フリーランスという言葉を聞くと、会社員時代に培ったスキルやネットワークを活用し、事業を展開するというイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。今回紹介する中新さんは、大学を卒業したあと就職せずに、そのままフリーランスになった新卒フリーランスです。YouTuberやインフルエンサーなどが一般に認知されるようになり、学生からそのまま起業やフリーランスになるケースは身近になっているようです。

 

「SNSやメディアなどで新卒フリーランスというキラキラした言葉の印象だけが先行し、実態がなかなか語られていない」と中新さんは語ります。

 

そこで、本記事では中新(@writer_DN)さんに新卒フリーランスという立場で感じた苦労、仕事で大切にしていることなどについてお聞きしました。

 

大学2年生でライターを始め、新卒でフリーランスに。

ーーまず今の仕事について簡単に教えてもらってもいいですか?

 

フリーランスでライターをしています。主に、プレスリリースの記事作成や新商品のキャッチコピー、SNSのコンテンツ作成などを担当しています。また、ソーシャルゲームのキャラクター設定や名前・セリフを考えたり、チャットボットの回答を作成したりする仕事もしています。

 

ーー大学生からライターをされていたんですよね。

 

そうです。大学2年生の頃から始めました。僕が最初にした仕事は、ゲーム攻略情報のまとめサイトの記事執筆でした。スマートフォンゲームの攻略情報を書いたり、海外サッカーのコラムを執筆したり、まずは好きなことから始めてみました。

 

ーー学生だと、ライターという仕事に馴染みがないと思うのですが、ライターを知ったきっかけは?

 

学生時代に本屋さんでアルバイトをしていた頃に、自己啓発のコーナーに「インターネットで稼ぐ!」みたいな本があって、その本にクラウドソーシングやライターについて書かれていたんですね。いつでもどこでも働けるようになりたいし、文章書くのも嫌いじゃないし、ひとまずやってみようと思ったのが最初のきっかけですね。

 

ーー就職してから、複業でライターをする選択肢もあったと思うのですが、なぜフリーランスになろうと思ったのでしょうか?

 

ひとつは僕の生い立ちに関わるのですが、中学生まで親が共働きで、兄弟と一緒に家で親の帰りを待つ時期が長かったんですね。なので自分の子どもにはあまりそういう思いをさせたくなくて。せめて、参観日や運動会といった行事には参加したいじゃないですか。

 

僕の結婚相手は看護師で不安定な働き方をしているので、僕がフリーランスならバランスをとれるかなって。また、地方で就職活動しようとするとあまりに選択肢が少ないんですね。悩むこともできないのがすごく嫌で。

 

だったら、その選択肢に新卒フリーランスがあってもいいと思ったんですね。いきなり新卒でフリーランスという例がなかったので、それをやってみたかったんです。

新卒フリーランスの現実は甘くなかった。手探りで経験を積む日々

ーーいよいよフリーランスになるわけですが、最初の1、2年目は大変でしたか?

 

きつかったですね。その頃はまだ実家にいたので生きてはいけるんですが、企業に就職した同級生たちは少しずつ昇進していくなか、収入がなかなか増えずに焦りを感じていました。夜中は布団の中で泣いたこともありましたね(苦笑)

 

ーー他にも、駆け出しの頃の苦労エピソードがあればぜひ教えてください。

 

例えば企画書を書いて次は誰かに稟議を通して……みたいな事業を計画して実装されるまでのプロセスを知らずにフリーランスになっているので、例えば僕がキャッチコピーのお仕事をしたときも、どういう情報を掲載すれば稟議が通りやすいのか、そういった部分をまったく理解していなかったので、知っていたらもっと効果的に提案できたと感じています。

 

ーー社会経験がないなかで、どのように経験を積んでいったのでしょう?

 

ライティングという部分だと、とにかく人の記事を読むようにしていました。見出しの付け方、話題の切り替え方みたいなテクニックをインプットし、自分にあった型に落とし込むというのを繰り返していました。

 

特にキャッチコピーの仕事はセンスによる部分が大きいんですけど、パターン化されている部分もあるんですね。例えば韻を踏んだり、文末を格助詞で終わらせたり、句読点をうまく打ったりするだけでもキャッチコピーっぽくなるんですね。

 

ライティング以外の営業や交渉も一緒で、いろいろな人の話を聞いたり、実際に営業をするなかでクライアントの反応を見て、改善していくような感じでしたね。

 

ーー途中で辞めたいとは思わなかったんですか?

 

クライアントさんが喜んでくれたり、自分のキャッチコピーがついた商品パッケージがお店に出たりしたときは、生みの苦しみを経た分喜びも大きくて。

 

あと、気分転換に北海道を2、3週間車中泊しながら周って仕事していた時期もありました。趣味の時間もとれるようになったので、何だかんだやめたいと思ったことはないですね。

 

ーー実際に独立してみて、フリーランスに対するイメージは変わりましたか?

