生活に必要なものをすべて車に積んで生活する「バンライフ」。テレワークの普及で、場所や時間にとらわれずに働ける人が増えたこともあり、昨年ごろから注目されているライフスタイルです。そこで今回は、バンライフで日本全国を旅しているインスタグラマーのぴち家(travelife_coupleさんに、バンライフを始めたきっかけや魅力などについてお伺いしました。

 

自宅を持たない暮らし「バンライフ」の魅力を、実践者であるインスタグラマー「ぴち家」さんに聞いてみた

 

学生時代から、場所にとらわれない生き方に憧れていた

ーー今されている仕事内容について教えてください。

インスタグラムやブログでお得情報や旅情報の発信とネットショップの運営をしています。最近は、企業からお仕事のお話をいただき、地域や商品の魅力の発信も行っています。バンライフは昨年から準備をはじめて、今年の3月から本格的に活動しました。

 

ーーもともと、バンライフに興味があったのでしょうか?

学生時代から、世界中を旅しながら暮らす生き方に憧れていました。空いた時間を見つけては、海外旅行をしていました。就職してからは、仕事に追われる日々で理想の生活をイメージするだけで、なかなか具体的なアクションを起こせず……。

 

しかし、コロナウイルスで会社もテレワークとなり、自分がしたいことはなんだろうと改めて見つめ直す機会となりました。夫婦二人で話し合った結果、「こういう状況だし、やりたいことがあるなら悔いのないように叶えていこう」ということで、目標に向けてチャレンジすることにしました。

 

ーーインスタグラムのアカウントは、いつ頃開設したのでしょう?

アカウントを開設したのは1年半前ですね。もともとインスタグラムは「働きながらでも世界一周できる」というコンセプトで運用していたので、インスタグラム発信そのものが仕事になると想像していませんでした。なので、最初は自分たちが週末に行った海外のスポットや旅行に役立つグッズなどを紹介していました。しかし、ある時期からインスタグラムが伸び始めたんですね。そこで、昨年10月くらいから全力を注いでみたところどんどん伸びていき、去年の10月にはフォロワーが1万人を突破しました。そのあたりから、徐々に企業から声をかけていただく機会が増えていきました。2020年5月現在で、フォロワーは17万人を突破しました。

 

ーー1年半で17万人……!すごいですね。どうやってそこまでアカウントを大きくしていったのでしょうか。

最初からインスタグラムで行こうと考えていたわけじゃなくて、ライターやプログラマー、動画編集など他の選択肢も見たりチャレンジしたりしていました。ただ、あるときにインスタグラムでものすごくヒットした投稿があったんですね。そこで「こんなに色んな人に見てもらえるなんて楽しい!」となって、試行錯誤を繰り返すうちに、徐々に多くの人に見てもらえるようになり、それに伴って多くの方にフォローして頂けるアカウントになりました。

 

ーーインスタグラムの発信は役割分担されているのでしょうか?

最初は特に考えていなくて、妻が主体で投稿の作成をしていました。はじめは趣味だったので、投稿もしたりしなかったりで、よく喧嘩のネタになっていましたね(笑)今は、発信内容の選定や企業とのやり取りは僕がしていて、妻がそのプランをもとに投稿内容を作成しています。

バンライフと出会ったきっかけ

ーーバンライフはいつ頃から始めていますか?

去年の12月にバンを購入して内装をカスタマイズし、3月から本格的にバンライフを始めました。そこからはずっと旅に出ています。

 

ーーバンライフに出会ったきっかけは?

2019年頃に、YouTubeで「タビワライフTV」や「とおるんよしみん VANtuber」といったバンライフで世界や日本を周っている方を見て、刺激を受けたのがきっかけです。当時は踏み出すきっかけもなく稼ぐノウハウもなかったので、特にバンライフに向けて具体的なアクションは起こしていませんでした。

 

それに当時、妻は「冒険するような人生はしたくない。週末旅行ができればいい」と考えていたんですね。僕も「仕事をやめるのは怖いし、仕方ないかな」とモヤモヤしながら生活を続けていました。

 

しかし、コロナで週末に海外に行けなくなってしまって……。今こういう状況だからこそできることはなんだろうと考えたときに、バンライフなら密にもならないし、場所にしばられない生き方ができるということで、チャレンジすることにしました。

 

ーーバンライフは、まだまだ一般的ではないライフスタイルですが、バンライフをすると決めたとき、ご両親の反応はいかがでしたか?

僕の親は、最初「なんで仕事をやめちゃうの?もったいない」とびっくりしていましたが、最終的には快く送り出してくれました。妻の親も、「コロナでこの先やりたいことができるかわからないし、後悔のないようにやりたいことをやってみたら良いんじゃない?」と好意的に捉えてくれました。

 

ーー友人の反応はいかがでしたか?

