「マツリカンの声」では、多様なバックグラウンドをもつマツリカのメンバーにマイクを向け、生い立ちやスタートアップに入った経緯、現在の活動、それぞれの個性的な働き方などを多方面から取り上げていきます。
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今回お話を聞くのは、マツリカのVPoC(VP of Corporate)として、経営企画・広報・人事・総務チームを統括する、神 重匠(じん あつよし)さん。マツリカでは“神様(かみさま)”の愛称で親しまれています。
大学院で源氏物語を研究し、システムエンジニアを志して就職。想定外のコーポレート職からカスタマーサクセスを経てマツリカのコーポレート統括へ。一風変わったキャリアの神さんにお話を伺うと、深い自己内省を経てたどり着いた答えを貫こうとする姿が見えてきました。
コーポレートから未経験のカスタマーサクセスへ
ー本日はよろしくお願いします!簡単に自己紹介をお願いします。
苗字が神(じん)なので、みんなからは“神様(かみさま)”と呼ばれています。
変わった苗字なので、メールで「株式会社マツリカ 神様」と書くと「マツリカの神様」に見えるみたいなんです。だからみんな気を遣って“様”をひらがなにしたり、“様”の前に妙な空白を入れてくれるんですけど。私自身は全然気にしてないです(笑)
ーずっと「神」でやってきているんですもんね(笑)神様はいまコーポレート部門のトップで、経営企画、人事、総務、広報を幅広く見ていらっしゃるんですよね。でも入社時はカスタマーサクセスだったとか?
はい、最初はカスタマーサクセスとして入社してるんです。2019年10月から、VPoC(VP of Corporate)としてコーポレート全体を見ることになりました
ーカスタマーサクセスからVPoCへ、どう方向転換したんでしょう?
私は2019年の4月にマツリカに入社したんですが、入社当時、社員数は30人ほどだったんです。それが8ヶ月経った今では60人を超えてるんですよ。半年ちょっとの間に社員数が2倍になってるんですね。
会社規模の拡大に伴いコーポレート部門もそれなりに大きくなってきました。今までは代表の黒佐をはじめとした経営陣がコーポレート全体を見ていたんですけど、守備範囲も広いし見切れなくなったというのがあります。たまたま私が前職で、法務、人事、経営企画などコーポレート周りを満遍なくやっていたので引き受けることになりました。
ーコーポレートからキャリアをスタートし、いきなりカスタマーサクセスに。そしてコーポレートに戻ったんですね。結構変わったキャリアパスですよね。
15年くらい仕事をしてきて、コーポレート以外の仕事をしたのはこの半年だけです(笑)
ー面接を担当した人事が「あの男は絶対に入社させなければならない」と言っていたと聞いています。なぜマツリカにJoinしたんですか?
前職で、チームの進捗管理ツール導入を検討していました。その中で、Senses(センシーズ)の案件ボード(付箋を動かして案件管理する画面)のインターフェイスに惹かれたんです。こんなツールを作るのはどんな会社なんだろうと気になってマツリカにたどり着きました。そこで見たマツリカの“祭り化”の考え方がすごくしっくりきたんですよね。「いい会社がいい商品を作ってるな」っていうのがマツリカの第一印象でした。
その後、トライアル希望のメールを送る時に「“祭り化”の概念についても興味があります」って書いたんです。そしたら商談にいきなり代表の黒佐が出てきて(笑)顧客のはずなのにSensesと同じくらいに祭り化について聞くっていう、そんな商談をしたんですよ。
ーそこで入社したいと?
初回はさすがに言わなかったです。けど、入りたいなって思いました。Sensesの導入自体は難しかったんですけど、商談の後に「実は私、入社したいんです」という話を黒佐にしたんですね。そこからあれよあれよという間に入社が決まりました。
ー新しい!商談転職ですね(笑)!
紫式部に負けて、就職
ーそんな劇的な入社を決めた神様ですが、学生時代は源氏物語を研究していたんですよね。なぜ源氏物語を研究したいと思ったんですか?
