HRBPは、CHROとともに新しい人事用語で、近年注目されている言葉です。しかし、HRBPの業務は多岐にわたり、どのようなポジションかよく分からない方も多いのでは?本記事では、HRBPとはそもそもどういうポジションなのか、HRBPと人事の違い、HRBPの仕事内容について詳しく解説します。

HRBP(HRビジネスパートナー)とは?

HRBPとは、Human Resource Business Partnerの略で、HRビジネスパートナーとも言います。経営戦略を理解し、それを下地に事業成長を人事面からサポートする役割を果たします。決められた仕組み・制度の中で人材管理するだけでなく、人事のスペシャリストとして、組織、人材のパフォーマンスを最大化させ、事業計画を遂行することがミッションです。

HR総研が2018年に行った調査によれば、戦略人事の重要性について「非常に重要」が37%、「重要である」が42%と、79%が重要と認識しているのにも関わらず、人事部門が戦略人事の役割を果たせているかという質問に対しては、「あまり果たせていない」が46%、「全く果たせていない」が22%と、現実と理想の乖離があることが見て取れます。

また、HRBPという役割について、「知っている」は28%、「聞いたことはある」が29%と、まだまだ認知度が低いことが伺えます。

<参照:【HR総研】人事の課題とキャリアに関するアンケート調査|「ProFuture株式会社/HR総研」

https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=209>

新しい人事組織「HRビジネスパートナーモデル」

HRビジネスパートナーモデルは、1990年代にミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が提唱したフレームワークです。ウルリッチ氏の著書「MBAの人材戦略」によれば、HRビジネスパートナーモデルには以下の4つの役割があると定義しています。

・戦略パートナー・・・経営戦略・事業戦略に基づき人事戦略を構築するビジネスパートナー

・管理のエキスパート・・・人事施策の管理、遂行、運営などを行う

・従業員のチャンピオン・・・メンタルケア、キャリア開発など従業員に対する支援を行う

・変革のエージェント・・・人事戦略を推進するために、必要な人材を育成し組織の変革を導く

この理論の発表から数十年が経ち、今では、HRBP(HRビジネスパートナー)、COE(センターオブエクセレンス)、HRSS(HRシェアードサービス)の3者が連携しながら、業績向上、事業拡大を目指す「3ピラーモデル」に変容しています。各役割については、後述します。

HRBPと密接に関わるCOEとHRSSという役割

前述した「3ピラーモデル」を考える際に重要なのが「COE」と「HRSS」という役割です。COEとはCenter Of Excellence(センターオブエクセレンス)の略で、「報酬や人材育成などの専門家集団」のことを指します。HRSSは、Human Resource Shared Service(HRシェアードサービス)の略で、HRオペレーションとも。給与計算、福利厚生などの人事に関する業務処理を専門で行います。

なぜ今、HRBPが求められている?

HRBPとは、ここ10年ほどで注目されるようになった役割です。なぜ、今このHRBPが求められているのでしょうか?

経営戦略で人事の役割がより重要に

ダイバーシティが推進されてきた今、バリュエーション豊かな人材をどう活用するか、どのように人材の能力を引き出して最大化するか、企業の手腕が試されます。今まで以上に、人材育成、能力開発といった人事スキルが経営戦略に影響を及ぼします。

▶︎▶︎ダイバーシティが企業に与える影響についてはこちらの記事を参考に

イノベーションの必要性

一定の仕組みやルールの中で、人材管理、給与計算、採用活動など、決められたオペレーションを遂行していれば良い時代は終わりました。急速な時代の流れを捉え、フレキシブルに組織(事業部)の課題を拾い上げ、人事という視点からソリューションを提供する。ときには組織の形を変革するHRBPのようなイノベーター型人材が人事部にも必要になっています。

従業員の定着

少子高齢化に伴い、近い未来に若手の労働人口が減少すると言われています。採用数を増やすのではなく、優秀な従業員を定着させ、全ての人材のスキル・能力を最大化することが重要になります。そのような状況では、経営戦略と関連付けて、かつ俯瞰的な視点で人事戦略を設計できるHRBPの存在が不可欠です。

