テレワークの普及により、ますます場所にとらわれない働き方が実現しやすくなりました。企業でも、外部人材である複業人材やフリーランスの力を借りて、プロジェクトを進めるケースも増えており、フリーランスも個で動く働き方から、チームやプロジェクト単位で働く働き方に変わりつつあります。
本記事では、フリーランスのチーム化の現状や、チーム化するメリット・デメリットについて解説します。
目次
フリーランスの人口が1,000万人を突破
まず、フリーランス人口の推移から見てみましょう。2020年のランサーズの調査によれば、複業人材を含むフリーランス人口は1,034万人で、昨年の913万人から100万人ほど増加しています。これは日本の労働人口の15%に匹敵します。また、複業などを除くフリーランスの経済規模は調査開始してからはじめて1兆円を突破しました。
参照:フリーランス実態調査2020|ランサーズ
フリーランスがチーム化する「ギルド型組織」とは?
フリーランスがチームを形成し、案件やプロジェクトを受注するケースが増えています。このフリーランスチームは「フリーランスギルド」「ギルド型組織」と呼ばれることもあります。ギルドとは、中世〜近世のヨーロッパで結成されていた職業別組合のことで、現在日本で使われているギルドは、会社の制約や利害関係にとらわれず、最適な能力を持ったプロフェッショナルを結集させ、一つのチームとして機能させることを指します。
フリーランスチームは、編集プロダクションや広告代理店においては、昔から定着していた働き方で、社員または経営者である編集長・ディレクターが陣頭指揮をとり、フリーランスのカメラマン、編集者・エディター、デザイナーなどのチームメンバーが、各専門分野を担当します。近年は、フリーランスだけでなく、会社勤めの複業人材がフリーランスチームの一員として参加するケースも増えています。
なぜ、フリーランスがチーム化するのか?
では、なぜフリーランスがチーム化する動きが加速しているのでしょうか。それには、以下の3つの理由が挙げられます。
理由1.オンラインプラットフォームの普及・定着
まず、理由として挙げられるのがオンラインプラットフォームの普及・定着です。ITが発展する前から、フリーランス同士ではチームを組み、案件を受注することは決して珍しいことではありませんでした。しかし、ランサーズ、クラウドワークス、bosyu、ココナラなどのオンラインプラットフォームの登場により、今まで以上にフリーランス同士が出会う、マッチングする機会が増えています。
理由2.外部人材活用の事例が増えている
働き方改革によって、副業・複業が解禁されました。従業員を採用するよりも、フリーランスに業務をアウトソーシングしたほうがコストメリットも大きく、企業や地方自治体がフリーランスや複業人材などの外部人材を活用する事例が増えています。
理由3.複業人材の増加、フリーランスの飽和化
働き方改革を契機として、複業を始める従業員は増加しています。さらに、テレワークの普及により、場所と時間の制約がなくなった今、二拠点居住×複業、2社正社員、フルリモート社員×海外移住など、自分に合ったワークスタイルが実現できるようになりました。こうなってくると、フリーランスと会社員の境目は徐々にあいまいになり、フリーランスは自身のスキルの差別化を考える必要があります。異なる特性・スキルを保有するフリーランスとチームを組むことで、仕事の幅が広がり、フリーランスとしての価値を高められます。
フリーランスがチーム化するメリット・デメリット
フリーランスがチーム化すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット1.お互いの強みを活かし合える
お互いの強みを活かし、弱みを補完できることが最大の利点です。今まで対応できず断っていた案件も、他のメンバーと協力することで、受注が可能となります。
メリット2.アウトプットの質が高まる/提案できるサービスの幅が広がる
デザイナー、ライター、カメラマン、プログラマー、マーケター、セールスと、チームメンバーが増えるほど、さまざまな視点から、クライアントのニーズを満たせるソリューションを提供ができ、アウトプットの質が格段に高まります。サービスを提供するだけでなく、問題発見や問題解決など深いところから、一気通貫でクライアントに寄り添うことができます。
メリット3.ゆるいつながりが作れる
チーム化はあくまで任意です。売上のノルマなどもありません。利害だけではなく、同じようなビジョンや価値観を持ったフリーランスとゆるくつながることができます。
デメリット1.連携や調整などの手間がかかる
連携や調整が必要になるため、フリーランスの最大の強みである機動力や柔軟性は低くなります。チームメンバーが多くなるほど、コミュニケーションの行き違いやトラブルなどが増える可能性があります。
デメリット2.チームに売上を依存してしまう恐れも
チーム化することで、案件を獲得しやすくなる反面、受注先として依存してしまう恐れもあります。もし、チームメンバーとトラブルになり、チームから離れることになれば、また一人で売上を立てなければなりません。
デメリット3.チームの熱量を保つことの難しさ
チームは、あくまでティール組織として成り立っています。ただ、会社のように利益を追求する必要性もないため、熱量を維持するのは非常に難しいです。制約やノルマが課されれば窮屈になり、チーム化のメリットは消えてしまうため、どのようにチームを維持し運営していくかは、検討する必要があります。
フリーランスギルドの事例
最後に、フリーランスギルドやフリーランスチームの事例をご紹介します。
フィジビリ(ノマド家)
フィジビリは、Webフリーランスを中心としたフリーランスチームです。2020年時点ではメンバーは31人で、多彩なメンバーが在籍しています。特徴的なのが、フィジビリが運営するシェアハウス「ノマド家」です。ノマド家では、入居メンバーが全員フリーランスである点に加え、駆け出しフリーランスを育成するというコンセプトを掲げています。まさに、仕事と私生活を融合させた新しいかたちのフリーランスチームです。
Freelance Now
5000人以上のフリーランスが在籍するチームです。「仕事とつながる、仲間とつながる」ビジョンを掲げ、フリーランスと企業のマッチングの場を創出しています。Facebookグループを中心に活動しているため、基本的には開けたコミュニティですが、入会には審査があります。大手企業の受注実績もあり、注目のフリーランスチームの一つです。
THE GUILD
2012年、UI/UX Designerの深津 貴之氏を中心に、フリーランスメンバー7名によって立ち上がったフリーランスチームです。自身が感じていた個で働くことの弱さ・課題を、チーム化で解決できるのではという背景から誕生しました。もともとの目的であるお互いの案件をシェアするところから、現在では、THE GUILDのメンバーだけでなく、外部メンバーなども巻き込み、より大きな案件に深くコミットしています。
まとめ
フリーランスチームは、他の複業人材やフリーランスとスキルやノウハウの面で差別化を図る、ある種、生存戦略の一つともいえるでしょう。ただし、チームを組み、他の人と共同で仕事をしたほうが力を発揮できるフリーランスもいれば、個人で働く方が向いているフリーランスもいます。あくまで、チーム化は一つの働き方の手段でしかないことは頭の片隅に入れておきましょう。
この記事を書いたひと
俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya
1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等