高校時代に源氏物語を現代語訳で読んだんですけど、想像以上に面白くて一気に読んでしましました。源氏物語は1000年以上前に書かれたものです。だけど、当時から現在まで、人間の心ってほとんど変わらないんです。物語の後半に、光源氏の没後の世界を描いた「宇治十帖」という10巻があります。その話の中心人物で、光源氏の子供とされている薫(かおる)と自分とを重ね合わせて共感したんですね。宇治十帖の研究をしたいと思って修士課程まで行きました。
ー源氏物語の研究ってどんなことをやるんですか?
文学研究ってなかなか想像しづらいと思うんですが、私がいた研究室では原文を読み込むことをいちばん重要視していました。現代語に翻訳されたものでもあらすじは掴めます。だけど、この言葉は当時どんな使い方をされていたのか、言葉の背景を考えるためには原文をしっかり読み込むことが必要なんです。
たとえば源氏物語の時代に「花」といったら「桜」を指します。桜は儚く散るもの、というような日本人がもつ「桜」のイメージは色々ありますが、そのイメージが確立した背景には、実は和歌があるんですね。
ある言葉の後ろには膨大なことばの世界が広がっています。その広がった世界を見ることで文中の言葉の意味を特定し、じゃあこの文脈ではどういうことを言っているのかということを解釈していくんです。その積み重ねで原文の意味を考えていく研究をしていました。
ー1000年後まで自分の書いたものが研究されるなんて、紫式部も感無量ですね。研究していく中でどのような気付きがあったんですか?
源氏物語を研究して分析すれば色々なことがわかると思っていたんですね。でも紫式部は私より一枚も二枚もうわてで、いくら研究して新しい読み解きができたと思っても「そんなの分かってるよ」と言われているような。これは到底かなわない、もう負けたと降参せざるを得ない。そう思い始めました。研究者になるつもりだったんですけど、マスターで辞めて就職しました。
ー紫式部に負けて就職・・・
紫式部の手の平で転がされているような気持ちでしたね。
システムエンジニアを目指して就職するも、総務へ
ー最初に就職したのはどのような会社だったんですか?
25歳だったんですけど、方向転換してIT業界に行こうと思いIT企業に就職しました。
ーIT企業ですか!? どんな新入社員だったんですか?
新入社員の頃は真面目だったので日経新聞を買っていたんです(笑)。IT系のニュースは追っておこうと、アナログなんだけど、記事をスクラップして分類していました。
スクラップの何が良いかというと、どんな話題が多いのかパッと見ただけでわかることなんです。当時、SaaSやデジタルトランスフォーメーションなんていう言葉はまだなくて、半導体メモリの価格の話など、話題がハードウェア中心でしたね。
ーその会社でコーポレート部門を担当されていたんですか?
そうですね。でも、入社当時はシステムエンジニアになりたかったんです。学生時代にExcelのVBAでフォーム作って遊んでたのでプログラミングに興味があったんですが、きちんとした基礎はなく、会社で技術研修を受けてシステムテストの大変さなどを実感していました。
システムエンジニアになるために入社したので、当然なるものだと思っていました。なのに、最初に配属されたのが総務だったんです。総務ってなんだよ、聞いたこともないんだけどっていうところから始まり、蛍光灯の交換やオフィスのレイアウト変更、売掛金管理などをやっていました。
ーシステムエンジニアになろうと思って入ったのに総務! そこにずっといたんですか?
会社がビジネス系のシステムを作っていたので「お客さんと同じ目線にならないとシステムエンジニアはできない」という社長の考えがあったんです。なので、入社3〜5年くらいはコーポレートの仕事をして、そこから現場に出て行くというのが会社の方針でした。そのままいたら5年後システムエンジニアになれたかもしれません。だけど転職してしまったので。
ーそこで転職した先が前職になるんですね。前職ではどのような業務を担当していたんですか?
そうですね。前職には法務として入社しました。7年くらい法務を担当し、そこから人事、経営企画といろいろと経験しました。
ーじゃあコーポレート周りは全部一人でできるんですね!
経理はちょっと弱いですけどね。あとはだいたい薄く広く。
ーそこまでできたら転職困らないですよね。そんな中、マツリカに未経験のカスタマーサクセスとして入社したのはなぜなんでしょう?
