働き方改革により、リモートワークやテレワークが広く浸透しました。持病がある人や介護・育児などをしながら働く人たちにとっても柔軟に働ける働き方として注目されていますが、近年はリモハラ(リモートハラスメント)というトラブルが社会問題になりつつあります。
ビデオ会議中に女性部下の自宅や服装に言及したり、1対1のオンライン飲みに強引に誘ったりなど、閉鎖空間で行われるため被害が発覚しにくいのが特徴です。本記事では、リモハラ(リモートハラスメント)の定義と起こる原因、対策などについて解説します。
目次
リモハラ(リモートハラスメント)の意味とは?
リモハラとは、リモートハラスメントの略でリモートワーク中に起こるハラスメント行為のことを指します。テレワークハラスメント(テレハラ)とも。リモートワークは、対面のコミュニケーションと比較しても、相手との距離感や会話の間、表情などが察しにくく、制限された情報の中でコミュニケーションを取らなければいけません。
ALL CONNECTが全国の20~50代の男女を対象に行った調査では、リモハラだと思う上司の言動について「カメラを常時接続させる」が86.0%、次いで「部屋全体を映すよう求める」が84.0%、「体型を話題にする」が74.7%でした。
リモハラで悩んでいるのは部下だけではありません。上司に、リモートワークで部下とのコミュニケーションで悩んでいることを聞いたところ、「部下への指示出しのタイミング」が48.7%、「部下との距離感」が48.0%、オンラインで1on1を実施したほうが良いか」が38.7%でした。
参照:全国の20代~50代の男女300名に聞いた 『上司と部下のリモハラ基準に関する調査』
対面のコミュニケーションでは良しとされていた行為も、ビデオ会議やチャットのやり取りではハラスメントに該当する場合があり、今まで以上に相手への気配りが求められます。
また、リモハラは上司から部下だけでなく、部下から上司のコミュニケーションでも起こりえます。リモートワークに慣れていない上司へのからかいや侮蔑などもハラスメントにあたる場合があるので注意が必要です。
法律で定められているハラスメントの定義
長い間パワハラやセクハラなどのハラスメント行為は、日本の社会問題となっていました。セクハラやパラハラによって自殺してしまったり、メンタル不調になって社会復帰できなかったりなど、人一人の人生さえ壊してしまう可能性もあります。
2020年6月には労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメント防止が事業主の義務となりました。(中小企業は2022年4月1日までは努力義務)
パワハラの定義
労働施策総合推進法によれば、パワハラは下記のように定義されています。
・優越的な関係を利用し、無理難題を要求する
・人格を否定する、暴行・暴言を吐くなど業務上の指示を超えた言動
・仕事を離脱させる、職場で孤立させるなどして、意図的に労働者の就業環境を阻害する
セクハラの定義
男女雇用機会均等法第11条では、セクハラは下記のように定義されています。
・意に反する性的な言動が行われた
・性的な言動によって、労働条件の不利益を受けた
・性的な言動によって、就業環境が悪化した、パフォーマンスに悪影響が生じた
参照:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)
リモハラ(リモートハラスメント)の事例
新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが浸透したことで、新たなハラスメント、リモハラと呼ばれるトラブルが発生しています。
プライベートへの言及
例えば、写っている部屋にに飾られたポスターに言及する、着ている洋服やメイクに指摘を入れる、ビデオをオンにすることを強要する、部屋から聞こえる子供やパートナーの声について執拗に問いただすのは、リモハラにあたります。
過度な干渉・監視
業務を適切に遂行できているか、チャットや電話などで都度報告の要求、業務時間外におけるチャットやメールへの返信の強要、業務管理システムを使った執拗な業務監視などが該当します。
意図的な仲間外し
あえてビデオ会議に出席させない、チャットツールのチャンネルやグループに招待しない、業務の連絡に意図的に返信をしないなどが挙げられます。このような行為はパワハラの「仕事を離脱させる、職場で孤立させるなどして、意図的に労働者の就業環境を阻害する」に該当します。
業務と関係のない1対1のビデオ会議への参加を命じられる
業務と関係のないビデオ会議への参加強要は、ハラスメント行為にあたります。双方の合意のもとであれば違法性はありませんが、上司、部下という断りにくい立場を利用して強要している場合は、パワハラやセクハラに該当します。
リモハラ(リモートハラスメント)が起こる原因や背景
リモハラがなぜ職場内で起こってしまうのでしょうか。原因としては、以下の3つが考えられます。
ルールの未整備
コロナ禍により、急ピッチでリモートワークを導入した企業も少なくないでしょう。リモートワークにかんする就業規則を整備しないまま進めれば、従業員も何が適切で不適切かが判別できず、一線を越えてハラスメント行為に及んでしまうケースが出てしまいます。
コミュニケーションの行き違い
リモートワーク下では、情報が制限された中で従業員同士でコミュニケーションを取らなければいけません。責める意図はないのに高圧的と受け取られてしまったり、業務上必要な報告を要求しただけなのに、過度に干渉をしていると誤解されたりと、コミュニケーションの行き違いが多くなります。
職場と自宅が切り分けられていない
ビデオ会議では、お互いの自宅の様子や、普段の服装などが垣間見え、どうしても仕事とプライベートの区別がつきにくくなります。距離が縮まったと誤解し、コミュニケーションが行き違ったまま、ハラスメント行為に発展するケースも存在します。
従業員ができるリモハラ(リモートハラスメント)対策
最後に、リモハラを防ぐために従業員側ができる対策、企業側ができる対策でそれぞれ解説いたします。
従業員ができるリモハラ対策
バーチャル背景を設定する
背景に、プライベートなものが映らないようにすることで、私生活を詮索されることを防げます。仕事に適切したバーチャル背景を設定しておきましょう。また、仕様上、バーチャル背景を設定できない方は極力プライベートなものが映らないように、パソコンの位置や机の高さなどを調整しましょう。
服装・身だしなみに気をつける
部屋着やすっぴんは無防備さを感じさせて、セクハラにつながりやすいです。今すぐ外出できる服装やメイクをするようにしましょう。どうしても、身だしなみを整えられない場合は、画面をオフにするのも1つです。
会議は録画をする
証拠として提出できるよう、ビデオ会議の様子を録画しておきましょう。録画していることがわかれば、露骨なハラスメント行為は格段に減るでしょう。ビデオ会議ツールで録画の権限がない場合は、iPhoneやパソコンの録音機能を使用しましょう。
企業ができるリモハラ(リモートハラスメント)対策
ルールの整備
就業時間外の返信強要の禁止、業務に不要な1on1のビデオ会議の禁止、ビデオ会議の録画の義務化など、リモートワーク下における就業規則を整備することで、ハラスメント行為の戦引きが明確になり、被害が減少します。また、リモハラの被害に遭ったときに相談できる窓口を社内に設置することで、迅速に被害発生から原因特定、事態収束まで実施できます。
サテライトオフィスの設置
サテライトオフィスを設置することで、ハラスメント行為を受けた時点ですぐに周囲にいる従業員に助けを求められるほか、自宅の様子が写ったり部屋着で対応したりすることがなくなり、未然にリモハラを防げます。
終わりに
オンラインのコミュニケーションが主体となったことで生まれたリモハラ。しかし、その根底にあるのは相手への配慮・気遣いです。対面では空気感や雰囲気で許されていたものが、オンラインでは、よりシビアに表面化してしまいます。すべての従業員が、画面の向こう側には人がいるという意識でコミュニケーションをすれば防ぐことは可能です。ぜひ、本日の内容を参考にしてみてください。
この記事を書いたひと
俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya
1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等