターン

もっとも馴染みのある言葉かもしれません。地方から東京に移住した人が、転職や出産を機に故郷へ戻ることを指します。

Iターン

東京に生まれ育った人が、地方に移住することを指します。近年は、定年退職した年配層のIターン誘致を行っている例がよく見られます。 このUターン、Jターン、Iターンを総称し、「UJIターン」と呼ばれることもあります。

新しい移住・移働のカタチ

一般社団法人移住・交流推進機構では、多様化した住まい方を再定義し、ターンの新しい呼称を作っています。そのうちのいくつかをご紹介します。

Nターン

Nターンとは、進学、結婚、転職などに合わせて移り住むことを指します。育児を機に、自然豊かな地方都市に行く、介護を機に地元に戻るなどが良い例です。地方都市→都市部、都市部→地方都市、地方都市→地方都市であってもNターンに当てはまります。

Oターン

地方出身の人が東京で進学・就職したのち、地元に帰ったものの、上手くいかず東京に再び戻る現象を指します。地方→東京→地方→東京という様子を”O”と言う文字で表しています。

Vターン

Vターンとは、地方出身の人が東京に移住した後、地元へ戻らずに別の地方都市へ移住することを指します。地方移住する動機が子供の場合は、「C(Child)ターン」となります。

Xターン

特定の地域を拠点に、国内外のさまざまな場所に定期移住し、また拠点に戻るという新しい住まい方を表した言葉。アドレスホッパー、多拠点居住、二拠点居住などがここに当てはまります。

日本の存続のカギは「地方分散型モデル」?

日本はいよいよ「超高齢化社会時代」に突入か

日本で喫緊の課題とされているのが少子高齢化です。国立社会保障・人口問題研究所が発表したところによれば、2030年には人口のおよそ三分の一にあたる3,715万人が65歳以上の高齢者となり、2015年の26.6%と比較すると、わずか15年で5%も増加していることが分かります。ちなみに、高齢化社会とは、WHO(世界保健機構)によって厳密に定義されており、高齢化社会が7%〜14%、高齢社会が14%〜21%、超高齢会社会が21%以上で、日本の深刻な高齢化が伺えます。

<参考:日本の地域別将来推計人口(平成 30(2018)年推計)|国立社会保障・人口問題研究所>

http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/1kouhyo/gaiyo_a.pdf

深刻なのが地方都市です。都市部以上に、高齢化が著しく、若者は都市部へ流出、地場産業の担い手・後継者が不足し、廃業・休業している事業者が増加しています。 この課題解決のカギを握るのが、「地方分散型モデル」です。2017年には、京都大学と日立製作所が産学共同で人工知能を活用し、「地方分散型モデル」を提言しました。このAIによれば、首都一極集中の場合は、財政は回復するが、少子高齢化がさらに進み、格差拡大がさらに広がるという未来シミュレーションを予測しています。

地方創生に関する予算は年々増加

政府も、地方創生に対する予算規模を年々拡大しています。平成29年で総合戦略等を踏まえた個別施策の予算は6,536億円、平成31年では7,668億円となっています。実際に、2020年から、首都圏に住む人で地方で兼業・複業を行う人に、1人あたり交通費を3年で最大150万円を支援する制度を始めることが発表されました。いわゆる関係人口の創出、地方への人の流れを作るということに対し、いよいよ本腰で政府が動き始めていることが伺えます。

参考:<平成31年度予算等・税制改正(地方創生関連)及び地方創生推進交付金の活用のポイント>

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/top_seminar/h31-01-16-shiryou3.pdf

Jターンのメリット・デメリット

Jターンのメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?それぞれ解説します。

Jターンのメリット

慣れ親しんだ土地で暮らせる

故郷から遠く離れた土地よりも、故郷に近い都市部の方がストレスなく生活できます。その土地特有の文化も、どこか懐かしい安心感があります。

親族・友人の後ろ盾がある

起業をする時、出産・育児の時、協力し支えてくれるのはやはり家族や友人の存在です。知っている人がそばにいるというだけで心強いです。

物価が安く、貯金ができる

都心部、特に東京は家賃も物価も高いです。しかし、地方都市であれば家賃は東京の半分程度または半分以下、それだけでなく、新鮮なお魚や野菜を安く買うことができ、キリキリと苦しい節約をすることなく、落ち着いて生活できます。

Jターンのデメリット

年収が下がる

企業口コミ・給与明細サイト「キャリコネ」が行った年収が高い都道府県ランキングによれば、東京都が474万円、神奈川県が442万円、大阪府が438万円と都市部ほど年収が高い傾向にあるという結果が出ています。東京都と、最下位の秋田県の290万円と比較すると、約184万円の開きがあります。物価は安いけど年収も下がるため、実質的な生活水準は変わらず、これが原因で東京や大阪といった都心部に戻ってしまうケースも多くあります。

<参考:年収が高い都道府県ランキング|キャリコネ>

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000193.000018764.html

交通の便が悪い

地方の都市部であれば、自家用車がなくても生活できますが、山間部や海沿いには最寄り駅もなく、バスの本数も少なく、車での通勤・移動が主になります。買い物や遊びに行くにも、首都圏に比べると非常に不便です。

情報のスピードが遅くなる

話題の人や情報が集まるのはやはり東京から。カンファレンスやイベントの規模・数でいっても段違いです。最先端のトレンドをキャッチアップするという意味では、地方では少しスピード感に欠けます。

どんな人にJターンは向いている?

では、どんな人がJターンに向いているのでしょうか?それは、以下のような人になります。

ゆったりとした環境で子育てをしたい人

都心部で問題になっているのが待機児童です。厚生労働省が行った、「保育所等関連状況取りまとめ(平成31年4月1日)及び「子育て安心プラン」」の集計結果によれば、待機児童数は4万7,198人で、東京都が最多で9,833人、ついで沖縄2,783人、埼玉県2,480人、千葉県2,373人、神奈川県1,596人と、ほぼ関東地方に待機児童が集中していることが分かります。

<参考:「保育所等関連状況取りまとめ(平成31年4月1日)及び「子育て安心プラン」」の集計結果>

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176137_00009.html

地方都市であれば、待機児童問題に頭を悩ませることもありません。また自然豊かな環境で、のびのびと子どもと遊ぶことができます。

年収よりもワークライフバランスを重視したい人

総務省統計局が行った社会生活基本調査平成28年版をもとに作成した『夜更かし!?ランキング 』&『通勤・通学時間が長い!?ランキング』によれば、通学・通勤時間全国トップが神奈川県の1時間45分でした。東京都は1時間34分で、関東地域がトップに入るのに対し、最も低い大分県は57分と、48分も開きがあります。自宅からすぐ近くに職場があることで、より家族との時間、趣味の時間を捻出でき、充実したライフスタイルを構築できます。

<参考:『夜更かし!?ランキング 』&『通勤・通学時間が長い!?ランキング』|総務省統計局>

http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/rank/index.html

Jターンで変わる働き方

リモートワーク・テレワークといった場所にとらわれない働き方が普及すれば、仕事ではなく「住む場所」を起点に、働き方を選択する人が増えるでしょう。来年は気分を変えて伊豆へ、子どもができたから自然豊かな軽井沢へ。ライフステージに合わせて働き方を選択できる。それが当たり前になる日もそう遠くないかもしれません。