マツリカに入れるなら、仕事はなんでも良かったんです(笑)
一歩ずつ歩くより、理想を目指してポンと飛ぶ
ーすごい覚悟ですね。
でもそれだけ魅力がありましたね。マツリカの宣伝がしたいんじゃないんですが(笑)本当にそれだけの魅力を感じました。
40歳を目前にして自分は何をしたら満足するんだろうかと考えていたんです。さかのぼると高校の頃「自分はなんで生きているんだろう」と考え始め、なんだかんだで4、5年ずっと考えていました。その答えがわかったのが20歳なんですけど、「特に理由はない」という答えにたどり着いたんですね。何をしても自分の自由だっていうのがわかって腹落ちしたんです。
20年近く経ち、忘れていたその問いを思い出しました。「なんのために生きるかは自分の自由。じゃあ何をするの?」10年以上仕事をしてきたけど、一体自分は何をしたいんだろうと考え始めちゃったんですね。
あれかなこれかなって色々と書き出してみたら色々あるんですよ。お金とか名誉とか。確かにお金がたくさんあったら嬉しい。名誉があったら誇らしいかもしれない。でも仮に、なんの制約もなく全部叶えられるってなった時それで満足できるのかと考えたら、金や名誉では満足できると思えなかった。欲深いから。
じゃあ一体自分は何すれば満足できるんだろうって考えた結果、シンプルに「目の前の人を幸せにできれば自分は満足する」という結論に落ち着いたんですね。39歳の時です。一緒に仕事をする仲間が忙しかったり伸び悩んでいたりする時、何か自分に手助けできないかな、と。
それだって人手を割いて丁寧にマネジメントすればできることかもしれない。でもどの会社も人手がない。そのジレンマをどう解決するかについても前職ですごく悩んでいた頃でした。その時、これだけ発達したITのツールがあればこの問題を解決できるんじゃないかと思ったんです。
ちょうどその頃Senses(センシーズ)の存在を知ったので、Sensesを使って、仕事ですごく苦労している状態をなんとかできたら幸せだなあと思ったんですよね。その時は前職でSensesを導入して目の前の人を幸せにしようと思ったんですけど、目の前の2、3人も大事だけど、世の中にSensesを広めたらもっと広くたくさんの人を幸せにできるだろうなと思い、Sensesをやると決めました。
ーすごい。紫式部と戦っていただけあって思考が深いです。
そんなことないです。今でも理想と現実に悩みますよ。
でも最近覚悟したんです。私は理想を貫く、と。
ーその理想というのは?
マツリカの「世界を祭り化する」というミッションです。
ミッション(理想)を掲げても目の前の現実があるじゃないですか。理想は理想だけど、やっぱり目の前の現実を見据えて一歩一歩進んでいくのが大事かなと思っていました。
だけど、一歩一歩で到達できるのって歩ける範囲じゃないですか。本当に理想を追求すればポンといける。だからポンといこうと思って。苦しいかもしれない。時間がかかるかもしれないけど、一歩ずつ歩くより遠くに行けると確信したので、私は理想を目指します。
ーコーポレート部門だけじゃなくて会社全体のミッションを考えてらっしゃるのですね。
経営トップがそうだからね。経営者こそ、現実が見えていて責任もあるから、普通は現実のほうに寄っちゃうと思うんですよ。そこで理想を貫く決断ができるのはすごいと思っていて。そこを難なくやっているからすごく気持ちいいですよね。
ーその中で神様が今やろうとしていることは?
マツリカを祭り化することですね。マツリカの社員が遊ぶように仕事ができる環境を作るのが私のミッションだと思っています。
ついこの間も、オフィスの9階にすごい音響設備ができましたよね。天井にマイクがついてモニターも天井から吊るすような。それを全部自力でQAエンジニアがやっちゃうんですよ。そういう多彩な能力がある人が集まる環境も、能力を活かす空気や文化も、守らなきゃいけないと思っています。規模が大きくなって組織がしっかりしてくるとどんどん失われていくところです。現実を見れば確かにしっかりしなくちゃいけないところもあるけど、そこであえて理想を見ているのがマツリカらしいと思っています。
ーコーポレートのイメージってオフィスを整えることだけど、フルリモート・フルフレックスだからオフィスに人がいないことが多いと思います。一般的なコーポレートの枠から外れた発想が必要になりますか?