▶︎▶︎従業員の定着(オンボーディング)についてはこちらの記事を参考に

HRBPの仕事内容

HRBPの目的は、「経営幹部の右腕(ビジネスパートナー)となり、人事戦略を立案・実行すること」です。制度設計や見直しを行い、従業員を効率的にマネジメントするだけでなく、経営戦略・事業戦略の達成にコミットすることが従来の人事の役割と大きく異なります。事業計画に沿って、必要な人材または人材を育成できるリーダーをアサインします。

ただ設計しマネジメントするだけでなく、自ら現場に入り込み従業員に働きかけ、変革を促します。現場の声は、すぐさま経営陣に共有し、反対に経営陣から共有される事業戦略は、逐一現場に共有します。このように「現場と経営の橋渡し役」になることもあります。

HRBPに求められるスキル

HRBPは、人事の基本的スキルにとどまらず、経営陣と対等に議論する力、経営戦略に従って人事計画を立案する力、組織開発、コンサルティングスキルなど幅広いスキルを求められます。

人事経験

HRBPの役割を考えると、最低でも3〜5年の人事経験が必要になります。採用など特定の業務に特化した人材より、給与、労務、教育など幅広い人事業務に携わったゼネラリストが歓迎されます。

提案力

経営陣、事業部に提案する機会も多く、ときには既存体制を打破するパワーも求められます。相手を動かす、伝わる提案ができるかで、本物のHRBPかどうかが決まります。

課題分析能力

的確な人事ソリューションを提案するには、各事業部の業務内容を正確に理解し、課題分析する力が大切です。さらに、経営陣の右腕・パートナーとして、自社サービスや自社のビジネスモデルの理解・把握、マネジメントに関する知見・ノウハウも必要です。

ビジネスに対する理解・知見

さらに、HRBPは経営陣の右腕・パートナーとして、自社サービスや自社のビジネスモデルの理解・把握、マネジメントに関する知見・ノウハウも必要です。

HRBPを導入する際の注意点

HRBPを導入する際は、いくつか注意点があります。HRBPという役割が多岐にわたるからこそ、フレキシブルでイノベーティブな改革が実行できますが、役割を定義しないことは、かえってHRBPがうまく機能せず、かえって社内を混乱させる原因にもなります。

名ばかりの”HRBP”になっている

HRBPと役職名を変えただけで、実質は人事マネージャー、人事ゼネラリストと業務内容が同じになっているのはよくあるケースです。また、ビジネス事業部とHRBPに権力差がある場合、HRBPはビジネス事業部から依頼された業務をこなすことに終始するしかなく、抜本的な状況変化を起こせません。HRBPを受け入れる環境の整備も大切です。

HRBPの役割が不明確

HRBPの役割を採用側が理解していない場合、HRBPに不適格な人がアサインされ、期待以上のパフォーマンスは発揮されません。HRBPを採用する前に、HRBPが自社でどのような活躍をしてほしいか、どんなことに期待しているかを明確にし、それに必要なスキルセットを洗い出しましょう。

HRBPの導入事例

最後に、HRBPを実際に導入している企業の事例や取り組みをご紹介します。

GAP Japan

GAP Japanでは、HRBPを「HRジェネラリスト」と呼びます。HRジェネラリストは、現場の課題をヒアリングし、人事面からの解決策を探ります。また、GAP Japanでは、HRジェネラリストに人事の経験者ではなく、現場の課題をよく理解している現場社員を登用しています。

株式会社ディー・エヌ・エー

DeNAでは、各事業部にそれぞれHRBPを配置しています。DeNAのHRBPは、戦略人事を実践するHRのジェネラリストと位置づけられています。HRBPを導入した当初は、社内での価値を高めるため、各事業部の「御用聞き」に徹し、ビジネス事業部とのリレーションを構築、「ビジネスパートナー」としての地位を確立しました。

カゴメ株式会社

カゴメでは、2017年からHRBPを導入し、現在は3名のHRBPが活躍しています。HRBPの自主性と主体性を重んじるため、カゴメのHRBPにはHR事業部員や各ビジネス事業部の上長以上の意思決定権が渡されます。この結果、「異動に関する満足度調査」では例年満足度が20%台だったのが88%まで向上しました。

まとめ

HRBPは従来の人事とは全く異なり、事業戦略を俯瞰的に捉えて人事課題を発見する経営者に近い立場で動くスペシャリストです。既存の業務をこなし、指示を待っているようでは、HRBPの役割はこなせません。求められているのは“攻めの姿勢”であり、泥臭い”現場主義”なのです。