「会議をするけど、いつも議論がグダグダになってしまって、前に進まない」
会議を円滑に進めるためには、ファシリテーションスキルを身につけることが重要です。本記事では、ファシリテーションの概要と進め方について解説します。

 

ファシリテーションとは?

ファシリテーションとは、英語で「グループ活動が円滑に行われるように支援すること」を意味する言葉です。ビジネスシーンでは、会議やセミナーなどの場において参加者の発言を促したり、意見の交通整理をしたりして良い結論に導く技術のことを指します。

従来の会議では、あらかじめ決められたシナリオに沿って司会が進行し、発表担当が報告資料を順番に発表するというものでした。

しかし、現在では簡単にパソコンやスマートフォンを使って社内の人と資料を共有できるようになったため、”報告だけ”の会議は意味をなさなくなりました。より意義のある会議にするには、参加者の意見を引き出し、合意形成に導くファシリテーターの存在が欠かせません。

ファシリテーションの起源

ファシリテーションの起源は諸説あります。1960年代にアメリカでグループ体験によって学習を促進する「エンカウンターグループ」という技法が誕生しました。このエンカウンターグループで、メンバーやグループをサポートする役割を「ファシリテーター」と呼んでおり、これがのちに教育関連やビジネスでも広く浸透するようになりました。

ビジネス分野では、1970年代ごろからアメリカで会議を効率的に進行する「ワークアウト」という方法が開発されました。日本では、2003年8月に「特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会(FAJ)」が設立され、国内にファシリテーターやファシリテーションという概念が知られていきます。現在では、ファシリテーションはビジネスにはなくてはならないスキルの1つとされ、さまざまな企業がファシリテーションスキルを学べる研修や講座を提供しています。

ファシリテーションが重要視されるようになった理由

なぜ、これほどまでにファシリテーションスキルが重要視されるようになったのでしょうか。そこには大きく2つの要因があると考えられます。

価値観や考えの多様化

これには、グローバル化とインターネットの発展が大きく影響しています。今まで私たちはテレビや新聞、ラジオを通じて、主に日本国内の情報を得ていました。しかし、デジタルデバイスの普及により、世界中の情報に容易にアクセスできるようになりました。また、輸送・交通手段の高速・大型化などによって、世界中へより迅速に手軽に移動できるようになりました。

 

特に、日本は単一民族国家で、同じ環境、宗教、文化、国籍を持った人の割合が多いです。だからこそ、今までは価値観や考えを共有できました。しかし、今後は異なる民族、国籍、宗教を持った人たちと、互いの違いを受け入れながら共存していく必要も出てくるでしょう。

 

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そのようなときに欠かせないのが、緩衝材となるファシリテーターの存在です。各人の溝にすっと入り込み、場を醸成するファシリテーションスキルは、今後、会議の場だけでなく、コミュニティ形成やまちづくりなど、さまざまな場面で求められるでしょう。

正解のない問題の増加

VUCAと呼ばれる先の見えない混沌としたビジネス環境では、課題解決は困難を極めます。

 

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従来はスペシャリストと呼ばれる人材が、縦割りとなった各部署でそのスキルをいかんなく発揮し活躍していました。しかし、課題が高度化している今日においては、スペシャリストとジェネラリストを併せ持ったT型人材や、専門性を持った人材の連携が重要になってきています。

 

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異なるスペシャリスト同士の意図を噛み砕き、橋渡し役となるのがファシリテーターです。縦割りになった部署の壁を壊し、対話を促し解決に努めることができれば、お互いの化学反応によって多大な力が生まれます。

ファシリテーターと司会役の違い

ファシリテーターとは、ファシリテーションスキルを使って会議や研修、ディベートなどのシーンで参加者が意見しやすい場を醸成し、良い方向に導く役割をもつ人のことを言います。ファシリテーターに似た言葉に司会役があります。司会役は、あくまで会議を円滑に進めて時間通りに終了させるのが主な役割です。議論の質や合意形成などには関与しません。<>/b

ファシリテーターは、司会役のように会議進行をすることもあれば、議論が停滞したら話題を切り替えたり、あまり話せていない参加者に話を振ったりして会議の場をマネジメントします。ときには、意見を深堀りして真意を探ったり、集まった意見を整理したりして、相互理解を促します。

