社会に生きていても、なかなか身近に感じることのない仏門の世界。お寺で働くお坊さんは日頃どのようなことを考え、過ごしているのでしょうか?本記事では、臨済宗建長寺派満昌寺の副住職、永井宗徳(ながい・そうとく)さんにお話を伺いました。

 

「仏教とロックの思想は似ています」満昌寺 副住職の永井宗徳さんが語る仏門で働く魅力

 

前編では、永井さんの生い立ちから、入寺されるまでの経緯について、深堀りしました。後編ではお寺で働く魅力ややりがい、大変なことについて迫っていきます。

ロックと仏教の思想は似ている


――お寺で働く魅力はどんなところでしょうか?

修行にいく前、子供の頃は、葬儀や法事をする仕事と思っていましたが、仏教の教えを学び、それを実践することが本質なんですね。

 

私はロックが好きなのですが、ロックと仏教の思想は似ている部分があると感じます。例えば、THE BLUE HEARTSの甲本ヒロトさんの「幸せを手に入れるんじゃない。 幸せを感じることのできる心を手に入れるんだ」やジョン・レノンさんの「僕がこれまでどうやってきたかは教えられるけど、君がこれからどうするかは自分で考えなきゃ」という名言は、まさに仏教の「「一切唯心造」、自分の価値観は全ては自分の心が作り出しているもの」「「直指人心見性成仏」、自分が生まれ持った仏の心は自分で見つけなくちゃいけない」に通ずる部分、双方つながる真理だと思います。

 

そこは、もしかしたら世間的には大きく知られていない仏教の魅力だと思います。もっと仏教はおもしろくて自由であることを伝えていきたいですね。

 

――「仏教は真面目」と「ロックは不良」みたいに、真逆なイメージを持っていたので、そこが結びつくのは意外です。

誤解を恐れずに言えば、仏の教えが特別何かに生真面目という訳ではないです。「真剣で誠実」ではありますが。「何事にもとらわれるな」という教えがあるくらいなので。もちろんお経をあげたり、掃除したりなど決まったことを続けますが、毎日何か決まったことをするから深く大きな悟りを開ける訳ではないですからね。

 

――今されている人形劇やお寺の紹介動画が、まさに仏教をわかりやすく伝えていく取り組みの1つなのですね。

そうですね。臨済義玄(りんざい・ぎげん)の臨済録の教えを自分達も勉強しながら、皆さんに伝えるために始めました。臨済録には現代にも通じ、我々の糧となることがたくさん書かれているんですね。それを老師ではなくて私たちのような末尾の僧侶がやることに意味があると思っていて。

 

その動画編集をしていたら面白かったので、満昌寺の紹介動画も作りました。お寺に来ても、お寺の歴史や成り立ちをなかなか知る機会がないと思うので、紹介動画があればお寺について理解してもらうことができますよね。

 

――反対に大変なことはありますか?

御供養で生活させていただいている身なので、大変なことと言うと心苦しいですが、一般の方と比較したら少しだけプライベートがないことかもしれません。これは本当にどうしようもないことではありますが、葬儀は突然やって参りますので、すぐに葬儀の段取りを組まないといけないこともあります。

 

私は趣味でバンドをさせていただいているのですが、それは父である住職と相談し、練習日やレコーディングの日を調整しています。

 

家族だから良かったかもしれませんが、血縁関係がない場合は、もうちょっと違った形になっていたかもしれません。とはいえ葬儀優先なので、プライベートの予定を確約できないのが苦労する部分、大変な部分かもしれません。

 

また、ありがたいことに地域の方々には知ってくださっているので、気は抜けないですよね。贅沢しようとは思わないですが、人に見られる職業だと思うので、買い物1つでも気を遣います。

 

「坊主丸儲け」ということわざがあるように、なかには「お坊さんだと、お金いっぱい持っているんだろう」や「高級車に乗っているのか」と言う人もいます。だからこそ、常に謙虚な気持ちでいなければと心がけています。

 

満昌寺が地元の方々にとって、身近な存在であり続けたい

――最近だと、大家族から核家族へと日本のあり方が変わり、徐々に先祖との関わりも薄くなっています。それを象徴するのが檀家制度の問題だと思いますが、永井さんはこの問題をどう思われますか?

そうですね。そもそも檀家制度は江戸時代にできた制度です。離壇(りだん)してほかのお寺に移るのもハードルが高く、今の時代に合っていないと感じる点はあります。しかしお布施や寄付は金額が決まっているわけではないので、日頃から檀家さんとコミュニケーションを取っていれば、大きなトラブルになることはないのかなと思います。

 

今年、副住職になりましたが、檀信徒の皆様全員に「挨拶に行かせてください」という手紙をお出ししました。まずは顔を覚えてもらうところから地道に始められればなと思っています。

 

――地元にとって、身近な存在であり続けるみたいなことですかね。

そうですね。もともと、満昌寺には子供たちが遠足や見学できたり、子供向けの坐禅会や横須賀市内の小学校で坐禅の指導をしているので、そういう活動は継続したいです。

 

――最後に、今後の展望について教えてください。

自分自身の展望は、ただ衣を着て袈裟(けさ)をつける人にはならないようにしたいです。僧侶として職務や役割を果たしたいですね。あとは、公認心理士を取得しているので、今後は心のケアの部分でも何か取り組みができたら良いなと思っています。

 

満昌寺としては、何か新しいチャレンジをすることは考えていません。今あるものを大切にしたいです。

 

例えば、寺をきれいに維持する、檀家さんが来たら笑顔で「良く来てくれました」と対応する、壊れたものはすぐ直す、ご高齢の方がいたら手伝うなど、本当に小さなことの積み重ねを大切にしたいです。檀家さんと良好な関係をこれからも築いていきたいですね。

 

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等