「オンボーディング」という言葉を聞いたことはありますか?新しいメンバーを早期戦力化する施策で、多くの企業で採用され始めています。しかし、あいまいな言葉でどんなことを意味し、どのようなな効果が得られるか、いまいち分からないという方も多いかもしれません。本記事では、オンボーディングの定義やメリット、導入の方法について解説します。

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、乗船や搭乗を意味する「on bording」から来た言葉です。本来は乗客に対し必要なケアやサポートを行い、環境に適応してもらうプロセスを指します。ビジネスシーンでは、これを入社〜定着までのプロセスになぞらえて、入社してきた社員を組織に順応させて戦力化するまでの一連の教育システムを意味します。

 

もともと、このオンボーディングはアメリカで生まれた考え方で、現在ではメルカリ、リクルートホールディングス、Google、LINEを筆頭に、さまざまな会社で使われています。

オンボーディングが生まれた背景

オンボーディングが生まれた背景には、以下のようなことが考えられます。

・人材が定着しない

・人材不足による採用難

・価値観やライフスタイルの多様化

人材が定着しない

厚生労働省の調査によれば、新卒入社が3年以内に退職する割合は高卒者で39.5%、大卒者で32.8%となっています。

参照:新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)


社風のミスマッチや給与面などの待遇に対する不満、長時間労働など、さまざまな要因が考えられます。この先起こる日本国内の働き手不足の打開策として、メンバーのエンゲージメントを高める施策を今から考えておく必要があります。

人材不足による採用難

2017年に中企業基盤整備機構が1067社を対象に行った調査によれば、人手不足と感じている割合は約73%、そして「はい」と回答したうち「かなり深刻」と回答したのが約20%、深刻が33%と、半数以上が深刻な問題としてとらえていることが分かっています。

 

参照:中小企業アンケート調査報告「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」|中小機構

価値観やライフスタイルの多様化

働き方、価値観、ライフスタイルの多様化により、メンバーそれぞれにフレキシブルに向き合い、組織を形成することが企業に求められていきます。それこそ、ヒエラルキー型組織ではなく、ティール組織に変化するといった抜本的な改革が必要になるかもしれません。

 

関連記事ティール組織とは?ホラクラシーとの違い|新しい組織論と実現方法

オンボーディングで得られるメリット

オンボーディングを行うと、どのようなメリットが得られるのでしょうか?

採用・教育コストの圧縮

オンボーディングの最大のメリットは、採用・教育コストを圧縮できることです。現場のメンバーに新人教育を場当たり的に任せるのではなく、全社でオンボーディングを通して、新しく入ったメンバーを迎え入れることで、早期離職の割合も減り、採用コストも無駄にならず、また早期に戦力化させることができます。

職場におけるストレスの緩和

オンボーディングでは、新しいメンバーが会社に馴染めるよう全力でバックアップを行います。新しいメンバーは孤立を感じずに、すぐに疑問に解消でき、周りの協力を得ながら、早期に仕事を覚えることができます。また、新しいメンバーがいち早く環境に適応することで、既存社員のモチベーションにも好影響を与え、全体の離職率低下にもつながります。

売上のアップ

新しいメンバーが環境に順応することで、既存社員との連携もとれるようになり、業務効率がアップします。教育の期間が短縮できることで、研修担当のメンバーの負荷も減り、結果全体の売上アップにつながります。

オンボーディングを行う手順

オンボーディングの具体的な進め方は下記の通りになります。

課題を可視化する(現状分析)

紙のアンケートやサーベイツールを使って、課題を集積します。それぞれの部署にどのような課題があって、どのような人材が不足しているかを把握し、採用戦略や人材育成のプランを構築します。

オンボーディングプログラムの作成(計画)

集めた課題を参考に、オンボーディングプログラムを作成します。人事部だけでなく、配属先の各部署と連携し、どうしたら中途を含む新しいメンバーがカルチャーや社内規定をいち早く理解し順応できるかを考えます。

オンボーディングプログラムの実行

あくまで、オンボーディングプログラムは「新しく加入したメンバーを定着させるプロセス」であり、明確な答えや使い方はありません。特に大切なのは、組織独自のカルチャー、ルールなど、新しいメンバーがハードルと感じることをすぐに解消できる体制を作ることです。そのためには、例えば上とのつながりを作れる「メンター制」や、横のつながりを構築できる「同期コミュニティの形成」など、その組織・社風にあった方法を採用し、チューニングしながら実践します。

オンボーディングを成功に導くポイント

新卒に限定しない

オンボーディングの目的は、新しいメンバーの早期戦力化です。たとえ中途社員であっても、今までと違う環境に順応するまでには時間を要します。受け入れる現場に任せっきりにするのではなく、会社全体でオンボーディングを実施しましょう。

現場と連携する

経営陣がオンボーディングを理解していても、受け入れる側の現場が認識・把握していないと、オンボーディングはすぐに形骸化してしまいます。人事部だけでなく各部署と連携をし、事前にどう受け入れ体制を作るか決めることが大切です。

オンボーディングの導入事例

最後に、オンボーディングを採用している企業事例をご紹介します。

グーグル株式会社

グーグル株式会社は、2011年と早い時期からオンボーディングを採用しています。グーグルでは、それぞれの業務に即した緻密なオリジナルのオンボーディングプログラムを作っています。どんな人材が欲しいのか、どんなスキルを身につけて欲しいのかという部分を明確にした上で、そこから「面談の相手」や「いつ歓迎会を行うか」といった見落としがちな細かい項目も全て決めていきます。

LINE株式会社

年間300人とハイペースで新しいメンバーがジョインしているLINEでは、いかに中途社員に環境に順応してもらい、即戦力化してもらうかが目下の課題になっています。LINEは環境変化が激しいため、新しく入社したメンバーもすぐに対応できるよう「LINE CARE」と呼ばれる社内システムを導入しています。LINE CAREでは「備品の場所」といったライトなものから、「サービスのこういった部分を改善して欲しい」といったものまで、気軽に問い合わせできます。

株式会社POL

理系学生のダイレクトリクルーティングサービス「LabBase(ラボベース)」を運営する株式会社POLでは、社会人インターン制度を採用しています。

社員20名と同数の20名が社会人インターンとして働いています。社会人インターンは、基本正社員と同じ権限を持たせていますが、「緊急度は低いが重要度の高い業務」が割り振られています。この社会人インターンは4年間で30名が参加し、うち10名が社員として入社、インターンで長く社風や業務内容を見ていることもあって、定着率100%を維持しています。

GMOペパポ株式会社

GMOペパポでは、事業部に一任していたオンボーディングプログラムをやめ、会社全体で取り組んでいます。

GMOペパポが採用している独自のオンボーディングプログラム「ペパポカクテル」では、システムでランダムに割り振られた人とランチに行く「カクテルランチ」、自分がやっていきたいこと、そしてそれを達成するためのアクションプランまで落とし込む「やっていきシート」など、各メンバーが自主的に動けるような仕掛けが随所に施されています。

終わりに

採用において、大切なのは入り口です。入社させたら終わりではなく、オンボーディングを通して、どれだけ新しいメンバーを温かく迎え入れる体制を作れるかがカギです。ぜひ本日の内容を参考にしてみてください。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等