MBO(目標管理制度)という言葉を知っていますか?ピーター・ドラッガーが自身の著書、「現代の経営」で言及した組織マネジメントの手法で、現在多くの企業で目標管理の手法として採用されています。本記事では、MBO(目標管理制度)とOKRの違い、使い方やメリット、注意点について解説いたします。

MBO(目標管理制度)とは?

MBOとは「Management By Objective」の略で、従業員が自律的に目標を設定し、それに対しての達成度合いを決める目標制度のこと。MBO(目標管理制度)は経営学者であるフレデリック・ウィンズロー・テイラーが提唱した客観的・科学的に管理し、業務効率を最大化する「科学的管理法」を下地としており、1954年にはピーター・ドラッガーの著書「現代の経営」で 「目標と自己統制による管理」という言葉で語られ、広く知られるようになりました。

日本では、不況の時代といわれた1990年代後半から徐々に浸透し始めました。しかし、当初はあくまで目標達成を測るための成果主義的手法という認識でしかありませんでした。2000年頃からは、本来の「個」を尊重した目標設定のあり方へと変容していきました。

一般財団法人 労務行政研究所が2018年に実施した調査によれば、MBO(目標管理制度)の導入率は79.3%、2001年の64.2%と比べると15%もアップしています。

参照:旧姓使用を認めている企業は67.5%~民間企業440社にみる人事労務諸制度の実施状況~|一般財団法人 労務行政研究所

MBO(目標管理制度)とOKRの違い

OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、Googleなどが目標管理の方法として導入していたことから注目が集まりました。OKRは、高頻度に目標の見直し・軌道修正を行うだけでなく、定量的に評価を行います。また、OKRは能力向上や生産性向上などの意味合いで使われることが多く、ストレッチゴールとして設定されることが多いです。一方、MBO(目標管理制度)は評価制度の意味合いを強く持ち、定量・定性の両面から評価を行います。そのため、評価者に大きな負荷がかかる上、評価者によって評価が左右する側面を持っています。

MBO(目標管理制度)導入のメリット

MBO(目標管理制度)を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

自主性の促進

MBO(目標管理制度)を取り入れると、マネジメント層に管理されるのではなく、自分で自身の目標を設定するため、強い自主性を促せます。また、個人目標と経営目標、事業部の目標が結びついているため、会社に貢献できたという達成感が満たされ、モチベーション向上にもつながります。

スキル・能力の向上

自身で設定した目標を達成するにはどうすればいいかを、自律的に考えるようになるため、 従業員個々のスキル・能力を最大化することができます。

MBO(目標管理制度)の注意点

会社や事業部の目標と一致しない恐れがある

従業員が自身で目標を設定することで自主性が高まる、スキルや能力が向上するなどのメリットが享受できる反面、事業部や部署の目標とズレが生じることがあります。これについては、上司が部下の目標が会社の目標と大きくずれていないか常にチェックし、すり合わせることが重要となります。

評価者に大きな負担がかかりやすい

基本的に、従業員個人だけで組織の目標と一致した目標を設計することは難しいでしょう。管理職や上司との連携ができてはじめて、適切な目標を設定できます。特に、総務やバックオフィスなど利益や売上など具体的な数値で示せない間接部門では、定性的な目標を設定する必要があるうえ、さらに従業員それぞれが達成したい目標にアレンジしていく必要がありますそのため、MBO実施においては、評価者に大きな負荷がかからない仕組みづくりもまた重要となります。

MBO(目標管理制度)の進め方

MBO(目標管理制度)を進める場合、大きく以下の5つのステップで実行します。

1.目標設定

まず、従業員がそれぞれ自律的に目標を設定します。そのためには、まず組織全体の目標の共有をしましょう。実現可能な目標か、組織全体の目標とつながっているか、評価者である上司や管理職がレビューを行います。

2.実行計画の立案

次に、目標を達成するためのスケジュールやプランを設計します。ゴールだけでなく中間目標なども合わせて設けておくと、より検証しやすくなります。この段階で、実現が難しそうであれば、協議のもと、より現実的な目標に修正します。

3.実行/進捗チェック

設定した目標に基づき、行動を開始します。それに伴い、評価者は進捗チェックを行います。ただ、実行度合いをチェックするのではなく、最後まで目標を遂行できるよう、適宜、軌道修正したり、問題解決のためのアドバイスを行います。

4.評価・フォロー

目標達成期間が終わったら、事前に取り決めた基準に基づき、目標の達成度をチェックします。ここで注意したいのは、これはあくまでノルマではなく目標です。遂行できなかった点を追及するような姿勢では、従業員の自律性を摘むばかりではなく、信頼関係も損なうので注意しましょう。 関連記事:信頼を生むコミュニケーション|フィードバックの意味をわかりやすく解説

5.目標の見直し

1〜4までのステップを一周したら、経営目標にそもそも問題点がないか振り返ります。新たに目標を設定し直し、1〜4までのステップをPDCAサイクルのように回し、よりよい仕組みに改善していきます。

MBO面談とは?上手く進めるコツ

MBO面談では、目標の進捗状況、再設定などを確認する面談のことで、方向のすり合わせや進捗に対するフィードバッグを行います。この面談で最も重要なのは、会社側の目標と従業員側の目標のベクトルを一致させることです。会社が従業員に期待している役割や業務と、従業員がそれぞれ達成したいことを数値などで可視化し、認識のズレをなくします。また、目標達成度に対しての評価・フィードバッグは、あくまでその成果に着目しましょう。

なぜ、目標が達成できたのか/できなかったのか、その過程で何を行ったのか/行わなかったのか、事実ベースで議論を重ねましょう。従業員のミスや性格を頭ごなしに叱責するのはNGです。萎縮してしまい、良好なリレーションを築けなくなります。今回の点を踏まえて、次はどのように行動するか、気持ちよく次のアクションを起こせるような、ポジティブなアドバイスを送りましょう。

目標管理シートとは?

MBO(目標管理制度)をより効率的に行うために使われるのが「目標管理シート」です。目標管理シートは、形式が決まっているわけではなく、自社にとって最も最適な項目、ツール(エクセル、ワードなど)で設計されます。入れておいたほうがよい項目は、「従業員の目標/経営目標」「実行計画」「優先度(%)」「評価基準」「フィードバッグ欄」「日付」などです。

この中で最も重要なのが「目標」の項目です。目標自体が実現不可能であったり、可視化できない曖昧なものだと、適切な振り返り・改善の施策が行えません。目標設定でよく使われるフレームワークが、SMARTの法則です。「Specific(具体的な)」「Measurable(測定可能な)」「Achievable(実現可能な)」「Relevant(関連した)」「Time-bound(期限を定めた)」の頭文字をとった言葉で、より目標が具体化され、実現可能性を高めることができます。

まとめ

MBO(目標管理制度)の本来の目的は、従業員のエンパワーメントを高め、スキルや能力を最大化することにあります。MBO(目標管理制度)を、目標達成を向上させるための手法として使ってしまうと、MBOは単なるルーチン作業となり、形骸化します。MBO(目標管理制度)の間違った運用はかえって従業員のモチベーションを下げてしまうので注意をしましょう。

この記事を書いたひと


俵谷 龍佑

俵谷 龍佑
Ryusuke Tawaraya

1988年東京都出身。ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店で広告運用業務に従事後、フリーランスとして独立。人事・採用・地方創生のカテゴリを中心に、BtoBメディアのコンテンツ執筆・編集を多数担当。わかりやすさ、SEO、情報網羅性の3つで、バランスのとれたライティングが好評。執筆実績:愛媛県、楽天株式会社、ランサーズ株式会社等