本当にそうなんですよ。今までのオフィスなら、「全社員が集まる、必要なことがここで完結する、そんなオフィスとは?」そんな発想をすると思うんですが、マツリカはオフィスに来なくていいし、カフェでも自宅でもどこでも働けるので「オフィスに来なくてもいいけど、来るなら何があると嬉しいんだろう?」という発想になってくるんです。オフィスって働く場所なのかな? と、最近はオフィスの概念について考え始めてますね。
ー神様自身はどのくらいオフィスに行っているんですか?
長机の執務スペースで仕事をしたのはここ1ヶ月で通算2時間くらいですかね。
会議がある時は会議室があるフロアにいることはあります。けど、終わったら帰っちゃうし。カフェとかマックで仕事することも多いですね。
ー結構賑やかそうです!
集中できる環境って人それぞれ違うじゃないですか。私は雑音があったほうが集中できるんです。マック好きですよ(笑)
ー文学部の院まで出ているので、図書室とか静かなところが好きなイメージが勝手にありました。
それぞれが、自分がいちばん生産性高く働ける環境で働くのが大事です。会社としても、どんな環境で仕事してようが成果を出せばいいじゃないですか。だったら成果の出し方は個人に任せるのがいちばん合理的ですよね。
性悪説で社員を信用しないと管理コストばかりかかってしまいます。信用すればいいじゃんって思うんですね。やらなかったら成果が出なくて本人が困るし。マツリカにはサボりたくて会社に来ないという人はいないので、やりたいことをやればいいと思います。
ーマツリカに来る人ってみんな何かしらやりたいことを持っていますよね。
そうそう。だからそれを信じればいいんですよ。経営陣は社員を信じる気持ちがすごく強いです。そうでないとこうはならないです。
ー来年は社員数が100人超えるとか?
人数がどれだけ増えようと「理想を目指すこと」「それぞれがいちばん成果を出せる働き方をすること」この2つは絶対に守りたいですね。
管理はしない。会社の良さを守るコーポレートへ
ー仕事でいちばん楽しいのはどんな時ですか?
何だろうなあ、全部楽しいですよ。かなり大変だけど(笑)
理想を追いかける仕事なのですごくやりがいがありますよね。難しいけど(笑)
ーマツリカを祭り化していきたいと仰っていましたが、「祭り化している」というのはどう計測・判断するんでしょう?
まあ、量んなくてもいいんじゃない(笑)主観で楽しければいいんだから。働いてて楽しいなって思う実感があればそれでいいんだと思います。
ー理想を追いかけたいけど、現実が苦しすぎて絶望したり諦めそうになったりはしないんですか? 理想をやり切った先には何があるんでしょう?
みんな絶望の中に理想を見出すんですよ。理想をやりきったらそれはそれでいいんじゃないですか。唐突にその先が云々という話をするより、日々楽しくもがいていればそれでいいんだと思います。
ーなるほど!マツリカにはビジョンとともにInitiative・Liberty・Creativityという3つのバリューがあります。これらのバリューについてはどうお考えですか?
Libertyは、自由奔放な自由ではなく責任を伴う自由なんですよね。それを実現するには、Creativityが必要です。自由は与えられるものじゃないからInitiativeも必要。普通に考えてできないことをやっていくために、バリューという行動規範があると思っています。3つのバリューを自分の状況に照らし合わせた時、どうすればいいのかを与えられたものではなく自分で考えていく。それが“祭り化”かなあって思いますね。
ー議論しているときもマツリカらしさでやるやらないを決めるのが面白いですよね。意思決定や参加不参加など、一般的に会社から強制されるものも、マツリカでは自分で選べる。
それは会社としてのLibertyですよね。制度を作って当てはめるのはすごく楽。だけど、あえてそれはしない。都度判断していくスタンスを取るのもLibertyですよ。
ーマツリカには色々な多様性があります。その中で会社のベースとなる部分を作っていくのはやっぱり大変でしょうか?
シンプルに多様性を認めればいいんだと思いますよ。その人にとっていちばんいいやり方でやればいいんです。こういうスタンスをどこまで守れるかがコーポレートにかかってきますよね。コーポレートは管理部門って言われたりしますけど、管理なんてまったく意味がないので絶対にやりたくないですから(笑)
ー色々なお話をありがとうございました!最後に、神様から一言お願いします!
理想を諦めない。もうこれですね。
ーありがとうございました!
現在、神さんと一緒に
マツリカのコーポレート部門を担ってくれる仲間を待っています!
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