友達は「面白いことしているね」や「がんばれ」と応援してくれて、思った以上に温かく受け入れてくれていると感じました。

 

バンライフのメリット・デメリット

ーーバンライフはテレビでも取り上げられる機会が増えています。どこでも自由に行けて密を避けられるなど魅力にフォーカスが当たりがちです。体験者だからこそわかるバンライフの悩みや苦労、大変な部分についてぜひお聞きしたいです。

車が生活拠点になるので、洗濯はコインランドリー、お風呂はネットカフェや銭湯などを使うことになるので、場所探しに苦労しますね。

 

ーー寝る場所はどうされているのでしょうか?

近くのコインパーキングやフリーパーキングスペースに止める必要があるので、同じく確保が大変です。

 

ーー他に不便と感じることはありますか?

遮光カーテンがあるのでまぶしくはないのですが、暖かい季節になると、気温も高くてどうしても熱がこもってしまうのが難点です。

 

あと、電波の問題は切実ですね。山奥だと圏外になることもあって、仕事したい日はなるべく電波の届く場所にいるようにしていますね。

 

ーー確かに、電波がないと仕事に支障をきたしますよね……。あと、ご飯が気になったのですが、毎日外食はちょっと疲れるなと思ったのですが、どのように工夫されていますか?

一応、バンの中に自炊できる環境はあるのですが、移動や仕事であっという間に時間が経って、結局外食になってしまっていますね。観光すると、どうしてもその土地の食べ物を食べたくなるのが良い面でもあり、悪い面でもありますね(笑)。

 

ーー反対に、バンライフの魅力やメリットはなんでしょうか?

朝起きるたびに違う景色を見られて、新鮮な気持ちになれることと、終電を気にせずゆっくりできるところですね。昨日は高知の山奥にいて、星空がとてもキレイでした。きれいな星を見ながら寝て、また自然の中で朝目覚める。毎日、新しい経験ができて刺激的で楽しいです。

 

ーーバンライフをする前とした後でのギャップはありますか?

もっと暮らしにくいかなと思っていましたが、ホテル並みのマットレスも積んであるし、車内にゲームやプロジェクターを設置していますし、キャンプ場でも外でゆっくりご飯食べられるように机と椅子を積んでいるので、かなり快適に過ごせています。その点に関しては、良いギャップでしたね。

 

ーー1日のスケジュールはどんな感じでしょう?

7時〜8時の間に起床して、そこから12時くらいまでバンの中で仕事をします。その後、昼食を済ませてどこかへ移動したり観光したりして、また18時くらい〜21時くらいまで仕事をします。21時頃からお風呂を探して、0時までに寝る場所を探して就寝するという生活が基本です。

 

ーー7時に起きて0時に寝るって、だいぶ健康的な生活ですよね。

そうですね。バンライフを始めるまでは深夜2時くらいまで起きていましたが、バンにいると遅くまで仕事していてもしょうがないと思うようになってきました。都会のせかせかした過ごし方から、田舎のゆったりした生活スタイルに変わってきたのかなと思っています。

バンライフでは、中古車選びと、内装DIY業者選びが重要!

ーー使っている車のこだわりについて教えてください。

とにかく家のように暮らせる車を選びました。バンライフといえば、ハイエースが基本なのですが、その中でも室内高のあるハイルーフタイプにしました。

 

ーー内装は誰にカスタマイズしてもらったのですか?

そうですね。基本的な部分は知り合いのとても親切な方にカスタマイズしてもらって、棚はその方に教わりながら自分たちで設置しました。それでDIYのノウハウを学べたので、最近、自分たちでプロジェクターを取り付けました。

 

ーー初期費用はどのくらいかかりましたか?

僕たちのケースでいうと、中古車のハイエースが140万円くらい、内装費が60万円くらいで、トータル200万円ほどです。しかし、これは相場をしっかりチェック・吟味したうえで購入したので、普通だと400~500万円くらいはかかってしまいます。

 

内装にかんしては、60万円の中に水道設備代や冷蔵庫代も含まれていたので、かなり良心的な値段でした。相場ならこれの3倍はすると思います。このほか、車内に積む冷蔵庫やマットレス、バッテリーを含めると、さらに金額がかかります。

 

ーーこれからバンライフを始める人に、ポイントを伝えるとしたら?

バンライフ用の車や内装業者さんの情報が少ないので、YouTubeで調べたり知り合いが頼んでいる業者を紹介してもらったりすることが重要です。特にバンライフ用にDIYをしてくれる業者が少ないんですね。僕たちは、運良く格安で内装の工事をしてくれる方と出会えましたが、施工費がキャンピングカーの購入費用と同じくらいになるケースも多いです。完全に自分たちでDIYすれば費用は抑えられますが、その分時間がかかるので、どこまで自分たちでするか、時間とお金のバランスで判断すると良いです。

 

ーー今後の展望について教えてください。

今はこういった状況なので、なかなかアクティブに観光はできませんが、落ち着いたらさらに日本中の観光地やホテルを巡って魅力や情報を発信していきたいなと思います。海外にも行けるようになったら、かねてからの夢だった世界一周にもチャレンジしたいです。その過程で、将来移住したいと思える場所が見つかれば良いなと思います。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等