 

フリーランスは個人戦のイメージがありましたが、SNSで発信したり、いろいろなライターさんと交流したりと思った以上にさまざまな人と関われると思いました。悪いギャップでいうと、働きすぎてしまうことですね。周りに上司や部下、同僚がいないので、どれだけ働けばいいかわからないんですよね。

 

ーーたしかに、駆け出しの時期はセルフブラック企業化しがちですよね。僕も20代の時に独立していますが、わからないことが多い分、周りの人が教えてくれて失敗も許容される感じはありますよね。

 

そうですね。いろいろな方に助けられました。ただその反面、大学生の頃は「学生だからといってなめるなよ」と言われたり、「教えているんだから安い金額でやってよ」と言われたことはありましたね。

 

ーー値切りを断れない人もいると思うのですが、切り抜け方はありますか?

 

金額の最低ラインを設定して、それを下回ったらきっぱりと断るようにしています。もちろんクライアントの事業規模やキャッチコピーを書く商品の価格帯を加味しながら金額は設定するようにしています。安売りしていると、「安く頼めるんだ」というイメージが周りのフリーランスにもついてしまうので、そのあたりはすごく意識しています。

新卒フリーランスのメリット・デメリット

ーー新卒フリーランスの立場だからこそ感じる会社員の魅力は?

 

会社員の方だと、給料という安定した収入が確保できたうえで、副業で他のことにチャレンジできますが、フリーランスだと何か新しいことをするときに後ろ盾がないんですよね。なかなか、ライスワークとライフワークのバランスを取るのが難しいなと思います。

 

あとは福利厚生ですね。僕の同年代は会社員の方が多く、妻も医療関係者で福利厚生が手厚いんですね。何かあったときに頼れるのは精神衛生上いいなと思います。やる気はあっても後ろ盾がないとやりにくいなというのは、結婚してから考えるようになりました。

 

ーー反対に、新卒フリーランスの特権はありますか?

 

何事に対しても身軽ですよね。変な話、経験が少ない分失敗も経験してないので、明確な失敗がわからないんですよ。とりあえず飛び込むフットワークの軽さはありますね。もちろん失敗から得るものもありますが、結局やってみないことには何も始まらないので。

 

また、大学の頃の友人も社会人4年目、5年目になり、今の働き方に疑問や辛さを感じる人もいて、周りから頼りにされたり今までの経験を話したりする機会も増えました。「ロールモデルになりたい」という想いがあったので、今は新卒フリーランスという希少性を活かせているなと思っています。

同じことをしていたらお客さんは飽きてしまう。「消費者目線」を忘れずに提案しよう

ーーフリーランスが継続して稼ぐコツはありますか?

 

消費者目線を忘れないようにしています。「サービスページにこんな案内があったら、もっと商品が魅力的に伝わるのに」といったささいな気付きも見て見ぬ振りをせずに、クライアントに逐一伝えていますね。

 

こういったことって、社内だと「提案しても仕事が増えるだけだから面倒だ」みたいに言いにくい場合もあるじゃないですか。しかし、フリーランスという立場なら外から言えるんですよ。結果、それが次の仕事につながることもありますし。

 

日々同じことしていても、お客さんも飽きてしまうと思うので、そうならないようにこちらから提案するように意識していますね。

 

ーーフリーランス5年目ということで、独立当初からどのくらい収入が増えましたか?

 

学生の頃は扶養の関係もありセーブしていたので年収100万円程度、現在では地方20代男性の平均年収の1.5倍以上は稼げるようになりました。

 

ーーすごい……。これからチャレンジする人にとって「20代でもこれぐらい稼げるんだ」と希望になりますよね。

 

個人的には、収入面にあまり魅力を感じてほしくないと思っています。結局いくら稼ごうと自分のライフスタイルに合った働き方ができるのがベストだからです。

 

ーー収入がすべてではないということですね。

 

そうですね。友達に収入について聞かれることがありますが、お金目当てでフリーランスになっても途中で挫折してしま方が多いんですね。それよりは、家族との時間や趣味の時間を大切にしたいなどライフスタイルに紐づいているほうが大事かなと思います。

 

ーー今後の展望について教えてください。

 

他のフリーランスの方と一緒に仕事をしてお互いできないことを補完し合い、もっと大きな規模の仕事や社会意義のある仕事をしていけたらと思います。

 

あと、キャリアに関する話を学生に発信していきたいですね。学校だと仕事に対して考えを深められる機会があまりないですよね。それは「フリーランスになろう」ではなくて、体験談を通して「こういう生き方もあるよ」という選択肢を提示できればいいなと思います。

 

ーー最後に!これからフリーランスや複業を考えている人に一言お願いします。

 

オンライン主体でもコミュニケーション能力は大切です。人と関わりをもつことに積極的になって、人当たり良く接することが大切かなと思いますね。あとフリーランスってすごくキラキラして見えるんですけど、自分のしたい生き方に合うかどうかがすごく大事です。声の大きい人たちのキラキラしたイメージを鵜呑みにせず、自分に合っているかを吟味したうえで決断してほしいなと思います。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等