ファシリテーションのメリット

ファシリテーションをビジネスに活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

議論の活発化

ファシリテーションが参加メンバーの士気を高め、的確な問いを設定することで、議論が活発になり、新しいアイデアが生まれやすくなります。

モチベーションの向上

自分の意見やアイデアを出したいけど、上司の目が気になってなかなか発言しにくい若手メンバーもいるでしょう。ファシリテーターは、そういった若手メンバーにも気を配り話しやすい空気を醸成します。今までは、”いるだけ”だった若手メンバーもモチベーションが上がり、積極的に問題提起やアイデアを出すようになります。

会議の生産性向上

多様な価値観や意見が混ざりあうと、収集がつかず、重要な論点が話し合われないまま次回の会議に持ち越される……といった状況が起こることもあります。

 

ファシリテーターは、議論の前にまず目的を整理し、それに向けて話すべき論点の優先順位を組み立てます。ファシリテーターが場をコントロールすることで、見当違いな方向に話が逸れることもなく、時間通りに会議が終了し、目的に向けた生産的な議論ができます。

納得感のある合意形成が生まれる

会議では、どうしても権限を持ったメンバーの発言が採用されがちです。しかし、ファシリテーターがまんべんなく参加メンバーの意見や考えを引き出し、それを1つの結論にまとめるため、納得感の高い合意形成が生まれます。

ファシリテーションに必要なスキル

ファシリテーションをするには、人の意見を傾聴する力、正確に考えや意見をとらえる力、わかりやすくまとめる力など、幅広いスキルが求められます。

核を引き出す質問力

質問によってメンバーの意見や考えの具体化・明確化はもちろん、議論が停滞したときには、メンバーに気付きを与えるような鋭い質問をして、場を刺激します。

傾聴力

なかには、話すことが苦手なメンバーもいるでしょう。しかし、沈黙を怖れて相手の言葉を待たずに、代弁するのは控えましょう。これをしてしまうと、そのメンバーはファシリテーターに不信感を抱いてしまいます。発言しようとしているメンバーがいたら焦らずに待ちましょう。発言が始まったら話を遮らずに傾聴しましょう。

正確にとらえる力

「正確に」というのは、自分の思い込みや固定概念を一切挟まず、事実に基づいて意見をとらえるということです。また、議論とズレた意見であるかの見極めも非常に重要です。正確にとらえることができないと、目的からズレたまま議論が進んでしまうからです。

論点を整理する力

これはロジカルシンキングとも言い換えられます。ファシリテーターは、どこまで議論が進んでいて、どの部分の話が煮詰まっていないのかを逐一把握する必要があります。特に、参加メンバーから方向性の違う意見がたくさん出ている場合、どのようにカテゴライズし収束させるかは、まさにファシリテーターの腕の見せ所といえるでしょう。

ファシリテーションのやり方・コツ

最後に、ファシリテーションをスムーズにすすめるやり方・コツをご紹介します。

会議のゴールを明確にする

会議が停滞したり、結論が出なかったりするのは、ゴールが明確になっていないからです。会議のゴールは、「結論を出す」だけに限りません。アイデアが足りない場合は、「アイデアをたくさん出す」がゴールになることもあります。

意見を出しやすい雰囲気を醸成する

良い会議にするには、とにかく参加メンバーから多くの意見や考えをもらいましょう。アウトプットの質よりも量も重視するなら、「出てきた意見を否定しない」といったルールを設けるのも良いです。意見がなかなか出ずに、場が停滞している場合は、もっと答えやすくするために、問いのハードルを低くしてみましょう。

意見を整理する

ファシリテーターが各意見を正確にとらえられていないと、目的から逸れた誤った結論に進んでしまいます。意見の整理は、ファシリテーターだけで行わず、メンバーに意見を求めながら進めていきましょう。

合意形成

ファシリテーターがやりがちなのが、あらかじめシナリオを作り、そこに誘導するように議論を進めることです。多少のハンドリングは必要ですが、これでは参加メンバーが納得する結論は得られませんし、「ファシリテーター任せ」になってしまいます。

 

ただ、会議終盤まで意見がバラバラで、時間内にまとめ切れないこともあります。そういった事態を防ぐために、あらかじめ合意形成の方法を決めておきましょう。合意形成の方法は、できる限り多数決など平等な方法を採用すると良いでしょう。

おわりに

ファシリテーションスキルは、会議だけでなく、ビジネスコミュニケーションやプロジェクトマネジメントなど、あらゆるシーンで活用できるスキルです。ぜひ本日の内容を参考にしてみてください。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等